ビタミンDと骨強度

NY Timesに「母乳で育てている赤ちゃんにはビタミンDを」というような記事が載ってました。とにかく母乳がベストと思っていたんですけど、よーく見るとやっぱり足りなくなるものってあるんですね。こんなのメンドくさいわ〜って母乳で育てる母が減ったりしたら悲しいですけど。
乳児にビタミン剤を与えるっていうのもちょっと考えますよね。特にビタミンDのサプリメントなんて、摂りすぎると毒性があらわれるのが確認されているビタミンだし、大人でも普通の食事ではほぼ間違いなく、過剰摂取なんて起こらないのに、錠剤だったらちょっとだけでもすぐに過剰摂取になりうるのが恐いです。ちなみに、子供の場合は1日に1800 IU以上は過剰摂取ということになっています。


でも私も真っ向からサプリメントに反対しているわけではないのです。ただ、サプリメントは気軽に摂るものじゃない、と思っているだけなんです。特にサプリメントに反対している人は、「ナチュラルでないから」という批判をしていますが、私のポイントはそこではないんです。そもそも、人間「ナチュラル」に生きたら多分寿命は太古の昔の人レベルで、30-40歳くらいですけどね。まぁそれがクオリティオブライフというのならそれも尊重されてもいいかもしれませんが、私はぜひとも70か80くらいまで健康に生きたいし子供ももしできたら元気にそれくらいは生きてほしいし、と思うので「ナチュラル」な生活にあこがれることはきっとないでしょう。
でも自分の乳幼児にサプリメントを精力的に与えるかといわれると、ちょっと違うような気もします。難しいですよね。以下引用です。めちゃめちゃな意訳和訳をつけました。

Vitamin D Is Urged for Breast-Fed Babies
By THE ASSOCIATED PRESS
CHICAGO, April 6 (AP) The American Academy of Pediatrics says that infants who are breast-fed exclusively should receive vitamin D supplements to prevent rickets, a bone-weakening disease that doctors say may be increasing.
アメリカ小児科医アカデミーは、母乳だけで育てられている乳児はビタミンDのサプリメントをとるべきだと言う。最近増えてきているかもしれない(乳児の)骨軟化症(やくる病)を防ぐために。
Breast-fed infants should receive vitamin supplements beginning at 2 months and continuing until they begin daily feedings of least 17 ounces of milk fortified with vitamin D, the academy said in a policy statement to be published on Monday in the journal Pediatrics.
サプリメントは誕生後2ヶ月から与えるべきで、ビタミンD強化された少なくとも17オンスのミルクを毎日与えることができるまで続けるべきだと小児科ジャーナルでポリシーが発表された。
“We really hope that this is a way to optimize the health of breast-fed infants and not in any way to discourage breast-feeding,” said Dr. Nancy F. Krebs, chairwoman of the academy’s nutrition committee.
「我々はこれがベストの方法だと思っている。そして母乳で育てるということを阻む意図は全くない」とアカデミーのチェアマンであるクレブス医師は言う。
The academy recommends multivitamin supplements containing 200 international units of vitamin D. Supplements containing only vitamin D are generally too concentrated to be safe, it says.
アカデミーは200 IUのビタミンDを含んだマルチビタミンを推奨している。ビタミンDだけのサプリメントは一般的に安全のためには濃縮されすぎている、という。
The recommendation also applies to infants who are not breast-fed but who do not drink at least 17 ounces of fortified formula or milk daily, and to children and adolescents who do not drink that much fortified milk or are not exposed regularly to sunlight.
母乳で育てられている乳児だけではなく、ビタミン強化されていない粉ミルクを少なくとも17オンス飲んでいない乳児、そして太陽の光にあまり当たることのない、あるいはビタミン強化されている牛乳を飲んでいない幼児や子供にもこれは推奨される。
Breast milk contains small amounts of vitamin D, and doctors once said babies could get enough if they also spent time in sunlight, which stimulates the body to produce it.
母乳にも少しはビタミンDが入っていて、今まで医師達は、乳児はビタミンDを体内で合成するのに大事な太陽の光の下で十分な時間を過ごせば問題ないと言っていた。
But recommendations that children wear sunscreen and avoid exposure to the sun may mean some are not getting enough vitamin D, Dr. Krebs said.
しかし、今回の発表では日焼け止めを使う子供達はもしかしたら十分にビタミンDを体内で合成できていないかもしれない、とクレブス医師は言っている。

私のプロフェッショナルな意見としては、まずは事実を確認してみましょう、というところから始まります。母乳はお母さんが作るものですね。ですから当たり前ですが、お母さんが摂るものによって母乳の成分も変わってくるわけです。でも、お母さんがどんなにたくさんビタミンDをとっても、母乳にまわっていくビタミンDはそんなに多くはないようです。それが、この記事でも話題になるポイントなんですね。
でも、全くビタミンDをお母さんが摂らなかったら(体内で作らなかったら)、母乳にいくわけもないわけです。ですから、まずは自分から、ですね。青身、赤身の魚や乳製品にたくさん入っていますのでそういうものをよく食べるといいと思います。お魚は煮てあるもののほうが、量はたくさん入っています。もちろん、サプリメントも出回っています。
ですが、ここからが、私の栄養研究者として、とっても悲しい部分なんですが、栄養ってサプリメントをいろいろ摂ったらおしまい、というわけじゃないんです。例えば、ビタミンDはビタミンAやビタミンCやカルシウム、リンなどと一緒によく働くといわれています。そしてサプリメントはドライフォームといわれる、水溶性の形に変えてあることもありますが、ビタミンDはもともとは脂溶性ビタミンですから、油分と一緒に摂ると吸収が良いです。つーまーりー、結局「何でもバランス良く食べる」という、つまらない+当たり前+がっかりないつもの結論に至ってしまうわけです。でも悲しいことに本当に本当なんです。これがベストの結論なんです。
さて、日焼け止めについてですが、私は子供でも日焼け止めを塗るべきだと思っています。私が子供の頃は日焼け止めなんかなくても平気でしたが、昔の紫外線と今の紫外線は違いすぎると思うのです。赤ちゃんはお洋服をちゃんと着せるといいし、いつも影に入れておくといいと思います。ということで、明らかに乳児は「太陽の光」をあびることが少ないですね。
ということで、私だったらお医者さんに質問に行くと思います。「新聞でこんな記事を読んだんですが、どう思いますか?」という感じ。私の推測では、お医者さんは1日50-200 IUくらいだったら問題ないので心配であればサプリメントをあげてもいいよ、というのが多いと思います。でも大事なのは、その決定は自分でするということ。骨軟化症という病気について調べてみて、栄養についても調べてみて、いろいろな専門家に意見を聞いて、自分でまとめた結論を出すということです。私も栄養の専門ですが、やはりみんなそれぞれ違うので、患者さん(相談主、赤ちゃん)を見て、栄養状態を調べて、データなどを見てからでないと「一般的な」答えは出しづらいです。
追記(10/24/2004):メールで感想をいただいたので、読み返してみたらあまりに適当に書いていたので、書き直してみました。

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