脳と頭の良さ悪さ

前回書いた、「英語上達も遺伝?」の続きのような脳のお話ですが、東京新聞に「知能 情報処理 速さに関係?」という記事があったので、興味深く読みました。知能指数というのが何を計っているのか、というところで「ボール投げでボールを投げる能力が分かるのと同じ」となっていてすごく分かりやすくなるほどと思いましたね。以下、引用しておきました。

脳 ここまでわかった「知能 情報処理 速さに関係?」
知能、つまり脳の知的な働きはどういう仕組みで起きているのだろう。「あの人は頭がいい、悪い」などと言うとき、人は何を感じ取っているのだろう。知能テストはいったい何を測定しているのだろう。そんな問題に迫ってみた。 (永井 理)
「自然科学では知能自体の研究はほとんどない。記憶についての研究ぐらい」と、東大教養学部生命・認知科学科の石浦章一教授は話す。機能的磁気共鳴画像装置(fMRI)など測定機器の進歩で、会話や運動のとき、脳のどの部分が働くかが分かってきた。「ところが掛け算になると、脳のどこを使っているのかはっきり分からない」という。二けたの掛け算では(1)九九を使って各けたごとに掛け合わせる(2)その結果を一文字ずらす(3)それを足し合わせる−などの作業が組み合わされるからだ。
一方で興味深いことも分かってきた。一つの遺伝子が変異するだけで知能の発達が遅れるケースが見つかってきた。現在、変異で精神遅滞を起こす遺伝子が二十ほど分かっているという。「その半分は、細胞に信号を伝えるスイッチをオン・オフさせる機能に関する遺伝子。知能は情報処理の速さに関係している可能性がある」とみる。
理化学研究所・脳科学総合研究センターの山口陽子チームリーダー(計算論的神経科学)は、知能の働きを数学的モデルで表す研究を進めている。脳には、目的を持つ、経験を蓄える、現状を知る、行動する、などの部分があり、ものを考えると各部分が一定リズムで信号を出し協力して働くようになるという。「知能は、脳の各部をどううまくつないで回すか」という。この仕組みを数式で表し、同じ働きの回路を作る研究だ。記憶の仕組みを表すことには成功したという。「考えて問題を解決するロボットも作れると思う」と山口さんは話す。
最近「知能指数(IQ)が分かる」というテレビ番組が話題になった。IQは積み木を数えたり、文字を組み合わせて言葉をつくったりする知能検査で出てくる値だ。知能検査は脳の何を測っていて「頭のよさ」とどう関係があるのか。立命館大学の佐藤達哉助教授(心理学)は「IQは単にパズルのようなものを解く能力と考えればいい。ボール投げでボールを投げる能力が分かるのと同じ」とする。
戦況判断に定評のあるサッカー選手の中田英寿さんは、知能検査の積み木を組み立てる試験で飛び抜けた点数を挙げたと報じられた。米スペースシャトルに二度搭乗し、ロボットアーム操作の名手として評価が高い宇宙飛行士の若田光一さんは、アーム操作に必要な能力について「立体の展開図を見てどんな形か考える問題に近い感じ」と語っている。知能検査で測るような能力が、特別な技術や才能に関係あるのかもしれない。
佐藤さんは「ボールの行方を素早く追う、上司の顔色をうかがう、など場面ごとの“頭の良さ”はある。だが全体的な脳の働きが一つの指標で表されると考えるのは実際的でない」と指摘する。山口さんも「脳の細胞は百兆個あるとされる。脳のある側面を数式で書くことはできても、脳全体を一つの式で表すことは無理」という。脳の複雑さは、想像以上のようだ。

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