イタリア語でキッキ（Chicchi）はキッコの複数形で、多分「粒子」的な意味合いがあるはずなので粒状のものを呼びます。Chicchi di caffè（キッキ・ディ・カフェ）だと「コーヒー豆」というような意味になります。なぜ「ような」をつけたかというと、「挽いた豆」を差すことも多いはずなので必ずしも「豆（ホールビーンズ）」を指すわけではなさそう、というニュアンスが入っていると、多分思うからです。間違っていたらごめんなさい。
5月に友達のAと一緒に行ったマリゴールドというカフェレストランには毎週のようにお世話になっているのですが（コーヒーチケットも始まりました）、そこに新しいバリスタさんが入って、独自ブレンドのレーベルを立ち上げたということで今色々とブレンドを試しています。今のところ５種類あって、シングルオリジンというわけではなさそうなのですが、ペルー、パプアニューギニア、コロンビア、ルワンダ、とお店のオリジナルのマリゴールドブレンド、となっています。マリゴールドブレンドは濃いローストになっているのでイタリアン（エスプレッソ）でいわゆるモカ（イタリアンコーヒーポット）を使って淹れるコーヒーにぴったりなのですが、このペルーの豆をペーパードリップ用に挽いていただいたところ、ケメックスで淹れるコーヒーに本当にぴったりで朝から幸せな気分になったのでご紹介しておこうと思いました。ペルーのはソムリエ風に言うとネクタリン、青リンゴ、レモン果皮、バニラのような芳香だそうで、マリゴールドブレンドはベルガモット、野苺、ココア、マジパン、蜂蜜のコクと香りだそうです。確かにそんな感じなのでローマにお住まいの方には是非お勧めしたいコーヒーです。お店でマリゴールドブレンドのカフェ・ノルマーレ（エスプレッソ）を頼むとはっきりとこの味がわかります。
ちなみにパプアニューギニア（PNGと呼ぶことが多いです）って書いて思い出しましたが、この国は日本にいて「国名」として知った時は特にこれといって何の感想もない国でした。でも去年までの４年間に地域事務所でお世話になっている間に、太平洋諸島の国々の方々とはとても親しくさせていただいたので（アジアもそうなんですが）、その国々の事情などに関してとても理解を深めることができた充実した４年間だったな、とふと思いました。私の個人的な感想ですが、PNGは実はアジア太平洋諸国全体で多分一番難しいかもしれない国です。と言うのもまず治安の問題があります。特に女性にはとても危なく、私の所属する機関でも、初めて行く女性職員を一人で派遣することはまずないんじゃないでしょうか。「ラスカル」と言う可愛い名前なのに恐ろしいギャングがいて、人の命なんて彼らにとっては全く大したことない、という話を聞いたこともあります。
でもどうしてそんなに治安が悪くなってしまうのか、と考えると、要因はもちろん複数あるのですが、まず貧困が第一の問題で、首都だと失業率が60%を超えていると聞いています。そして複数の部族がいるので部族間の衝突が激しいこと、近代化したのがごく最近で、法律などの整備も他の国に比べると遅く教育もなかなか進まなかったので貧困からまだ抜け出せずにいることなどが主な理由です。またこれは太平洋諸国に共通しているのですが、伝統もあるかもしれませんが、土地柄、農業というものが定着せず、ヤシの実を食べたり、魚をとって食べたりする原始的な食生活が基本になってしまって大人も長生きしないし、子供の生存率も低くなってしまうわけです。ですから明らかに国際的な援助が最も必要な国の一つなのです。なのに治安が悪いこともあって、外国の人が行って信頼を得て一緒に働こう、という形になるのに非常に時間がかかってしまうんですね。
そんな中、コーヒー園というのは歴史を紐解くと、植民地、プランテーション、強制栽培のような暗い部分もありますが、現代になってからは第３者を通さない、小さな農園との共同で持続可能な直接栽培、開発、ローストなどを行う善良なベンチャーがたくさんできてきたのでちょっと希望の光が見えます。このマリゴールドの豆もそうやって購入しているようで、だからこそ、スーパーで買うようなコーヒー豆のお値段に比べると当然普通に高いです。でも多分、そもそも労働力をタダみたいにしていたからコーヒーが安かったわけで、色々な労力や送料、原材料などを考えるとコーヒーってもう少し高くてもいいはず、といつも微妙な気持ちになってしまいます。今はこんなことを考えながら色々なものを購入できるようになってきたので良い時代になりましたよね。本当の本当に、持続可能なのか、貧困を助けているのか、と考え始めるとキリがないですけど、コーヒーはとても美味しくて、金額を超えた何かがあるのは確かです。