イタリアで8月25日から公開となったので早速、原語(V.O.)で日本人のお友達のYさんを誘って土曜日に観に行ってきました。評論家の皆様の評価はそんなに良くないという噂を聞いていたのですが、一番どうでもいい私の評価はズバリA-とかなりの高評価です。というのも、まず(1)とりあえずすべての音楽が秀逸、(2)歳をとったブラッドピットがこんなにコテコテのアメリカンコメディをやっているのに普通にカッコ良すぎる、(3)アクション(1対1の戦い)がずっと見ていると(すごいのに)笑える、(4)細かいアメリカンジョークがこれでもかとばかりにかぶせ気味に満遍なく映画全体にまぶされていてクックックッとずっと笑える、(5)最初の”Talk to me”で分かる私の大好きなあの人!(6)合計2秒弱くらいしか出なかったと思われる私の大好きなあの人のカメオ、(7)日本に寄せてるはずなのに、本当の日本を描くことはあえて避けているという感覚、このサブカルチャー対象としてのいい感じな日本の描き方、などなど私にとっては完全にツボを押された、としか言えない出来になっていました。
日本語版のトレイラーもあったのでこちらもどうぞ。そしてまず(1)の音楽なんですが、冒頭シーンで当たり前のようにStayin’ Aliveが大音量で流れるのでポップコーンを抱えて映画を観始めたばっかりの瞬間にもかかわらず、身体が普通にノリノリになりました。本当に音楽の力はすごいなぁと思ってしまいます。そして新幹線(bullet train)が静岡駅に入ってからヤクザのチンピラがプラットフォームに並び始めた頃にカッコよく聞こえてくる70年代のツェッペリンのようなロックに鳥肌が。最初にうっすら踏切の音が聞こえて、ベースが心拍音のような状況になってきて、つられて自分までドキドキしたときに、あの気だるい「オォーオゥ、オォーオゥ」というとても聞いたことのある日本人な声が。私の大好きなOT、つまり奥田民生さんのKill me prettyでした。ユニコーン時代からの大ファンの私の贔屓目(耳?)なしに聞いても本当にカッコよかった。Dominic Lewisが作詞作曲。そしてDominic Lewisが同じく作った京都駅に新幹線が入って行く時の音楽も本当に心の底からカッコよく、映画の最中に「これは早速サウンドトラックをライブラリ登録しなければ!」と考えていました。
(2)のブラッドピットのイケメン度は言わずもがななんですが、彼もあと数年で還暦というお年頃ですよね。なのにこのロバートレッドフォードを彷彿とさせるいい感じの年の取り方とさらに磨きのかかった美しさはなんなんでしょうか。監督のデイヴィットリーチさんは私の好きなDeadpool(マーベル)も撮っていますが、あの美しいライアンレイノルズが全身(そして顔面)火傷ですごいことになるところから始まりますよね。それなのに、このデッドプール絶対カッコいい、というのをあの微妙なヒーロースーツの上から普通に表現できてしまう。それと同じものを感じました。ブラッドピットが完全コメディを演じているのに、お年もとって、「つくづく不運な殺し屋」というキャラを演じているのに、それなのに全体に流れるこの絶対エース的なカッコよさはなんなんでしょうか。ファイトクラブでは鼻についた(?)端正な顔立ちが、歳をとったことでこんなによくなるってこともあるんですね。上にも書きましたが、いまよりずっと若いブラッドピットがフレンズに出た時、放送をアメリカでリアルタイムに毎週楽しみに見ていたんですが、「ぎゃー!」と叫んだのを覚えています。そしてブラッドピットに全く合わない、元肥満時のいじめられっ子というドラマの設定(”I hate Rachel Greene Club”みたいなFight Clubのパロディーみたいなダサいクラブをロスと一緒に作っていたというのにウケます)が衝撃的で、逆に恐ろしくカッコよく見えたんですよね。何だかデジャヴです。
(3)の面白いアクションはこの映画をお薦めするポイントの上位に来ると思います。かっこいいというよりは一つ一つ、いちいち面白いです。キルビルやデッドプールのように殺し合いシーンが壮絶で血まみれで痛そうなのは個人の感覚(好み、というか)によると思いますが、それはそれで面白さを増しています。そして普通にお互いに会話をしながら、時には周りの人に気を遣いながら人と人が対峙して殺し合いをする、というSurrealな感覚が、現実では決して体験するものではないからか、とても面白いと思ってしまいます。スクリーンではバン、ダン、ガン、ドン、と激しいアクションが繰り広げられているのに観客はみんなで笑顔、という不気味な感じかもしれません。面白いです。ちょっとNotting Hillのケンカシーンも彷彿とさせられます。まああれはケンカでこっちは殺し合いですけれど。
(4)のアメリカンジョークは、全体的にすごくお洒落面白くて、強いて言えば真田広之さんが出てくるシーンでのジョークが、いまいちギリギリのれてない感じがあったのがちょっと残念だった(でも逆にスベり面白かった)。細かくは覚えてないのですが、”Let me tell you a story” “Nah, I am good” “Well, it’s short” “I am fine” “It’s really quick” “Nope”みたいなやりとりが笑えました。そして嫌と言われても結局そのStoryを話す頑固なthe Elder。
(5)はSBさん(ネタバレすみません)の声です、ちゃんと最後に出てきてくれます。そして(6)は結構びっくりします。(7)はもう少し説明したいのですが、アメリカ人が好きそうなアニメの世界観ってありますよね、アキラとか。あとはベイマックスの映画で描かれていたSan Fransokyo(トーキョーとサンフランシスコのミックス)のような雰囲気の町。決して本物の日本を知っているわけではないけれど、外国に輸入されて多少脚色された日本を好きになってしまって夢中になるオタクな感覚、といえばわかりやすいでしょうか?それをあえて真っ向から表現した、という感じがとても好きです。アメリカンコミックに現れるトーキョーの街を実写版にしました、という感覚。ブレードランナー的な。
元々は伊坂幸太郎さんの原作があるということなので早速読んでみようと思いますが、読む前コメントで申し訳ないのですが、ということは、あの際限なく魅力的な双子(?)コンビのLemon & Tangerineはつまりレモンとみかん、ということですね?日本語だとちょっと韻を踏んでて(いやそうでもないか)コンビ名としては悪くないんですが、Lemon & Tangerineになった時のTangerineの間延び感が実は逆にいい演出になったんじゃないでしょうか。そしてMandarineにせずTangerineにしたセンスの良さもあとでじわっときました。
評論家の評価はさておき、私は個人的に必ずもう一度DVDやストリームで見て色々と確認したり楽しんだりしたい、と思える映画となりました。2時間強、結構ずっと笑顔にしてもらったのも嬉しい限り。夏のエンターテイメントとして、アクション好きでスプラッターが苦手でない限り、かなりお薦めです。