ヨーロッパに来て嬉しいことの一つにこの平たい桃の存在があります。正確には日本語(中国語)では蟠桃(ばんとう)というらしいのですが、英語ではまさに平たい桃、フラットピーチと言います。イタリア語でも同じ意味で、ペスカピアッタと言います。ペスカが桃で、ピアッタが(お皿みたいに)平たい、という意味。私が住むアパートメントのすぐ近くに小さな青空市場があるのですが、そこにこの季節になるとどっさりやってきます。今検索してみたら、2016年に出張前なのにうっかり大量買いしてしまったエピソードがあって、私は何も成長していないなー、と自分のブレのない一定感に変に感心しました。この桃は、熟すると皮もするするっと剥けるので、特に皮の剥き方について考えたことがなかったのですが、今回はスムージーに入れようと思って「切る」ことを考えたのでこうして切り方を紹介しておこうと思いました。
上の写真をよーくご覧ください。切り込みが入っています。桃をぐるっと一周する形で3回切り込みを入れています。小さめではあるんですが普通の桃と同じように、真ん中にイガイガの種があるので、最初に平たい桃の薄い側を、アボカドを切るイメージで、種まで届くようにぐるりと切ります。そして今度は十字にぐるりと一周させるわけです。
そしてアボカドを割る要領で実をひねると、こうしてポロポロと実が取れていくわけですね。種がしっかりついた側は比較的取れづらいですが、グッと引っ張ってあげれば最終的にはポロッと取れます。
で、このように真ん中にイガイガの種が残って無駄なく実が全部取れるわけです。この状態で信じられないほどの芳醇な香りがします。うっとりするタイプの香りで、平らな桃最高です。そういえば実はこの蟠桃、西遊記に登場するそうです。桃の節句といえば3月3日ですが、この日は偶然なのか必然なのか、中国の西王母のお誕生日なんだそうです。その日を「蟠桃会(ばんとうえ)」と言って、天界にある果樹園にある3600本の蟠桃を食べることになっているらしいんですが、その果樹園の管理を、三蔵法師に出会うずっと前の孫悟空が、岩に閉じ込められるずっと前に任されていたそうなんですね。孫悟空が蟠桃園の管理人だったとは!その桃がいわく付きで、一番手前の1200本は3000年に一度しか熟さず、その桃を食べた者は仙人になれたそうです。真ん中の1200本は6000年に一度しか熟さず、それを食べた者は不老で長生きができ、一番奥の1200本は9000年に一度しか熟さず、それを食べたものはなんと不老不死になると言われていたんだそうです。で、もちろん孫悟空のことですからその一番奥の桃を全部盗んで食べ尽くし、不老不死になった挙句、天帝から天界を追放され下界に落とされた、というお話なんですね。不老不死になるためだけなら一つだけ食べればよかったんでしょうけど、それがこの世のものとは思えないほど美味しすぎて食べ尽くしてしまった、ということなので蟠桃の美味しさが分かろうというものです。
桃が切れた後の皮はどうするんだろう、と思われるかと思いますが、なんとこうしてスルリと剥けるので楽ちんです。蟠桃はこのままいただくのが一番美味しいです。まな板から直で食べるのが本当の意味で最高だったりします。とはいえ、私の場合は市場で買うと、価格交渉をする関係で大量購入する結果になるので、桃が熟れすぎてしまうのを防ぐため、時々一番いいときに切って冷凍したり、売れ過ぎたものはスムージーに入れたりして楽しんでいます。
上の写真は熟れすぎた蟠桃と、りんごとラズベリーと冷凍バナナをスムージーにしたもの。ラズベリーを入れると突然異常なピンク色になるのでびっくりですが美味しいです。そして蟠桃が入っているというだけでスムージーのレベルが格段に上がるので、贅沢だなーと心の底から思います。これから季節なのでたくさん出てくるし、価格も安いので楽しんでいこうと思います。