「忙しい」という人々

先日、母と話していたときにこの話題になってその後しばらく考察したので、今日はそれを書き留めておこうと思います。私はここ数年、仕事の上での人間関係に非常に恵まれていて、一緒に仕事をするチームの雰囲気はものすごく良いし、直属の上司もとても穏やかでいつもサポートしてくださる方だし、本当に全くといって不満がありません。こういうこと(時期)は本当にレアで恵まれていると思うのでしっかり感謝して、自分もそういった雰囲気にちゃんと貢献できるようにしなければ、といつも思います。とは言いつつ、もちろん仕事をしていて「ん?」と思うことはあります。いや、今かなりオブラートに包みました。「ん?」程度ではないです。しっかり「イラッ」とすることがあります。そして私は自分を分析するに、仕事上そう思う状況が実は3点しかないなーということに数年前から自分でも気づきはじめました。

まず一つ目、これは非常にお国柄とか文化とかそういうのも関係するとは思うんですが、仕事のメールに返事しない人、というのが実はある一定数存在し、それは結構私の「イラッ」を誘発します。日本でメールを使って仕事を本格的にしたことがないので、そういう方が日本にいらっしゃるかどうかわかりませんが、国際機関だとメールに返事しない人、というのが私の周りだと驚きの15%くらいいらっしゃいます。色々理由はあるとは思うんですが、ものすごく上の立場の人だから返事しない、とかそういうわけではないです。実際、私の部署の部長の返事は誰よりも早くて的確で驚くほどです。どんなに小さな内容のものでもサクッと返信してくださいます。そして私のプロジェクトに雇った人の中の一人に、なかなか返事をしない人がいます。理由についてはその人ともちゃんとお話ししたことがあるので、私としても分かっているつもりですが、文化や教育基準、社会性のスタンダードが違うので、メールに返事が来ない度になんとも言えない気持ちになります。

二つ目は仕事上、3回以上同じことを同じ人に言わなければいけない状況に私はどうやら「イラッ」とするようです。私も人間なので何かを忘れたりすることはあるので非難ばっかりしていると私にブーメランが返って来てしまうかもしれないので控えめに書きますが、上の立場の方でも、一度会議で「こうしましょう」と決まったことを「なんでこうすることに決まったんでしたっけ」と2ヶ月後くらいに聞いてきて、議事録(以前にすでに共有済み)を送って差し上げ、こういう流れで決まったんですよ、と説明したのに、その1ヶ月後にまた「なんでこのやり方でやってるんですか?」と真顔で聞かれたりします。ため息をつきそうになりながらもう一回説明する羽目になります。私のチームの中にも何故かメモを取らない人、というのがいて、会議の終わりに私がアクションアイテムを整理しながら、「Aさんは2つ、Bさんは3つ、Cさんは3つ、私は3つアクションアイテムがありますね」と確認するとみんな頷くのに、Bさんが「私の3つのアクションアイテムってなんですか?」と聞いて来たりします。みんなが「え!」という顔になります。今の会議で話したばかりじゃん!と。そしてAさんが親切にノートを見ながら「あなたのはこれとこれとこれよ」と教えてあげると、「わかりました」というんですけど、実際にその後フォローアップするとやっぱりBさんだけができてなかったりして、「できてないけど何か問題がありましたか?」と聞くと「忘れてました、なんでしたっけ」と言われてまた説明しなければいけない状況に唖然とすることがあります。

そして3つ目がこれは非常に個人的すぎる「イラッ」とする瞬間なんですが、「忙しい」という人々です。中国語の勉強をしていると、「忙しいですか?」がHow are you?のような意味だったりするのでこれもまた文化も関係するとは思うんですが、みなさんの周りにはいらっしゃいませんか?仕事の話をしている時に「今週は忙しいから来週考えていい?」とか「今月は忙しくてムリ、来月なら時間できるかも」とか言う方。これを読んで何がいけないの?と思う方は多数いらっしゃると思うのではっきり書きますが、何もいけなくありません。「忙しい」と言いたい方は言って構わないと思います。それに対して私が「イラッ」としているかどうかなんてきっとその方は忙しくてどうでもいいのではないかと思われます。で、私は考えてみたんです。なぜこういった一見普通の会話に「忙しい」と言う文言が入っただけで私の心がイラモード(アラモードみたい!)になるのか。できればこんなことでイライラしたくないので解決してみたいし、解決のためには何故そう思うのかを突き止めなければいけません。

それでリサーチの仕方としては本当にしょうもないんですが、日本語と英語のサイトで「忙しいという人」について調べてみました。きちんとシステマティックにリサーチしてないのでリファレンスなしで書き続けますが、もし気になる方はグーグル先生に「忙しいと言う人」と “People who say they are busy”というキーワードで聞いてみてください。私が以下に書くことはその検索結果の1、2ページ目に出てきたサイトに載っているはずです。

(1)まず共通しているのが、いわゆる「忙しいアピールをする人々」という意味での受け取り方で「見て!自分はこんなに重要なんです!」「みんなから求められているんです!」と言う感じに聞こえる、という見方。実際に、重要で求められている人々、というのは本当に忙しいとは思うんですが、そういう方々は多分誰からみても忙しいんですよね。それをわざわざ自己申告的に人に言わなければいけない、と言う部分にその人の不安(インセキュリティ)が見え隠れしてしまって、なんというかちょっと可哀想というかみじめな感じがする、という感覚。

(2)次に「忙しさ」というものが客観的に計測できるものではない、という部分で、誰が誰より忙しいか、という比較が難しいですよね。しかも、その比較をすること自体がくだらないというか、そもそも忙しくない象徴のように感じられる、という受け取り方。「私は忙しいんです」とAさんがBさんに言う場合はAさんは無意識にBさんより忙しいと思っている可能性がある、という考察がありました。それはBさんはイラっとしますよね。でも個人的には私はこれでイラッとしているとは思えません。私の職場では私が見る限り、働いている人全員超絶忙しそうなので、そこで忙しさをアピールする意味がわからないのです。アピールしてる暇があったらやらなければいけないことをサクサクと終わらせたらいいのに、という感覚はあります。

(3)もう一つは優先順位の話。例えば「私忙しいからあなたが今から話そうとしている仕事は今はちょっと無理」と言う会話の場合、つまり今やっている仕事の方が、あなたが今から話そうとしている仕事より優先順位が高いです、と言っているのと同じになるという受け取り方。もちろん仕事上優先順位と言うものはあるし、つけなければいけないものではあるのでそう言っても何も悪くはないんですが、この状況の場合、まだ話を聞く前に優先順位、あるいは重要度をつけようとしているのでちょっと説得力がないですよね。

(4)面白かったのが「忙しい」状況になった理由の話です。最初に書いたように、自分に価値があるから、重要な自分、求められている自分だから忙しい、ということももちろんあるかもしれませんが、イギリスとアメリカのサイトの両方に書いてあったのが、その人自身のタイムマネージメントの能力にもよるということでした。同じ仕事を同じ量与えて、人によっては忙しいと感じたり感じなかったりするわけです。時間管理が下手な人は多分「あああこれもやらなきゃあれもやらなきゃ」となって忙しい「気分」になることも多いのでしょう。逆にどんなに仕事量が多くてもたくさんのプロジェクトを抱えていても、きっちりスケジューリングができている人は別にそれをストレスに感じることなく、一つ一つ丁寧に終わらせていけるので「忙しい!」と思うことは少ないかもしれません。つまりうっかり「忙しい」ということによって、もしかしたら「私、時間管理できてなくて仕事回せてないんです」と言っているのと同じ意味になりかねない、ということです。

結論としては、非常につまらなくて申し訳ないのですが、結局は「言い方」の問題なんじゃないかということに落ち着きました。つまり私は単純に「忙しい」という言葉に反応しているだけで、それは私の中の(4)の考えが強いことと、ちょっと(3)も入ってくる感じでイラッと感を誘発されているのかもしれません。「忙しい」という言葉を聞いた瞬間(4)的に、「あら、この人仕事を回せてないのかしら、可哀想に」と思う感じと、(3)的に、「あら、まだ話してもいないのにこの仕事はこの人の中で優先順位が低いことになっちゃったのかしら」と思う感じがあるのでしょう。「言い方」を改善するとすると、例えば話を聞く時間すらないと思われる時は「とても興味深いですね!今やっているプロジェクトがちょうど今月の終わりには落ち着きそうなのでその後ぜひゆっくりお話を伺いたいです!」というのと「今月すごく忙しくて時間取れないので来月でいいですか?」というのは同じことを言っているのに前者の方がやっぱり良い感じがしますよね。「忙しい」って自分でもうっかり言っちゃいますが、BBCのサイトに載っていたサブヘッダーのいくつかが良かったのでそれを載せておいて自分への訓示にしておこうと思います。

  • Your sense of overload isn’t unique. (あなたの忙しさは特別ではない。)
  • You are not as busy as you think. (あなたはあなたが思うほど忙しくない。)
  • It’s a common misconception that appearing to be busy is a signal that you are valuable. (忙しそうに見えることが価値があることを意味する、というのは一般的な誤解だ。)
  • Telling someone at length about how busy you are will not enhance your career. (誰かにどんなに忙しいかを伝えることではキャリアを向上できない。)

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