富士山の火口を覗く

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私と夫のAさんは割と長いこと富士山に登りたいと思っていたんですが、中長期的な体力作りや、私の一時帰国とAさんの休暇の擦り合わせや、山小屋の予約状況や、天候などの色々な要素がピッタリくることが必要で、2019年にも登ろうとしたんですが雷雨に見舞われてしまって、その後コロナがきて、やっと機会が巡ってきたのが昨年2023年の7月でした。上の写真は富士山の火口です。すでに登頂の喜びは噛み締めた後ではあったんですが、これが見えた時は「富士山の火口!」と興奮したのを覚えています。富士山の頂上のこのお鉢巡りの景色って、ほぼSFの世界です。火星とかそういうところに到着した気分。「火星っぽいよね!」と大騒ぎしたものの、もちろんそんなところには行ったことがないです。

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登頂までにはいくつか鳥居をくぐるんですけど(頂上の鳥居はこちら)、上の写真のように天気は良くもなく悪くもなく、といった感じでした。頂上は大体において不安定な天候で雲がぐるぐる巻きになっているのがわかると思うんですけど、こういうのも珍しくないらしいです。でも綺麗な三日月の形をした山中湖が見えると思いますが視界はクリアで本当に楽しい登山でした。

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吉田・須走ルートで登頂するとこの久須志神社前に到着するんですね。ここに到着した人々はほぼ全員神社の中に入っていってお参りをします。そして記念写真を撮ったりして登頂の喜びを噛み締めるんですが、一言でこの時の気分を思い出して伝えるとするならば単純に「寒い!」です。ここまでは心拍数も上がっていて汗もかいているのでそんなに寒さを感じずに歩いていられるのですがついてお参りした後は呼吸も落ち着いていて、突風が吹きまくっている外ではじっとしてられないほど寒いのです。

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そして神社の横の山小屋で、噂の1000円カップヌードルをいただいたんですが、本来ならば180円のこのカップヌードル、悔しいけれど本当に美味しく感じました。飛行機なんかで高度が高いところにいると塩味を感じづらいという話を聞くこともありますが、標高の高いここでは逆に塩分を強く感じました。これは私が単純に滅多に食べないカップヌードルに慣れてないだけかもしれませんが。Aさんは隣でおでんをいただいていましたが、ちょっともらったらそれも美味しく感じるんですよね。私は元々おでんが好きと言うわけでもないのに。それでよくよく考えたら、実はアレですよね。富士山登頂の喜びのあまり、ありとあらゆる幸福感を高めるセロトニン、エンドルフィン、ドーパミン、多分オキシトシンなんかも一斉にドバドバと出ていてなんでも嬉しい、なんでも楽しい、美味しい、最高!という気分になっていたのでしょう。

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山頂の神社から時計回りにお鉢巡りルートを歩くと浅間大社の奥宮にお参りできるし、さらに御殿場ルートや富士宮ルートの登頂点付近に山頂郵便局があるし、ということで私たちはそこに行ってハガキを出すことにしました。私たちが富士山に登ったのは7月14日ですが、郵便局が開いたのが数日前の7月10日(8月20日までの営業)だったということで、この貴重な期間に行けてよかったです。ちゃんと消印も山頂郵便局のものがついた葉書が後日自宅に到着して、またドーパミン的なものが出てすごく嬉しい気持ちになりました。

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山頂でご来光を拝むという登山客もたくさんいる富士山ですが、私とAさんはどうしてもゆったりとコーヒーを飲みながら朝日を楽しみたかったので、宿泊した山小屋でコーヒーを購入して(Aさんは支払いにスイカが使えて喜んでいました)山小屋のテラスから楽しみました。朝日が昇る、という状況はどんな状況でも神秘的で素敵ですけれど、富士山から見るとやはり特別な感じがしますよね。すごく綺麗です。ちなみに泊まったのは7合目と8合目の間にある東洋館。富士山にいると色々と不便なのが当然だし普通の旅館やホテルのサービスなんて期待してはいけない山小屋がたくさん並ぶ中で、ここはお洒落で素敵な山小屋で快適でした。そして、あとで山頂からの景色と比べてみたんですが、ここのテラスから見た外の景色の見た目はほぼ同じでしたよ。富士山から見るご来光ってやっぱりどうしても特別な気分になるので、その時に山頂にいる自分、と言うのが嬉しいという気分の問題かもしれませんね。でも経験者に聞くと、うっかり時間配分を間違えて、さまざまな国からきた登山客と一緒に渋滞登山道にいる状態でご来光の時間を迎えてしまうと、かなり居心地が悪くて、寒くて辛い、ということになりかねないという事でした。早めに頂上について待つ、と言うのも一案ですが、あの寒い山頂で動かずに待つことを考えるだけで私はもう辛いです。山頂に着いた時にさらに着込める防寒着をしっかり用意して、体力と精神力を鍛えて準備することが大事そうです。

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私がやった事前の鍛錬といえばこちら、登山前に五合目のレストハウスでご来光カレーを食べるということくらいだった(多分温泉卵がご来光部分)ので、体力的には私は登山中心拍数がすぐに上がってしまってびっくりするくらいハーハーなってしまうのが大変でした。ですから富士山から帰ってからはいつものランニングや筋トレだけではなくて、職場の階段を毎朝使ってオフィスのある6階(日本の数え方だと7階)まで毎日コンスタントに昇るトレーニングを始めました。半年以上の間、4階まで上がったところでハーハーしていましたが今や6階まで一気に普通の呼吸で昇ることができるようになりましたよ。1年近くの鍛錬が必要そうです。

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ご来光登山といえば、これがこの時期の風物詩、ヘッドライトをつけて富士山に昇る皆様です。私とAさんは下山してから河口湖近くのホテルに泊まったのですがそこから夜中の3時ごろに見上げてみるとこういう状態でした。私はすぐ上がってしまう心拍数が課題でしたが、Aさんは下山の方が課題だったようでした。というのも、やってみて初めて知ったのですが、富士山の下山ってものすごく、限りなく、とってもつまんないんです!景色が1ミリも変わらないままずっとずっと何時間もひたすら歩かなければならないのです。そしてブルトーザーが通る道、いわゆるザレ場的な道が下山道に指定してあるので、滑らないようにザクザクザザザザっと一歩一歩集中しなければ歩けないのです。下山中は意外にも登山の疲れが溜まっていることもあって、下山用の体力を温存してなかった風の登山初心者の皆さんが滑落したり大きく転んで重傷を負ったりすることも少なくなく、私たちが下山した日も血まみれで辛そうに足を引きずっている中国か台湾からの登山客にも会いました。Aさんは元々用心深い性格なので特にそういう下山が限りなくストレスだったらしく、私からしてみると「本気?」と思うようなスローな歩きで、私たちはこれからの課題を別々に抱えたのでした。

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下山後は温泉にゆっくり浸かって、あっという間に疲れを癒すことができた私たちは、翌日は早起きしてウキウキしながら河口湖にカヌーイングに行きました。富士山が目の前いっぱいに広がる河口湖の真ん中でいただくコーヒーはすごく美味しくてさらに癒されました。山頂で食べ慣れないカップヌードルなんて食べた私は、標高差の影響とともに、この日は今まで見たこともないほど体全体が浮腫んでかなり面白い感じになっていたんですけどね。こうして写真をみると指先までぷくぷくに浮腫んでますね。

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富士登頂記念に買ったのは、ティッシュを出すと富士山が完成するティッシュケースと、私のミレーのデイパックにつける山バッジ。バッジを集める気は全くないのですが、百名山で一番低い筑波山に登った時に一つ買ったので、百名山で一番高い富士山に登ったということで2個目を買ってつけました。これでバッジは卒業ですがハイキングやトレッキングに行くたびに思い出して、これからもお得に何度も幸せホルモンを出していこうと思います。ところで富士山に登ったことのある日本人というのは全人口の7%という統計を見たことがありますが、今回無事にAさんと二人で7%の仲間入りをすることができて嬉しいんですが、面白いのが、この日以来、富士山の写真を見たり、テレビに映っている富士山を見たり、日本に帰国するときに飛行機で上空から富士山を見たりするたびに、わざとらしく「あ、私の!」と思うようになったことです。もちろん、筑波山だってもうすでに私の山なんですけどね。2回しか登ったことないですけど。またこの興奮が冷めた頃に富士山登れたらいいなと思います。それまでまた鍛錬しようと思います。

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