棒の長さとBSE問題

inward.jpg昨日、日本にいる母と電話で話していてなるほどだなぁと思ったので書き留めておくことにしました。突然ですが、左の矢印、みなさんわりと馴染み深いものだと思うんですよね。これはあの、いわゆる「目の錯覚」のミニクイズの一枚目の絵です。私が矢印をつくりました。

outward2.jpgそしてご想像通り、こちらが2枚目の絵。目の錯覚って不思議ですよね。絶対矢印が外側になっているほうが棒の長さが違ってみえますよね。でも、これには引っかけがあります。知りたい方は続きを読んでくださいね。


outward1.jpgというのも、私はさらにこんな矢印も作ったからです。これが3枚目。何が違うって、棒の長さが違うんです。2枚目の絵、実は1枚目の絵の棒の長さと同じではなかったんです。ホントはこっちが同じ長さの棒です。
outward3.jpgと、いいつつ、私はさらにもう一枚、4枚目の矢印の絵を作っていました。でもこれは違う長さの棒を使った矢印なのです。よく見ると分かると思います。これは一枚目の棒の長さよりもやや短い棒の長さになっています。
さて、ここまで書いて、私を信用してくださる方、あるいはこんな話どうでもいいと思ってしまった方は、「ふーん、じゃあ、1枚目の棒の長さと3枚目の棒の長さが同じなのね」と思ったことでしょう。そして、私がここで提議する問題は、「それは真実かどうか」。

私が書いたことを信用するのもひとつの手だとは思うんですが、それを確かめるにはどうするか、というと、いくつか方法は考えられますね。上の絵をダウンロードしてきて自分のドローイングソフトなどで重ねてみるのもひとつの手だし、定規を持ってきて実際にスクリーンに当ててみて、長さをはかってみるのもいいかもしれません。敢えてここに答えは書きませんが、結局、真実は、あるいは真実に近いものは、「自分が」「確かめようという意思で」「実際に確かめないと」なかなか分からない、ということのメタファーなわけです。

長い前置きになってしまいましたが、なぜこんなに熱くなっているかというと、私は日本でBSE問題に対してかなり憤っているからです。まず、「全頭検査しないかぎりアメリカの牛肉を輸入しない」と言い出したのは一体全体誰なのか。そして、なぜ、消費者のほとんどが、「そうだそうだ」という雰囲気になったのか。それはひとこと、メディアの力です。私はその「消費者が全頭検査しか望んでいない」というニュースをきいたとき、「ちょっと!しっかりして!気持ちは分かるけど、現実をみて!」と思いました。でも実際そのあとに日本に帰ってから、うちの両親と話をしたりして、「おおお、やっぱりみんな全頭検査しかないと思っているんだ」と納得しました。これは、どういうことかというと、つまり、1枚目と2枚目、あるいは3枚目の矢印の絵なのです。

いまそう思って検索してみたら、まさに私が考えていたことを書いていらっしゃるブログを発見したのでリンクしておきます。(夕刊フジBlogより)。私は、全頭検査に意味が無い、と言っているわけじゃなくて、全頭検査は非現実的だ、と思っていたのです。最初に日本の禁輸ニュースとその条件などを聞いたときから、そう思っていました。実際、私は別のウェブサイトに9月16日に以下のように書いています。

牛肉輸入再開要請の声
朝日新聞から、「食肉9団体、米国産牛肉の早期輸入再開を要請」という記事がでてました。30ヶ月以下というのはイギリスで定められた月齢で、私はかなりリーズナブルな月齢だと思うのですが、どうでしょうかねぇ。それより前にも書いたように、検査の方法がもっと確立されるまでは、確実な危険部位の除去の確認に力をいれたほうが良いと思うのですが。

「全頭検査を望む!!」と声高に言っている方は、メディアが1枚目の絵と2枚目の絵をみせて、「本当は3枚目の絵が1枚目と同じ長さですよ」というのを、「そうか!」と思っている状態だと思うんです。ひとひねり入ってますから、ちょっとだけそう思い込んでしまうのです。目の錯覚のことは知っている、でもそれを利用してホントに棒の長さを変えていたなんて、と思うわけです。でもそれを本当に、本当かどうか確かめたい、と思う人は一握りでしょう。そして実際に確かめようとする人はさらに一握りでしょう。

消費者問題はまず最初に消費者の理解(知識)あってこそ、と言われますが、私は、食品安全や栄養の問題に関しては、かなり勉強してきたと自負しているので、「確かめたい」と思っている人に、「確かめる方法」をいくつか挙げられる人になりたいと思っています。BSE問題のように確実な基準(定規)がなくて棒の長さをはかることができないときは、ほかの観点からのさらなる方法を挙げることができるようになりたい。メディアは「話題性」「視聴率」「儲け」などがプライオリティになっています。それは商業だから仕方の無いことなんですね。だから私はメディアを責めるつもりはまったくないんです。でも消費者として、確かめる方法として、「だってテレビの特集でそう言っていたから」というような風潮をなんとか、どうにかならないのかしら、と思うわけです。消費者個人が、「確かめたい」と思ってほしい、そして確かめる術が身近にあるのなら、確かめるべく行動を、と願ってしまうのです。

Leave a Reply

Your email address will not be published. Required fields are marked *