BSEなど食品安全に関する法案

朝日新聞で食品安全基本法案可決見通しだということで、ニュースが出てました。
そうなんです。小泉内閣になってからずっと、食品安全の法的な関わりにすっごく力がはいってきています。有識者の会議も数多く、かなり興味深いところ。わたしの修士論文はかなりグローバルフードサプライとその安全性の確保について書いたので私の専門いえば専門分野です。
すべての食品のFarm to Table経路、つまり生産から消費までをトレイスする、というのは、輸入大国日本にとって、あまりにも巨大なプロジェクトだろうし、あまりに大き過ぎて呆然とする、というか、できないかも、と小心になりそうになる、チャレンジングなことです
チャレンジングなことというのはたくさんあります。たとえば「世の中から『武器』と呼ばれるものをなくそう!」と本気でとりくんでいる組織が国連にあります。本気なんです。一般の人は「そんなの無理じゃん」と思っておわりなんですが、そういうチャレンジングなこと、というのは真剣に考えて、真剣にとりくんでこそ結果が出るものだとわたしは信じています。
抗生物質とそれに対抗する微生物やウィルスの終わりなき戦いも、同じ。どんなに強い抗生物質を作っても、世の中の仕組みとしてそれに耐性のある生物ができるのは、地球が丸いのと同じくらい当然のできごと。でも、だからといって抗生物質を作るのをやめますか?
だからチャレンジングなことは、どんなに不可能にみえてもやることに大きな意味があると思うのです。私は私がまなんだ範囲内で、そういったことにも取り組みたいと真剣に、真摯な気持ちで思うのです。
原発に反対したって、原発がなくなったら電気ないじゃん、みんな生活できないじゃん、政府つぶれちゃうじゃん、と以前に私に教えて下さった方がいましたが、それも真実なんでしょうけれど、だからといって原発と電力会社とその癒着政府組織をそのままにすることのつながりを認めてはいけないと思うんです。あら、あたしなんだか熱いかしら。
「不可能だ」と思うのは、簡単、ということですね。あたしは、簡単に、すませたくない。少なくとも私の専門分野では。
以下に記事を引用しておきます。


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食品安全基本法案、修正のうえ可決見通し 衆院内閣委
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 牛海綿状脳症(BSE)の国内発生などへの反省から、内閣府に食品安全委員会を創設することを柱とした食品安全基本法案が、民主党などの要求を一部反映させて修正したうえで、18日の衆院内閣委員会で可決される見通しになった。17日までの与野党協議で固まった。今国会での成立は確実で、政府は同委員会の7月発足に向けて準備を急ぐ。
 審議では、生産から販売までの食品を供給する各段階で対策を講じるとした法案の規定に対し、野党側は、輸入農産物に関して生産までの履歴をたどるトレーサビリティーの仕組みがないなど、安全性確保の方策が不十分と指摘。海外を含め「国内外での食品供給行程」を対象に必要な措置をとる内容に法案を修正することで自民、民主両党などが合意した。
 ただ、政府は「外国での生産活動は規制できないのが現実で、輸入時やそれ以降の措置が中心にならざるをえない」(谷垣食品安全委担当相)としており、検疫所での検査を中心とした対応が大きく変わることはなさそうだ。 (04/18 07:34)
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PostScript
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参考までに。Be Onlienにありました。
どうなる「食品の生産履歴」制度
第三者のチェック必要
※クリックすると拡大します  あなたが口にする食品は、いつどこで作られ、どんな経路で食卓にのぼったのか。食品の履歴をたどる「トレーサビリティー」(メモ(1))の制度化が日本でも進みつつある。政府はBSE(牛海綿状脳症)に対応して、牛肉での制度を先行させる法案を今国会に提出した。その他の食品でもガイドラインを作成中で、3月にも公表する。「食の安全」が揺らぐなか、履歴情報の信頼性を確保するには、第三者によるチェック体制が欠かせない。(森川敬子)
 農林水産省は2月、「牛の個体識別のための情報管理・伝達特別措置法案」(牛肉トレーサビリティー法案)を国会に提出した。すでに国内にいる約450万頭の牛の生産情報をデータベース化してあり、それを生産、流通、消費の各段階で正確に伝え、管理することを義務づける法律だ。と畜の時点のサンプルと、小売店から採るサンプルのDNA鑑定も盛り込み、約11億円の予算も計上してある。
 牛肉のDNA鑑定は、すでに長野、三重などで実施されている。先進地を歩くと、今後の問題点が見えてくる。
 「『番号』や部位が違うパックを三つ選んでください」
 1月末、長野県松本市のスーパーの食肉売り場。県食肉消費対策協議会、県、消費者の3者による月1度の抜き打ちサンプリングがあった。同協議会の小市卓男事務局長が呼びかけると、消費者代表の女性がステーキ用、焼き肉用などを手に取った。
 長野県産の牛肉の多くは、10ケタの個体確認番号が記入された緑色の「安心シール」が張ってある。この番号を自宅のパソコンに打ち込むと、その牛の品種や生年月日、生産者名、と畜年月日などがわかる。県が01年から導入したシステムだ。
 サンプリングでは、複数の店で事前連絡なしに、「安心シール」のついた牛肉を買い、卸売業者が枝肉にした際に採ったサンプルとDNAを照合する。検査費用は1件8400円。県と協議会が年間84万円を負担している。
 検査を始めた昨年は、DNAの不一致が続出した。卸売業者がサンプルを採り違えたり、小売店がシールを張り忘れたり。偽装など悪質な不正はなかったが、トレーサビリティーへの理解が浸透するには時間がかかった。「表示」を信頼して買う消費者にすれば、「単純ミス」と「偽装」に大差はないだけに、「信頼を裏打ちする科学的なDNA検査が重要です」と小市さんらは指摘する。
 ただ、この長野方式だけでは、消費者が知りたいデータのひとつ、「牛が食べた飼料」などはわからない。新法も飼料や衛生情報の記録管理までは義務づけていない。
 スーパー「ジャスコ」を全国展開するイオンなどでは、エサも含めた生産履歴をさかのぼれるしくみを作っている。自治体にも同様の取り組みをしているところはある。だが、第三者による客観的な監査体制を備えているものは、まだ少ない。
■費用は誰が負担するの
 「牛肉」以外の食品でも、食の安全を揺るがす事件=下年表=が相次いでいる。だが、業界ごとに流通事情が大きく違うので、全般をひとつの法律でくくることは難しそうだ。
 農水省は今年度、6品目7課題で、トレーサビリティー導入に向けた実証試験をしている(図表)。消費者の信頼獲得をめざす事業所が任意に取り組む制度で、まもなくガイドラインを公表する。そこには、第三者的な外部チェックを盛り込む方向だ。
 また、牛肉をはじめ野菜やコメなど品目別に、任意参加の新たな認証制度「生産工程履歴JAS」(メモ(2))を創設することも検討している。
 「生産農家の栽培記録はありますか」「ほかのコメと混ざる可能性があるんじゃなですか」
 1月、横浜市保土ケ谷区の米卸売業「千田みずほ」を、食品のトレーサビリィーの認証をする有限会社「リーファース」(本社・東京都江戸川区、水野葉子社長)から派遣された女性監査員が訪れた。業者側から山形県産の減農薬米「権現堂はえぬき」についての認証を依頼されたからだ。
 監査員は生産から袋詰めまでの履歴を、文書と担当者からの聞き取りをもとに調べ、工場の査察もした。トレーサビリティーが確立されていれば、「リーファースマーク」を交付する。これを受けると、業者側は「第三者の目で生産履歴が認証された」と、信頼性をアピールできる。
 第三者認証では監査が甘かったり、企業がうそをついたりする可能性は残る。DNA検査のような科学的精度もない。「それでも、産地や銘柄に対する消費者の不信が相当に根深いので、客観的な保証を信頼回復に役立てたい」(千田法久常務)という。
 問題は、コスト。今回のコメの場合は、監査から認証までで約30万円。コメ余りの現状では、減農薬米など安全性や信頼性が高い商品を差別化する手段に使われそうだ。
 食品のトレーサビリティーを確立するには、記帳やラベルの張り替え、記録の保管といった各段階で経費がかさむ。「安全」と「信頼」のコストを消費者が受け入れるかどうか。業者にとって、コストを製品価格に上乗せするかどうかは悩ましい。
 国がモデルにしているフランスやドイツでは、リンゴ、ジャガイモなどでトレーサビリティーが確立されており、外部からの監査が一般的。消費者には「安全のために金がかかるのは当然」という意識が広く普及しており、コストは最終的に消費者が負担するという。日本でも「食の安全と価格」をめぐって、消費者の意識がいっそう問われる。
(1)トレーサビリティー
 狽窒≠モëi追跡)とability(可能性)を組み合わせた言葉。食卓→農場、農場→食卓のどちらかでも食品の生産、流通、消費の履歴をたどれるシステムのこと。商品に問題が起きた場合、段階ごとに原因を調べられ、回収も速やかにできる。監視体制を備えていれば、偽装や不正防止にも効果がある。
(2)生産工程履歴JAS
 エサや農薬の使用状況などの履歴を明らかにし、それを農水省の登録機関が監査、認証する。たとえば牛肉なら、法的に義務づけられる牛の生年月日などに加え、どんな飼料を食べ、どんな注射を打ったかなどを公開し、第三者のお墨付きを得る。この手法はすでに、01年からJAS法にもとづき、有機農産物・加工品に適用されている。
食の安全・信頼を脅かす事件
00年・雪印乳業製品で1万3000人余の集団食中毒が発生
01年・国内初のBSE発生
  ・全農チキンフーズが輸入鶏肉を国産と偽る
02年・雪印食品、国の買い取り制度で輸入牛肉を国産と偽る
  ・スターゼンが白豚を黒豚と偽る
  ・協和香料化学が無認可添加物を使った香料を製造販売
  ・中国産の冷凍ホウレンソウなどから基準を上回る残留農薬が検出された
  ・日本ハムの検査前牛肉の無断焼却が発覚。偽装工作が明らかに
  ・全国的に果樹や野菜での無登録農薬の使用が発覚
◆ 参考情報 ◆
 政府は今国会に、牛肉トレーサビリティー法案のほか、食品安全委員会の設置を柱とする食品安全基本法案、表示違反の法人への罰則を厳しくする食品衛生法改正案など、食品の安全性を確保するための8法案を提出している。  

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