本の匂いをかぐ

私は作家の村上龍氏が編集しているメールマガジンを購読しているのですが、というのも、私はあまり村上龍氏の熱狂的ファンではないものの、長崎出身(ちなみに私の大学時代のすごく仲良かったM. A.さんというひとのお母さんは、氏のかなり親しい友達)ということもあり、勝手な親近感があるのと、あと、彼の「分からないことは徹底して学ぼう」という姿勢にかなり共感を覚えると共に、影響されているからなのです。
彼の編集するメールマガジンは”Japan Mail Media (JMM)”と呼ばれるもので、各界の著名人からの寄稿、あるいは村上氏の質問に対するそれら著名人の回答などが骨組みとなっています。基本的にトピックは経済やビジネスが多く、寄稿される方々はだいたいにおいて世界をまたにかけ活躍されている方々。ただ、基本は経済であっても、村上氏の編集のせいか、トピックはいろいろなことにわたり、普通に読み物としてもかなり楽しめるメールマガジンです。これがタダなんて本当にありがたいというところです。更新頻度はなんと週に5回。
ホームページにはいろいろな面白いことが書いてあって(追記:その後バックナンバーは閲覧できなくなっていました)基本的に世界情勢、世界経済などに興味のある方は読んでみるのもいいかと思います。とかいって、もはやサブスクリプションは115261人になっているらしいので、私がここでわざわざ言わなくても読んでらっしゃる方は多いのかもしれませんけどね。
で、今日来たJMMのメールはオランダはハーグに在住の国連で働いている春氏の寄稿。話題はジェームスボンドにまつわるイギリスの社会や時代背景やその他もろもろ。作家の方ではないので、語尾などが統一されていないにもかかわらず、文章がすっごく面白かったです。ホームページではココにしばらくしたらリストされると思います。今回のは第57回目でした。今閲覧可能なのは50回までみたいですけど。
その文章の中に、ちょっと引用しますが、思わず、「ああ、わたしも!」と思うところがありました。

わたくしには旅に出ると必ずその街の本屋さんをのぞく習慣があります。言葉のわからない国に行ってもこの習慣は変わらない。読めない本をぱらぱらめくっても詮無いことと思われるかもしれないが、つまりわたくしは本屋の雰囲気、本の質感というものが好きなのであります。ですから新刊書店だけでなく古本屋さんも好きで、古本を手にとって黄ばんだページの独特の匂いを嗅いでみるのも好きだ。本に鼻を近づけてうっとりするわたくしをみてアナタは変態だと女房はいうが、こういうことをする読書家というのはけっこういるのではないか。

います。私。といっても、古本に愛情はあんまりありませんが。私には本というものは所有するものという気持ちがあります。私はだから、多分、本物の読書家じゃないんですね。図書館の本も読みますが愛情までは感じないし、古本屋さんもそこまでスキではないかもしれません。でも、あのひたすら四角で、同じサイズの紙がまとまっていて、キッチリした感じのする本たちには、表現しようのない良さがあります。ハードカバーなどの装丁などは本当におもわず鼻を近付けたりします。だから私、思わず「そうそう!」とこの文章にたいして思ってしまいました。
この文章は、そのあと、イギリス滞在のときに本屋さんでジェームスボンド本の特集にやたら出会った(ジェームスボンド生誕40年らしいです)ということと、スパイものについて、そのハヤリだった時代のこと、映画のこと、などなどすごく興味深い話に展開します。
そのあと当然のようにヒューマニズムの話になるのですが、そこから「国家」と「個人」の関係の話になります。今まではそんなこと言われても抽象的にしか感じなかったのに、この人が書くとすごくリアルに感じるのは何でなんでしょうね。そしてスノッブの話になって(イギリスにはすっごくいそうですよね)あげくにはルーレットの必勝法(かなり興味深い上に、確率を勉強しているあたしはこれを読んだあとに、セオリーに合わせて確率を計算してしまいました。微妙に勝てますが、資本がかなり必要です)の話になり、そしてヨーロッパに住んでいる人にしか分かり得ない、ホテルや列車の選び方に見受けられるスノビズムの話になり、次につづく、となっています。もうぞくぞくして次が待てない気持ちになりますね。

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