リフォーム。

週末がまもなく終わるところですが、今週末はバタバタしていました。金曜日に友達と4人で近くのピッツェリアに行って私のお気に入りのピザを紹介してみんなで楽しく食べ、だらだらと話していたらあっというまに夜更け。イタリアの夕食は遅く始まるのでかならずこういうことになります。だいたい日付が変わってから帰宅ということになるんですね。
そして翌日の土曜日は眠い目をこすりながらも、なんと出勤。「なんと」なんて書かなくても土曜日に仕事してらっしゃる方なんて世界中にたくさんいらっしゃると思うのですが、私は実は現在の職場で仕事を初めてから、自主的には週末出勤することもよくあるものの「この土曜日に出勤しなければならない」とされて仕事をしたのは初めてのことなのです。私の属する機関は2年に1度、11月のこの時期に大きな会議があり、この機関のメンバー国の代表団が集まってこの機関の仕事や運営に関することを1週間ほど話し合うのですね。そして土曜日はだいたいその会議レポートの発表、最終調整にあてられているため職員は土曜日も出勤することを義務づけられているわけです。ですが今まで私はこの時期はすべて出張に行っていてローマにいなかったので、この大げさな職員全員土曜日出勤の日に直面しなかっただけなのでした。出張に出ていると土曜日も日曜日もなく働いているので同じなんですけどね。ちなみに今年は実はその2年に1度の例年会議ではなく、その間年度の特別会議でした。メンバー国がこの機関のリフォームに同意してから数年経ちますが、やっとアクションプランを認め、42.6ミリオンドルのリフォームに合意したということです。仕事を効率化させて無駄を削減するためのリフォームに、42.6ミリオンもかかるんですね。


時々メディアやNGOなどの組織がこのリフォームのことを知ると「この機関は機関の独立外部評価によって著しく批判されている」などというような記事を、意図的に、あるいは勘違いして書き立てたりすることがあるので書いておきますが、このリフォームは実は機関のスタッフ含め内部の者も心から願っていたものです。国連が肥大化、老朽化し、批判が集まる中、その最大の専門機関であるこの機関もなかなか昔の慣習(良きも悪しきも)から抜け出せず、オバマ氏ではないですが「変化」を渇望しているのです。それでその独立外部評価というのも、提案されてから非常に喜んで受け入れ(自分たちの仕事を客観的に評価してもらって、より良い変更案を出してもらえるというのは嬉しいことだと思いませんか)、かなり積極的に協力したはずです。少なくとも私の属する部(ディヴィション)は非常に積極的でした。
そしてこれはよく誤解されることですが、国連も含め国連機関のすべては、何事も大きな方針を決めるには「メンバー国の賛同」が必要になります。つまり、この機関のすべての大きな決まり事は「機関」そのものが決めているのではなくて「メンバー国」が決めているのです(私の属する機関だと現在190前後のメンバー国があります)。ですからときどき「国連」に対する批判を見て納得することもあれば首をかしげることもあるんですよ。小さなプロジェクトなどは専門官たちが個々の課などで決定して実行している事が多いですが、そのプロジェクトを含めた全体の方針は「メンバー国」の賛同なしには認可されないのです。当然、そういった方針に関しても、国連職員が案を出したり文章を書いたりするのですが、それは結局「草案」でしかなく、最終的にいろいろな決定事項は「メンバー国」によってきめられているのです。ですから国連や国連機関への「メンバー国」による批判は、こういった全体会議で文書にて提出されるべきで、もし提出されれば非常に大きな問題となるので無視されることは絶対にないのです。ですから各国メディアや一部の組織は、国連への批判は、実は自国に対して、しかるべきチャンネルから行ったほうが、通りやすいかもしれないと思ってしまうんですよね。自国の政府とやりとりするのも、面倒なレイヤーが増えてしまってもどかしいのかもしれませんが。
ただその「メンバー国の賛同」というのがやっかいなもので、たとえば経済大国Aというのがあったとして、その国以外の世界のほとんどの国がその国をうらやましく思っていて、その国の方針に反対していたとすると、たとえその方針が正論であったとしても、国際会議などでは当然A国は「マイノリティ」になってしまい、思うように自国の意見を通すことができないかもしれません。そうなるとその決定の場である「国連」を批判したくなってしまう状況は理解できるので、そういった「賛同」などの言葉の「定義」をしっかり全てのメンバー国が納得する形で設定していくことは実は非常に難しいことなんでしょうね。もしかしたら「無理」に限りなく近いのかもしれません。
ちょっと話がそれましたが、結論はというと、この私の属する機関のリフォームは外部の人も内部の人も、心から望んだものだということです。リフォーム内容にはいろいろと内部からも外部からもさまざまな意見があるようですが、とにかく、機関の動きを良い方向へ、という気持ちでプランがたてられたことは一目瞭然なので(ウェブにリフォームプランがありますので興味がある方は見てくださいね)私はとても期待したいんです。当然、現実味があるかと問われると、前述したように、肥大化、老朽化したこの組織に加え、さらに仕事が「報酬」主義ではないという難しい現実から、正直多少の諦め、あるいは妥協はあるだろうなと個人的には思ってしまいます。
私の同僚にはこのリフォームをとても心配している人もいます。切られやすいかもしれない、お給料の高い方や微妙な中堅ポストにいる方だったりすると家庭もあるだろうし、不安かもしれませんね。自分がその立場(独立外部評価で「切った方がよい」とされた部署にいる、など)だったらと思うと勝手なことも言えませんが、でも、このお仕事、上にも書いたように「報酬主義」ではないのでこういうふうにきちんと評価してもらって自分のやっている事が本当に求められていて、価値があるのかどうかを見極めてもらった結果「求められていない」と評価されたら、それは別に個人の才能、知識、技能、実力などを否定されているわけではなく「トピック」の優先度が低いだけなので、潔く、ここは自分の職場ではないと思える強さが必要なんじゃないかと思います。
勝手なことを書きましたが、私の属する食品安全のセクターはたまたまホットトピックなのでしばらく必要とされる日々が続きそうです。ですが将来的に世界で食糧不足が本格化してきたらもしかしたら食品安全どころじゃなくなることもあるかもしれないので(あるかな?)、そのあたりは柔軟に自分のエクスパティーズの使いどころを見極めていきたいですね。

Leave a Reply

Your email address will not be published. Required fields are marked *