今日は論文のお知らせです。2018年後半からせっせとスコーピングリビューをやってデータを出して書いていた論文がやっと出ました。30日ほどは無料でダウンロードできますのでご興味ある方はこちらからどうぞ:http://bit.ly/31Icb9U
「途上国のために食品安全に投資する」というタイトルだと、はて、何のこと?という感じですが、これにはサブタイトルがあって、「食品安全管理のためのゲノム解析活用における利点および問題点」というような感じでしょうか。つまりゲノム解析ってすごく便利で病原菌を見つけ出したり解析したりするのにすごく適しているんですね。それで先進国はどんどん技術を使っていて解析の技術も日進月歩で、しかもコストもぐんぐん落ちているんです。今や10カ国くらい国々が普通に食品の検査とともにサンプルをゲノム解析に回して、問題はなくともデータをどんどんとり続けているんですね。でもそんな中途上国は若干置いてけぼり。
結論には「スコーピングリビューおよびフォーカスグループセッションの結果より、途上国でのゲノム解析は研究分野でしか行われていないことが明らかになった。多くの途上国政府は食品安全というトピック自体を必ずしも優先順位の高い分野と考えているわけではなく、ゲノム解析技術に高額な金銭的投資をして食中毒の分析をしたり食品に含まれる有害なものを精査したりしようというところにきていないのである。このような先進国と途上国とでのゲノム解析技術利用における差は食農貿易分野に望まない格差をもたらしてしまうかもしれない。」
「途上国にはインフラやラボ、バイオインフォマティックスにおける能力なども含めた技術レベルで、日常的にゲノム解析を利用するにはまだたくさんの障害があると言える。この事実は世界的に憂慮すべきことである。なぜならそもそもゲノム解析という技術は世界規模でデータをリアルタイムで共有でき、それをすぐにでも手元にあるデータと照会できるという点で他の何よりも優れているのだ。それなのに集めるデータが先進国の部分的なものに限られるとしたらゲノム解析の優位性を活かしきれていないとしか言えない。世界中からさまざまな解析データを集め、共有することによって初めて、ゲノム解析は国際的な公衆衛生と食農貿易に貢献できるといえよう。」
「すべての国がゲノム解析技術の利益を享受するためには国際的に知識共有や能力開発の面で活動しているグループやノンプロフィットの組織の貢献は必須である。国際機関による遅延なき科学的助言やグローバルなデータ共有に関する議論も、すべての人がこの技術を活用できるようになるためには重要である。途上国への技術サポートが、ゲノム解析の食品安全部門での活用には喫緊の課題なのである。」と、まとめました。私の可愛いインターン女子2名(イタリア人のイザベラちゃんと韓国人のウンニョンちゃん)もすごく頑張ってくれたリサーチなので嬉しさ100倍なのです。