最近のネットフリックス雑感

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上の写真は内容とは全く関係ないのですが、コロッセオの横にあるコスタンティーノの凱旋門です。ローマにはこういう門がいくつもあるのでどれがどれだったか時々わからなくなるのですが、これは割と目立つところにあるのでローマに観光に来られたことがある方だったら観たことがあるのではないでしょうか。先日ランニングの途中にすごく綺麗だったので写真を撮りました。で、今日はくだらなくて申し訳ないのですが、ここ数ヶ月ネットフリックスを見ていて書き留めておきたいことがあったので、3つ紹介しようと思います。

まずメタリカのお話。そうです、あの伝説以上のアメリカのメタルバンドのメタリカ。90年台のヘヴィメタルといえば彼ら、と言えると思うし、私のミュージックライブラリにも本当に大きな存在です。よく覚えているのが、私がアメリカに住んでいた2000年初頭に、ナップスター(懐かしい!)というP2Pで音楽をタダでお互いにダウンロードしちゃうというアプリが大流行したんですよね。背景をお話しすると、その数年前の音楽がデジタル音源化する前は、音楽といえば貸しレコード屋さん(レンタルCD屋さん、ですね)に行って、レコードやCDを物理的に借りて、借りている期間中に友達とも共有し、コツコツとカセットテープにダビング(!)して、ラベルをきれいに自作したり、お気に入りの音楽は別にミックステープを作ったり、と、割と今思えばかなり創作的な活動を一般の皆さんが普通に行っていました。ですからナップスターが出た頃は、デジタル音源を友達と共有することがどう「悪い」ことなのかわかりづらかった、という部分もあったんですが、まあ普通に爆発的に人気になりますよね。だって当時の音質(ファイルサイズ)とはいえ、CD音源のmp3ファイルがタダで『インターネット上の友達』からダウンロードできるわけですから、誰もCDを買わなくなります。そこで立ち上がったのが、このメタリカ様です。そこから割と衝撃的なインターネットの大事件となったんですが、ナップスターが敗訴する形で終結したんですね。元々メタリカのよく聞こえない歌詞を一生懸命聞くと、内容はかなり社会派なので、こういうことに立ち上がるタイプなのはそこまで意外ではなかったんですが、ナップスターの当時の(今もかな)アウトローでダークな人気を思うと、それに反するのがメタリカ、というのが何だかとてつもなく意外で、逆にかっこいいと思ってしまったのを思い出します。

それでなぜ今、メタリカの話かというと、ネットフリックスでブーム再来です。みんな大好き、ストレンジャーシングスで、エディマンソンが「アップサイドダウン」で、メタリカのマスターオブパペッツの出だしのリフを弾き始めた時は、鳥肌なんてヤワすぎるものではなく、何だかよくわからないものが私の全身を駆け巡って、血が沸騰するような感覚で、本当に一瞬で涙目になりました。こちらをどうぞ。

このシーン、実は放映する前の予告編で、音は鳴っていなかったものの、このエディマンソン役のジョセフクインがこのギターを抱えた姿でチラッと映っていたんですね。その映像で、ギターのフレットに置かれた指の動きをみただけで、もしや、と思ったメタリカオタクな人たちが、これってMaster of Puppetsじゃね?とソーシャルメディアで話題にしていたので私も楽しみにしていたのでした。オタクさんたちって本当にすごいですね。

エディは、自分が留年し続けているハイスクールでヘルファイアクラブという、オタクのクラブ活動をおこなっていたんですが、基本的には変人(に見える)ということで、学校の大多数に気持ち悪がられているんですね。学校の運動部のスター選手たちにも意味なくいじめられたりしていて、スクールカースト的には最底辺にいるわけです。そして彼の主宰するヘルファイアクラブの活動の中心はダンジョンズ&ドラゴンズというカードボードRPG。ですからクラブ自体は今でいうゲーマーの、ある意味かわいい子供達の活動なんですね。ですがヘルファイアクラブの由来である18世紀の社交クラブのように、本当は普通の仲良しクラブなのに、悪魔宗教のような扱いを受けてしまうわけです。

そのヘルファイアクラブで自作したという設定のTシャツが実際結構イケていて、私もちょっと欲しいと思ってしまうくらいなんですよね。ぜひヘルファイアクラブ、Tシャツで検索かけてみてください。そして先日ぼんやりソーシャルメディアを見ていたときに、私はその場で飛び上がりました。だってメタリカのメンバーがそのTシャツを全員で着ている写真があったんです。しかもそこにはエディ役のジョセフクインがギターを持って一緒に演奏するビデオまであって(すごく上手で、ドラムのラーズに「今日からメタリカは君を入れて五人だ」って言ってもらってました)、何だか、この2022年にこんなものを見せていただけるなんて、と感動したので書き留めておきたいと思って長々とこんなことを書いています。

次に書き留めておきたいのはみんな大好き韓国ドラマです。イタリアでも普通に流行っています。スクイッドゲームも見たし、いくつか流行っているのを見たんですが、私個人は特にいいと思ったことはなかったんですよね(どれも普通に面白かったけれど)。でも最近見て、生まれて初めて韓国ドラマを、心の底からよかった、と思ったものがあったので紹介します。それは Our Bluesです。いつもイタリアでも視聴上位に入っていたので日本でも大人気だろうし、皆さんもう見ているかもしれませんね。でも一応知らない方のために説明すると、いわゆる韓流と言われるドラマの基本の作り(財閥の金持ち息子、貧乏だけどかわいい女の子、意地悪な母親、盗み聞きする同僚、おかしいくらいイケメンなちょっと化粧してる男子、奇遇すぎる出会い、とかそういう「パターン」系のもの)は全くなく、それより何より、素朴な、韓国の一般平均より下かと思われる生活レベルの済州島の住民のどちらかというと粗野で乱暴な生き様を中心とした、すごく心の奥底をえぐってくるような、みんなが触れないところにあえて触れ、批判を覚悟で作っている、というようなすごいドラマでした。私はこのドラマで多分3年分くらいの涙を流しました。嗚咽してしまうようなところもたくさんあって毎回本当に苦しかったけれど、その分、最終回はドラマを作った側の人々の気持ちが本当に良く伝わってきて、全く関係ない私までも、よし頑張ろう、こうやって私の幸せも、毎日ちゃんと感じよう、と力強く思えたのですごくよかったです。済州島の美しさも特に誇張されていないのに、素朴な海の美しさと偉大さ(怖さ)が伝わってきてすごく好感が持てました。

そして最後に書いておきたいのがRose Island。これは「イタリア版吉里吉里人」といえばわかりやすいかもしれませんが、吉里吉里人が書かれた時より前に起こったことだし、しかもこちらは小説ではなく実話だし、という意味で、イタリア人本当の意味で「すごい」な、と呆気に取られます。本当にどっちが正しいとか、よくわからなくなるし、イタリアってやっぱりこの時の行動は武器を用いた侵攻みたいな形になっちゃうのかしら、と思うと不思議な気持ちです。そして地球には元々国なんかなかったわけだから、と思いつつイマジンのようなことを考えると、今現在進行形のロシアのウクライナ侵攻をみんながじっと見守っている状態の「現実が信じられない」という気持ちがさらに高まります。でもその一方でこういうドキュメンタリー映画を見ると、国同士の戦争というものが、実際は「ここはぼく・わたしのくに!」とか「はむかうやつはゆるさない!」と地球上で高らかに主張することであることに気付いたりして、その幼稚な地団駄感に本当にびっくりします。そして吉里吉里人と同じく、方言ベースの自国語を作るシーンを見て、言語と国との意外に強い政治的つながりに思いを馳せてしまいました。観た後に何ヶ月も色々なことを考えさせてくれる映画って本当にエンターテイメントとしても学習としてもありがたいと思います。

最近ローマでは毎日のように気象警報で「暑すぎるのでなるべく外に出ないように」と言われ、家にいることが多いのですが、こうしてネットフリックスばっかり見ていると逆に頭が溶けちゃわないように気をつけなきゃいけませんね。くだらないものも多いですがこうして時々すごく良いものもあるので、ついつい見てしまいます。最近友達が「ネットフリックスを見ながら携帯でYoutubeみたりしちゃう」というホラー話をしていたのを聞いて、最近はネットフリックスはテレビ画面だけで見る、と決めて、携帯やタブレットを遠くに追いやって「集中!」といった感じで見るように決めています。また何か良いものを見つけたらご紹介します。

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