ラ・ミュエット界隈

私がパリに出張の時はだいたいにおいてOECD(経済協力開発機構)での会議に参加するためなんですが、そのOECDはパリの中でも高級住宅が立ち並ぶおハイソなエリアにあります。北側はブローニュの森でメトロの最寄り駅は9番線のLa Muette。地下鉄の出口から階段を上がっていくと、なんとも素敵な町並みがぱーっと広がっていて、左手にはすぐに木立が美しいラヌラグ公園があるわ、おしゃれなビストロやサロン・ドゥ・テ、ブーランジェリーにパティスリーが並んでいていい感じです。
今日は会議の最終日で、12時半にすべての議題が終わったので、OECDでバイオセイフティの仕事をしているフランス人の友達のBとランチに行こうよ、ということになりました。まずは前回メキシコに行ったときに一緒に撮った写真を見せてもらってわいわい言って、せっかくだし外でランチしよう、と、そのラ・ミュエット駅のすぐ近くにあるLa Rotonde de la Muetteというビストロの外の席に座りました。イタリアとちょっと違うなといつも思うのが、フランスではお二人様で外の席に案内される場合、どんなに小さなテーブルであっても、ほとんどの場合向かい合わせに座ることがないということ。店の壁に背中を向けて2人並んで座ることになります。目の前の通りを通る人をウォッチングするような体勢になるわけですね。ちなみに友達のBはゲイの男性ですが、背も高いしかなり素敵な雰囲気をかもしだしているので一緒におしゃれランチをするのがかなり誇らしいと思ってしまいます。サービスもしたがってかなり良いサービスを受けられるんですよ。フランスは見た目勝負なんでしょうか。ですから、フランスに旅行されるみなさまは、多少歩きづらくても、周りから目をとめられるような素敵な靴を履いて、暑くてもスカーフをさらりと巻いて、帽子なんてかぶらずに、重くてもまるで空気しか入ってないようなふりをしてバッグを小脇にかかえて、サングラスはマストで、さっそうとして、今からオペラ鑑賞にでもいくのかというほどお洒落をして街歩きをされることをおすすめします。女性はスカートのほうが絶対サービスは良いです。あ、でもこういうアドバイスっていうのは善し悪しですね。ちょっとしたサービスを感じるかどうかというのは主観的な問題だし、お洒落をしていてもちゃんとサービスしてもらえないこともあるので、その辺は自分なりの優先順位で(歩きやすい靴の方がいいとか)決めるのがいいのでしょう。当たり前ですが。私はパリではおのぼりさんなので気合いを入れます。


Bがビーフターター、私がチキン+数種類のグレープフルーツののったグリーンサラダを食べた後、コーヒーを頼んだのですが、一緒にホームメイドのマドレーヌがひとつずつついてきました。マドレーヌは日本でもおなじみですが、フランスではかなり日常的な子供のおやつで、ケーキ屋さんではなく、パン屋さんにあるものだそうです。ホームメイドのマドレーヌもふつうで、マドレーヌで母親を思い出す人も多いとか。この話をBがしてくれていたときに、突然ハンマーで殴られたようにがつんと私に記憶が戻って来たのがプルーストの「失われた時を求めて」。中学生の時に抄訳本を読んだ記憶がありますが、当時の私にとってフランス哲学というのは非常に敷居の高いもので、表面的な話を読んで「そういうものか」と納得した状態でしたが、今異常なほどに読み返したい気分です。たしかマドレーヌで自分の幼い頃の思い出がくっきりと蘇るという話だったはず。そして関係があるかないか分かりませんが、プルーストもゲイじゃなかったっけ(関係ない)。その話をBにすると、何かを食べたり匂いをかいだりして記憶が呼び覚まされる現象をフランス語でLa madeleine de Proust(プルーストのマドレーヌ)というということを教えてもらいました。
ランチのあと、Bが、マルモッタン美術館には行ったことある?と聞くので、ないと答えると、「徒歩圏内にあるし、あなたの好きそうな絵がたくさんあるから行っておいでよ」と案内してくれました。モネの絵がたくさんある素敵な美術館。人も多くないし、かなり好感の持てる美術館です。パリではロダン美術館が好きだったけれど、この美術館もかなり私の好みの上位美術館になりそうです。写真がそのマルモッタン美術館の正面。入り口は側面にあります(向かって左側)。
数時間素敵な時間を過ごした後、そこからゆっくり歩いてホテルに帰ったのですが、帰りに思った以上にいろいろ買い物しました。今ヨーロッパの主要都市は夏の大セール中なのです。まずはl’entrepotという雑貨屋さんでロール状になった切り取って使うタイプのコットンの小さなナプキン。ショッキングピンクとダークパープルの2種類を買いました。そしてどうしても目が離せなくなった不格好なガラスの手作りのぼってりした一輪挿しヴェース(リンク先の写真の右側にちらりと写っています)。これは4ユーロ。あと、フランスに行くとかならず目に留まってしまう、ドット模様ですが、薄い茶色にベージュのドットなレース付きのサマードレスが半額になっていたのでそれも。そのあとCulinarionというキッチン用品のお店で小さな白い陶器にドット模様(また!)のイースターラビットがついたエッグスタンドを2ユーロで見つけたので紺色と赤のラビットちゃんをひとつずつ(リンク先のエッグスタンドの下にしいてあるコットンの小さなナプキンが上に書いたロール状のものです)。そしてそこでMadeleinette、つまりプチ・マドレーヌを焼く焼き型を見つけてしまったので、これは運命に違いないと思って買いました。すべて最終的にさらに30%オフになってました。
出張なのに不必要に帰りの荷物が増えてしまいました。せっせと大事に持って帰ります。

2 Replies to “ラ・ミュエット界隈”

  1. まみー
    パリにいるの!いいなー。ドットもいいなー。
    プルースト、がつんときました。マドレーヌを紅茶に浸してたべるんだっけ?フランス語でそういうんだねー。ありがとう、ひとつ賢くなっちゃった。もうすぐまた会えるね、楽しみねー!

  2. もうローマに戻ってきてるよ。ドットいいでしょ。パリにいるとすごくドットが多い気がするのでかなり気になっちゃうよ。そうそう、フランス語でそういうみたいよ。使用例としては「お豆腐のお味噌汁は私にとってのプルーストのマドレーヌなんだよね」という感じらしいよ。もうすぐ会えるの楽しみにしてます!

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