「エジプト前」から「エジプト後」へ

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2023年9月に休暇をとってAさんと二人でエジプト旅行に行ってきたんですが、私たちはこの旅行で二人揃ってビフォーエジプト(B.E.)からアフターエジプト(A.E.)へと歴史的バージョンアップをしてしまいました。というのはちょっと大袈裟ですけれども、それくらい衝撃的な旅行になったということです。上の写真はギザのピラミッドが綺麗に見える丘から撮ったものです。パノラミックポイント、といえばほとんどのガイドさんがここに連れて行ってくれると思います。ここの近くにはNine Pyramids Loungeというレストラン・バーラウンジがあって予約をとっていけばこの景色を見ながら食事や飲み物を楽しめるということでした。私たちは行きませんでしたが、エジプトのお食事はどこに行っても全体的に普通に楽しめたし、特にAさんは好みのタイプの食べ物がたくさんあったしということで今度行くことがあれば行ってみたいと思いました。

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さて、ギザではクフ王のものと言われている一番大きなピラミッドに入ることにしたんですけれど、この上の写真のエジプト人ガイドさん(M.A.さん)が指差しているところが入り口で、そこから9番が指しているKing’s Chambersに行けるわけです。

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ピラミッド、遠くから見ても本当に大きな建造物です。真ん中に穴のようなものが遠くからでも見えるので、そこが入り口かと思いきやそうでなく、その下に入り口があります。「人がゴミのようだ!」との名セリフを彷彿とさせるような、遠近感が分からなくなるような状況ですが、私もそのゴミの一つとなるために近づきます。

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ここではそんなに並ぶこともないのですが基本的には左側の方から並んで右に出ていく形となっています。一つ一つのブロックが1メートル以上あるので歩いて近づいてみるとその途方もない大きさに呆然とします。暑い、というのもありますがとにかくボーッとなります。

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外ではスカーフを使って肌を出さないようにしていたのですが中は暑くてそんなこと言ってられません。汗をダラダラと流しながら細い大回廊を上っていきます。

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King’s Chambers、つまり王の間にはこんな石棺がポツンとあります。到着した達成感でアドレナリン全開になっている観光客の皆さんとお互いに写真を撮りあったりしてキャーキャー盛り上がった後、誰もいない一瞬を狙って撮影しました。ちなみに私はこの王の間でサングラスを失くすという歴史的な失敗(また大袈裟)をしました。結構すぐに失くしたことに気がついて、Aさんがこの後クフ王ピラミッド内部観光コース2周目という衝撃的なことをやってくれたんですね。入り口の管理のおじさまたちも「いいよいいよ、入って入って」という感じで無料でもう一回入れてくれました。でも隅から隅まで見ても、サングラスは跡形もなかったということで、残念でしたがこんなにも有名なところで失くしたので記念になってまあいっかという気持ちにもなりました。その後スフィンクスもちゃんと見にいきましたよ。近くで見るとこれまた圧倒的な大きさで感動しました。

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ちなみにホテルはギザのピラミッドまで徒歩圏の場所で、朝食も夕食もこんな場所でいただけて本当にシュールでした。お部屋のテラスからも24時間ピラミッドが見れてかなり満足でした。

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エジプトのアエイーシというパンも毎食のようにいただきましたが、本当に美味しかったです。朝から外のオーブンで女性が一つ一つ焼いていて、焼きたてをくれたりして嬉しかった。アエイーシは現在のパンの原型という説はかなり説得力がありますが、その原型のものを何千年も同じように作り続けて食べ続けているエジプト人がエラいなぁと感じたりもします。でも確かに美味しいので私がエジプト人だったとしてもこのパンにこれ以上の変化は求めないかも。

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でも実は、私とAさんをバージョンアップさせたのはギザのピラミッド群でもアエイーシでもなく、上の写真のジョセル王の階段状ピラミッドに代表されるサッカラ遺跡だったのでした。サッカラ遺跡は広大で、ネクロポリを中心にたくさんの遺跡があるそうなのですが、このピラミッド自体がとにかくピラミッドと呼ばれるものの中でもずいぶん初期のものらしく、ギザのピラミッド群は、このサッカラのピラミッドが羨ましくて王様たちが真似従ったという話もあるそうです。それにしてもエジプトの人々は紀元前2600年代にこんなものを作ってたなんて、と思いながら遺跡を見ていて、湧いてくるこの気持ちをなんとも言葉にできずにもどかしい思いをしました。

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私たちがサッカラ遺跡を訪れていた2023年9月にも新しい発見はどんどん進んでいて、毎日のようにニュースになっているとガイドの方に教えてもらいました。私たちはそこでエジプトならではの壁画のルールや残されている像の形のルールをビジュアルでガツンと学び、そしていかに古代のエジプトの人々が「死ぬこと」が怖い、というよりは死んでから「一人になってしまう」ということを怖がっているか、ということを言葉や文章ではなく実物とお供物と壁画の数々で思い知らされ、心がキュウゥッとなる感じがしました。そして私自身もサッカラに当時いた、王様のお墓の準備をするようなごく一般の人に近づいた気分になって、急に全身に鳥肌がたって、スーパーマリオじゃないですけどエジプト版スーパーマサミにやっと1段階だけバージョンアップした気分になったのでした。これからはエジプトの遺跡や古代エジプトの発見物を見るときに今までとは全く違う気持ちで見るようになるだろうな、とはっきり思いました。

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ここ数年は金ピカの女性ミイラや、大量の猫のミイラなどもどんどん見つかっていて、さらには大規模なミイラ製造所だったのではないかと思われるような遺跡も発見されているらしく、歴史家たちは嬉しいながらも困っているような状態だそうです。サッカラには私たちはデイトリップで行ったのですが、今度はもう少し長く滞在してゆっくりいろんなところを歩いてみたいと思ってしまいました。でも残念なことに遺跡の保護があまりちゃんとされていなくて、新しく発見されたカラフルな壁画なんかも触ろうと思えば触り放題のような状態になっているので、ちょっとなんとかしてほしいですよね。でもエジプトはどこでもそうかもしれませんが、何もかも全てを保護するにはあまりにも遺跡が大きすぎるし発見物も多すぎるんだろうなとも思ってしまいます。キリがない、というような状況なのかもしれません。それだけエジプトの当時の文化が進んでいたということなのでしょう。今から1000年後の人々が現代の東京の痕跡を発見するような感じかもしれませんね。ちなみにサッカラのピラミッドはご当地ビールのレーベルにもなっていて可愛いです。ビールの味も軽くて美味しくていい感じです。

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エジプトの国民食、コシャリも食べにいきました。行ったのはAbou Tarekというコシャリ界でも最も有名なところだということでした。イタリア人的感覚だと完全に茹ですぎ感のあるマカロニや短いパスタ(スパゲッティを折ったりしててイタリア人が真っ赤な顔して怒りそう)をベースに、黒っぽい美味しいレンズ豆がのっていて、その上にサイドでついてくるひよこ豆、フライドオニオンをたっぷりのせて、コクのある熱々のトマトソースをかけて混ぜます。お店の人がやってあげる、という感じでトマトソースを持ち上げたのですが、ガイドのM.A.さんが、日本の方は辛いのが苦手かもしれないのでご自分で、と制してくださいました。好みでガーリックソース、チリソース、クミンソルトライムなどで味付けして、スプーン(!)を使っていただくんですが、なかなかに衝撃的なB級グルメでした。でもなんだか癖になる味で私もAさんもこの大量の炭水化物をモリモリと誇り高く完食しました。

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他にすごく嬉しかったのがエジプトでの午後ティーの定番、ミントティーです。暑い日に熱くて甘いこのお茶がなぜかホッとしました。市場をお散歩した後だったので、疲れている体にぴったりでした。このティーハウスもコロニアルスタイル(といっていいのかわかりませんが、エルキュールポアロがお茶を飲んでそうな感じ)っぽくてオシャレでした。

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エジプト考古学博物館の展示物も、ほとんどがもうそろそろカイロからギザの新しい大エジプト博物館(2020年開館予定だったのに2024年の今もまだ開館していませんけれど)に移動してしまうということで、最後にこのイギリスが建てたというこれまたコロニアルなピンク色の博物館を見ておこう、という事になりました。そして改めて気づいたのが、とにかくエジプトの埋葬品は、マトリョーシカのように物を包んで箱に入れてさらに包んでそれを箱に入れて、上からまた箱を被せて埋葬する、というようなオーバーパッキング文化なんですね。上の写真はツタンカーメン王の臓器を入れたというカノーポスの箱(臓器はさらにその箱の中の4つのヒト型の壺に入れてあったそうです。臓器(!)を入れていたとは全く思い難いかわいい感じの真っ白な壺です。ちなみに私が見た時は壺は3つしかなかったんですけど、あと一つはどうしたんでしょうか)を入れていたカノーポス厨子です。この箱を守る、金色に輝く女神様たちがなかなか可愛らしくて完全に推せます。4体いらっしゃいますがそれぞれイシス女神、ネフティス女神、ネイト女神、セルケト女神の4名だそうです。多分ですけど上の写真の左側がネフティス、右側がネイト。反対側にいるセルケト(サソリを頭に載せていて前衛的!)は、カイロ空港の到着ロビーにもどーんと立っていらっしゃるのでかなり印象的です。頭が身体に対して大きめだからでしょうか、なんとなくデフォルメして漫画化された女神様的な印象すら受けます。この4人の女神様たち、晴れてこの日から私の新しい推しとなりました。

いやあエジプトは衝撃的ですね。この時はハマスがイスラエルでテロをする、ほんのちょっと前だったので特に治安の不安もなく行きましたが、まぁ今もカイロやギザだったら特に問題はないのでしょうか。エジプトに眠る大量の遺跡のことを考えると、いろんなものが失われる前になんとしても平和になってほしいと思ってしまいます。アレクサンドリアやルクソールも魅力的ですよね。駆け足ではなく一つのところにゆっくり留まってまたもう一段階のバージョンアップを図りたいものです。全くもってお伝えする語彙がないのが情けないのですが、エジプト、思っていたのと全然違って感動しました。また絶対行こう。

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