ぼくの叔父さん

Day 2

3月の半ばに甥っ子のKがローマに遊びにきてくれました。ちょうど小学校を卒業して都会っ子が避けては通れぬ中学受験の洗礼を受けて、やっと訪れた短い春休みの塾講習の合間を縫って弾丸のローマ旅行。実はKのお姉さんであるMは小学4年生の時にローマに来ているので、本来ならばもう少し前に来ていてもおかしくなかったのですが、色々と忙しくてやっと機会が訪れたのが今年だったのでした。母親である私の姉に一緒に来てもらいたかったのですが姉も仕事が忙しく、どうしようか、となったときに私の夫のAさんが「連れて行ってあげるよ」と言ってくれてこの上の写真の凸凹コンビの爆誕となったのでした。

ちなみに写真のピラミデは真っ白なので最近のものかと誤解されることもあるんですが、なんと紀元前12年完成のれっきとしたローマ遺跡です。このようなピラミッドは本当はローマ市内に14世紀までは合計4つあったらしいですよ。バチカンの力が大きくなるにつれサン・ピエトロ大聖堂近くにあった一つと、ポポロ広場にあった2つは壊されてしまって、最終的にこのサンパウロ門に組み込まれたガイウス・ケスティウスのピラミデのみになったそうです。この皇帝がエジプトのピラミッドに憧れて作ったものらしいですが、完成した時はもう亡くなっていたということで、なんだかなぁと思いますね。そしてこうして真っ白に綺麗になったのは実は最近10年くらいの話で、私が初めてローマに来た2006年ごろは、大気汚染で黒く煤がついてました。日本の実業家の方が綺麗にしてくださったらしいです。

Day 2

この凸凹コンビは基本的にはKの姉であるMが楽しんだ2016年の厳選旅行の旅程をなぞる形になったのですが、姪が来た時には芸術要素を旅行テーマに強めに入れておいたのに比べて、甥には遺跡要素をより多めに旅行テーマに入れました。ということで私がローマにある遺跡の中で2番目に好きなテルメ・ディ・カラカラ(カラカラ浴場)をゆっくり訪れました。トルコ航空で飛んできたので当日の朝の到着だった二人にはちょっと体力的に大変でしたが到着当日からこうして盛りだくさんの観光でした。その日は私の職場にも連れて行って国連の大きな会議室を見せたりできて本当によかったです。

Day 3

翌日は朝一番にコロッセオへ。最近のオーバーツーリズムでコロッセオもそうなんですが、ローマ中どこでも本当に信じられない長さの行列が至る所にできているのですが、ちゃんと予約してチケットもプリントアウトして、パスポートもしっかり携帯して、余裕を持って朝早く行けばどんな遺跡もそれなりにゆったりと楽しむことができます。例外は美術館です。美術館は私の感覚だと朝一番が一番並ばされる気がします。

Day 3

私も久しぶりにコロッセオの中に入ったのですが、その前の予約の段階で、チケットの選び方がちょっとわかりづらくなっているように感じました。それはどうしてかというと、オフィシャルサイトだけではなく、いろいろなエージェントが付加価値をつけて高いチケットを売れるようになったらしいんですね。たとえば知識のあるガイドさんがついて、コロッセオオープン前の30分に誰もいないコロッセオを楽しめるツアーとか、地下の部分に行けるツアーとか、前日になって突然行きたくなった時に、お金を出せばチケットが確保できるようになるツアーとか、そういったものです。いくつかのチケットはかなり高いお値段に設定してあるので注意が必要ですね。オフィシャルサイトが一応一番安いチケットになっていますが、まずちゃんとオフィシャルサイトを見極める必要があるのと、ある程度スケジュールを事前に組む必要がありそうです。私は3週間ほど前に予約を取ったのですが、数ユーロ追加して3階部分まで行けるチケットにしました。そうしたらそれが大正解で、1年ほど前にできたという新しい専用のガラス張りのエレベーターに案内されて、鍵を使ってエレベーターを動かしてくれて、その後最上階まで行ってみたらほぼ私、Aさん、甥っ子のKと3人で貸切状態でした。コロッセオ貸切気分は最高です。実際はたくさん階下に人がいるんですけどね。

Day 3

サンタンジェロ城最高スポットでランチをした後はもちろんバチカン市国にも行きました。この凸凹コンビが気づいたら隣に並んで仲良く歩いているのがとにかく微笑ましくて後ろを歩いている私は常にシャッターを切る羽目になりました。甥っ子のKは子供過ぎず、大人過ぎず、年齢相応の楽しみ方をしてくれて一緒に時を過ごしていて本当に楽でした。身内ながら褒めるのもなんなんですが、一つすごく感心したのが、お食事の時に日頃食べ慣れないものが毎回出てくるわけですけれど、それにもちゃんと美味しい美味しい、と言いながらほぼ完食してくれるんですね。もちろんイタリアのお料理は美味しいんですけれど、子供には難しい味っていうのも時にはあると思うんです。Kの行動を見ていると、完食するのが礼儀だと思っている節があって、それが微笑ましくも誇らしかったです。自宅で、私のイタリア人の友人のFと韓国人の友人のMに来てもらって、一緒に家でプッチムゲ(韓国)とティラミス(イタリア)の作り方を教わった時も、時差ボケで疲れているはずなのに、ニコニコしながら素直にお料理を習っていて、料理を自分から頑張るこれからの令和の男子といった感じでさらに誇らしかったです。食事のたびに、Kが完食するたびに、心の中で「えらい!」と拍手したい気分でした。そういえばティラミスを自分で作ってみた後、Kはことあるごとに色々な場所でティラミスをオーダーして食べ比べをしていて、それも可愛らしくて誇らしかったです。

Day 3

バチカンではサン・ピエトロ広場大聖堂バチカン美術館、と盛りだくさんに過ごしたのですが、広場で4本の柱が全て1本に見えるこのポイントを甥っ子は特に堪能していたようでした。結構不思議ですよね。この広場はベルニーニの魂が詰まっているといってもおかしくないと思うんですが、1世紀ほど違う時代に生きたミケランジェロとの夢の共演とすら言えるような見どころもたくさんです。バチカン郵便局もこの広場にあるのでここでポストカードを書いて送るとバチカンの切手を貼ってくれて、イタリアの郵便事情とは関係なく素早く国際郵便を送ってくれるのでかなりおすすめのアクティビティです。

Day 4

トレヴィの泉、スペイン広場やポポロ広場、パンテオンナヴォーナ広場など大きめの観光地も残さず訪れ、この凸凹コンビはファブリアーノで家族へのお土産を爆買いして、大小似たようなショッピングバッグを下げて仲良くローマの街を歩いていました。上の写真はアラパチスの横を歩いているところ。この後素敵なレストランで美味しいお食事をしました。行ったのは先日紹介したクッキングクラスのエリザが紹介してくれたRetrobottegaというところで、今どき風でポップな感じがするにはするんですが、味は本当に良くて、しかもイタリア料理の基本でもあるようなものがたくさん取り込まれていて、新しいのに古き良きイタリアな感じもする素敵なレストランでした。甥っ子もかなり気に入った様子でした。予約必須ですが、旅行中に毎日ピッツァにパスタ、という日々に飽きがくることもあると思うので、ぜひお試しください。

Day 4

数年前に姪っ子が来たときも一緒に楽しんだのですが、ボルゲーゼ公園にも行きました。4人乗りの自転車を借りて1時間結構広い公園の中を縦横無尽に走り回ったんですが、Kはかなり興奮して楽しんでいて、こういうところは子供だなぁと一瞬思いましたが、その隣にいるおじさんもかなりのレベルで楽しんでいたので、こういうのは実は年齢ではないのかもしれません。姪っ子が来たときは夫のAさんが座っているところにわたしの姉が座っていたのですが、実はこの左の前の席のペダルだけが動力がつながっていて、後の3つのペダルはおまけのようなものなんですね。ですからこの自転車がしっかり動くにはこの左前に座る人のパワーにかかっているわけです。わたしの姉にペダルをお任せしていた時は、姉はすごく細いのにかなり頼もしく、驚くべきパワーでペダルを漕いで、私と姪っ子のMをぐいぐいと運んでくれました。今回は私の夫のAさんが同じポジションで頑張ってくれたんですが、彼はかなり遠慮ぶかい性格なので姉のようにグイグイ行く感じではなく、また違う感じ自転車が進んでいって、それはそれでなかなか楽しかったです。

Day 5

ローマ滞在の最後の日は、私の好きなオレンジ公園の近くの秘密の鍵穴にも連れて行きました。こうしてみると小さな後ろ姿ですが、ローマにいた数日だけでも身長が伸びていて、買ったばっかりの靴がもうキツい、といっていたので完全な成長期です。甥っ子がこうしておじさんおばさんと一緒に楽しく時を過ごしてくれるなんて、思春期が来てしまったらもうありえない状況かもしれないので、こんな貴重な時間を過ごさせてくれた姉と姉の旦那様に、私たちにこの貴重な旅行を任せてくれてありがとうと心からお礼を言いたいです。

ところで表題ですが、私の好きなフランスの喜劇映画「ぼくのおじさん」からそのままのパクリです。ユロおじさんはものすごく変わっていて、貧乏なのに全然気にしてなくて、頼りなくておっちょこちょいなのに何故かそういうところが素敵なんですよね。もちろんKから見たAさんとは違う感じ(KはすごくAさんに懐いているので、Aさんは多分、Kにはとても頼り甲斐があるように映っていると思う)だとは思うんですけど、なんとなく思い出しちゃいました。ちなみに同じ題名で北杜夫氏も小説を書いていて、私はそれも映画を見たのと同時期に読んだのでコンセプトがほぼ同じでかなり混乱したのを覚えています。時期的には北杜夫氏が後出なので、これはいわゆる「インスパイアされた」という状況だったのでしょうか?でも北杜夫氏の「ぼくのおじさん」も面白くて中学生の時に何度も読みました。そのおじさんもかなりなんだかスーっとしていてヘンテコで自己中でかなり頼りなかったのに魅力たっぷりでした。今ふと思ったんですけど、当時(本が出された80年ごろも、私が読んでいた頃も)、漫画は日本でも完全に子供用のものとして描かれていたなぁと思い出しました。確か貧乏で我儘で自分勝手なおじさんが漫画を1日中読み耽っていて、主人公に「変なの、大人なのに」と思われていたんですね。今は日本の世の中すっかり変わりましたね。みんな漫画読んでます。そういえば挿絵も和田誠さんで、すごく全体的にシックで素敵な漫画小説のような雰囲気がありました。もう絶版なのでしょうか。

これから10年後くらいに甥っ子のKもこのローマ旅行のことをふと思い出してくれるんでしょうか。どのくらい覚えているものなのかわかりませんが、どんな風に思い出してくれるのか、どんな思い出話をしてくれるのか、今からとても楽しみです。

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