7月の半ばすぎに日本人の友人のOさんと一緒にカラブリア州のトロペアという海辺の町まで3泊4日の小旅行に行ってきました。ご覧の通り息を呑む海の美しさです。イタリアはブーツの形をしていますが、そのちょうど爪先あたりと思っていただけるとわかりやすいかと思います。カラブリア州は南イタリアの美しさを全て持ち合わせているのですが、イタリアの中では問題が山積みとも言える難しい州でもあります。貧困、失業率などもダントツだと思われます。ンドランゲタ(カラブリア州のマフィア的な犯罪組織)がイタリアで一番大きく、暴力的であると言われている、と言えばちょっと分かりやすいかもしれません。ただ、そういう問題はあっても、一般の人々の雰囲気は一言で言っておおらか過ぎるほどおおらか。でもとても情熱的で、オープンで、色々なことに夢中になったり、良いお天気と美しい海を見て、なるようになるさ、というような明るい感じになったり、この人たち自由だな、と思わせられる部分が多々あります。出会った人はみんな家族、というような雰囲気もあってそれがとても好ましく、私は多分こういう雰囲気が好きだからこそ、完全なる南イタリア推しなんだと思います。
トロペアは2021年度の「イタリア一美しい村」に選ばれたところで観光地というよりは景色、ビーチ、旧市街の散策を楽しむような小さなリゾートといった方が良いところです。イタリアの「何もしない至福(Dolce far niente)」という言葉は有名だと思いますが、そういうタイプのバカンツァを過ごしたい人には最適な場所だと思いました。そしてグルメも私の中では南イタリアが総合優勝です。やっぱり肥えた土と穏やかな地中海性気候に恵まれているのが南イタリアなので、とにかく口に入れるものはなんでも美味しいのです。トロペアで有名なのはこの観光案内所にもオブジェがあった、赤玉ねぎ。旧市街にも新市街にもいろんなところにどっさり赤玉ねぎが売ってありました。観光地価格を考えても安い、1キロ1ユーロ50セント。
私は本当に玉ねぎも赤玉ねぎも大好きで、特に春先の甘い玉ねぎは大好物です。自分でグリークサラダを作るときは必ず赤玉ねぎを入れるし、ワシントン州に住んでいた時もわざわざ大量の玉ねぎをワラワラという町で買ってきてサラダとして食べていたのを思い出します。この旅行中もさまざまな場所でこのトロペアの赤玉ねぎいただきました。
特にこのピザが最高でした。生地はアルト(高さがある)モチモチピザ生地、つまりいわゆるナポリ風、というやつです。イタリアでは薄い生地のピザを「低い(バッソ)」といって、厚い生地のピザを「高い(アルト)」と言います。低いものは一般的にはローマ風、高い方は一般的にはナポリ風と言いますが、多分ですけどイタリア人の中でも、ピザといえばナポリ、という感覚はあると思います。生地が厚い、と書きましたが、それはあくまでもフチの部分の話で、実際に具が乗っている部分はローマ風もナポリ風もどちらも同じくらいの厚さです。ただナポリ風は確実に生地が異常にモチモチしています。つまり私の中では最高なのです。まあローマ風も普通に美味しいんですけどね。そこにナポリのブッファラ(水牛)のモッツァレラとこの甘い甘いトロペア玉ねぎ。最高にならないわけがありません。
上のパスタにも刻んだ赤玉ねぎが入っているんですが、このアンチョビとオレンジトマトのパスタが信じられないほど美味しくて、あまりにもおいしかったので違うものを食べていたOさんに超絶におすすめして、思わず、「これをください」ともう一皿頼んだほど。本当に美味しかった。一体何が入っているのかとうとうわかりませんでしたが、パスタの周りに散らばっている赤いポロポロしたものがこの世のものとは思えないほど美味しかったです。赤玉ねぎもすごく甘くて合っていました。
これでわかるように、町全体の赤玉ねぎ推しがすごくて、タバッキ(イタリアのコンビニ的な位置にありますが、日本のコンビニほど洗練されていません。昔ながらな感じです)の横のポストの横にも普通に下げてありました。私は今回の旅で2枚絵葉書を書いたのですが(夫と、愛する姪っ子と甥っ子へ)このポストに出そうと思って近づいていたら、ちょうど郵便物を集める陽気なおじさまがほいっとやってきて鍵を出してポストを開けて中のものを出していたので、これもー!と走っていってハガキを渡したついでに一緒に記念写真撮っちゃいました。いつもはハガキをポストに入れる写真を撮って、夫や姪っ子甥っ子に「出したよ」とお知らせするんですが今回は郵便集配のおじさまと一緒で楽しかったです。
そしてまた食べ物のお話で恐縮ですが、カラブリア州にはトロペアから20キロくらい北にピッツォという町があるんですが、そこで1950年ごろ作られたこのアイスクリームが有名で名前をIGPという地理的保護までされているものなんですね。その名も「タルトゥーフォ・ディ・ピッツォ(ピッツォのトリュフ)」。トロペアの旧市街を歩いているとどこでもこのタルトゥーフォを出していてOさんが食べている奥のものがいわゆる王道の種類。ノッチョーラ(ヘーゼルナッツ)のアイスクリームが半球になっていて、その中にとろけるチョコレートが入っていて、上にはたっぷりカカオパウダーがかかっているというかなり濃いもの。私はチョコは好きなんですが、イタリア人みんな大好きノッチョーラがかすかに苦手で(甘すぎません?)ヌテッラ(日本の皆さんヌッテラって言いますが、イタリア人はヌテッラって言ってる気がする。小さなツの位置が違う気がする)もそこそこ微妙と思ってしまいます。なので、浮気して大好きなピスタッキ(ピスタチオ)のタルトゥーフォにしました。これが美味しすぎて、旅行中2回も同じものいただきました。しかも同じカフェ(老舗のCafe del Corsoに行きました)で。
ホテルから眺める夕日も綺麗だったし(昼間も綺麗)、インフィニティプールで泳いだりお昼寝したりできたし、とてもアイコニックな岩に立つ教会も何度も見たし、しかもそれを見ながら海に入って水際で波と永遠に戯れることができたし(いや永遠ではないです、嘘つきました)、本当に満足な小旅行でした。ここは絶対見てないと思いますが一緒に行ってくださったOさんありがとうございました。最後にイタリア国旗色にライトアップされていた教会の写真を載せておきます。