オリエント急行にて

Trip on the Orient Express

前回もちょっと書きましたが、この時期に主人のAさんが来ていたのは、今年は職場のみんなが1ヶ月の夏期休暇をとる8月に働き通しだったので9月の終わりから10月のはじめの1週間と、10月の半ばの1週間と2回に分けて休暇をとることにしたからなんですね。それでAさんと二人でいろいろと計画を練った結果、かの有名なオリエント急行に乗って旅してみようということになりました。写真は車窓の雰囲気。

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アッシジにて

8月の週末に、どこかキレイなところに行こうよという話になって友達とウンブリア州はアッシジという小さな町に行ってきました。
アッシジは実はクリスチャンの数ある聖地のうちのひとつです。なぜなら、かの有名な聖フランシスコ(サンフランシスコ、イタリア名フランチェスコ)の生誕の地だから。私は以前からこの「聖人(セイント、イタリア語ではサンあるいはサント、サンタなどと変化します)」というシステムをよく理解できず、今回も周りの人に聞いたりしてやっとなんとなく分かったのですが、サンフランチェスコは12世紀を生きた人で、そのキリスト教への貢献から没後に「聖人」とされた人なのですね。写真の大聖堂(バジリカ)が彼の遺骨が置いてあるバジリカサンフランチェスコ。写真に写っているドアは実は2階への入り口で、この丘の下に1階部分があり、さらに地下にフランチェスコの遺骨が置かれています。彼の死後である13世紀の建物。
聖堂の壁にはジョットーによるフランチェスコの一生がダイナミックに描かれており、かなりの迫力で思わず感嘆の声をあげてしまう人も少なくありません。でもそれよりなにより私がこのアッシジで忘れられないのは、普通の村の青年だったころのフランチェスコが「声」を聞いたといわれるサンダミアーノ教会。ここはアッシジの旧市街の壁をちょっと出て、オリーブ畑の間の細い小道を歩いた先にある教会です。フランチェスコの生きた12世紀では、これはきっと誰も使っていないボロボロの建物だったのでしょう。私はキリスト教におけるいろいろな「奇跡」はなんとなく眉唾だとうっかり思ってしまうのですが、この「声」のことに関しては、考えれば考えるほど、決して嘘じゃないような気がします。なぜならその「声」は耳で聞くタイプのものじゃないから。それまでの自分の人生や生活や経験やいろいろなものから何か考えることがあり、それが直接胸に響いてくる「声」になることは、確実にあると思う。そうやって何か衝動的なものに突き動かされることは、人生に数回あると思う。
フランチェスコのフォロワー(弟子?)はたくさんいたのですが、そのうちの最初の女性がキアラ(英語名ではクララなので日本ではクララとして知られていると思います)という人で、彼女はフランチェスコからこのサンダミアーノ教会を託されて、ここをサンダミアーノ女子修道院として貧しくも心豊かな人生を生きたと言われています。彼女も没後「聖人」と認められ、彼女の名を冠した教会(キエーザ)、サンタキアラ教会がアッシジの旧市街の中心地に建てられました。ほんのりピンク色のかわいらしい教会で、地下にはキアラの遺骨や遺品などが奉られています。
フランチェスコもキアラもどちらも共に、質素でシンプルで、ともすれば「貧しい」ともされる生き方で身も心もキリスト教に捧げたと言われる人々なので、ふたつのサンフランチェスコ聖堂とサンタキアラ教会の大きさや美しい装飾を見ると、かすかな違和感を感じる人は多いと思います。そんなときにサンダミアーノの小さなドアをくぐって貧しくも整頓されたお部屋を見たり、にっこりと笑って訪問者を迎えてくれる聖フランチェスコ会の会士、修道士の青年たち(腰に清貧、純潔、従順を意味する3つの結び目のついた帯紐をつけているのですぐ分かります)に挨拶していると、本当にいろいろなことを考えさせられます。
小さくもたくさんのキリスト教巡礼者や観光客で賑わうキレイなアッシジの旧市街のカフェでおいしいお菓子を食べていろいろなことを考えて、充実の夏の一日となりました。ローマから車で2時間ほどのドライブでした。

La Parrina

parrina.jpg土曜日の朝に、最近お友達になった生粋のローマンなRとカフェでも、と誘ってもらってMontiの噴水のある広場のバールのひとつ(La Bottega del Caffe’)で待ち合わせして焼きたてコルネット(イタリア風クロワッサン)とカプチーノにスプリムータ(しぼりたてオレンジジュース)をいただいてきました。しばらくおしゃべりして通り行く人々を眺めているとあっという間にお昼近くになってきて、さらにお天気もこれ以上完璧な「初夏」はないねということになったので突然ビーチに行こうよということになりました。
というのも、私は近場のビーチだとオスティア、ちょっと遠くへとなるとサンタマリネッラなんかに行くし、この前はサンタセヴェラにいったばっかりなのでそんな話をしていたら、オスティアとサンタセヴェラの間にもうひとついいところがあるというので急に興味を持ったのです。是非そこに連れて行ってよという私に快諾してくれたRと一緒に車を走らせ30分。車の中で私がもうすぐ主人のAさんに会えるということと、もうすぐ私の母がローマに来るということを話していて、そこで私が、特別イタリアな食材をそろえておいたら、料理上手の母がいろいろ作ってくれるかもしれないので今、プロシュートやチーズなんかをそろえているところ、とふと言ったら「ここからすぐトスカーナだけど、1時間半くらいのところにオリーブやチーズやハムやワインなんかの昔ながらの工場が残っている町があるよ」とRが教えてくれて、さらに興奮した私はそのまま車を走らせてそこへ向かうことにしちゃいました。突然誘拐したみたいになっちゃって、R、ごめんね。ここは読んでないと思うけど。
そしてたどり着いた小さな町がLa Parrina。今はまだ5月なのでひとけもまばらですが、どうやら夏には大人気のアグリツーリズモな場所らしく、トスカーナなゲストルームやレストラン、プールなどもかわいらしく配置されていました。私たちはとりあえずその工場の中のショップへ。焼きたてのパンや大量のオリーブオイル、何十種類もあるチーズやハム、フレッシュなミルクやヨーグルト、野菜に果物、ワイン、バルサミコ酢、グラッパやジャムなど、本当に目移りするようなローカルの商品がひとつひとつ丁寧にLa Parrinaのラベルを付けられて並んでいました。
チーズはテイスティングさせてもらいながらしっかり選んで、しっかりした色のきれいなオリーブオイルも、チーズに合うというワイン酢も買って、最後に1キロ3ユーロのチェリーも買って大きな箱を抱えながら満足して帰ってきました。帰りに近くのラグーナにある港、Porto San Stefanoにも寄って海辺のベンチで思い思いに時間をすごす人々にならってしばらくじーっと透き通った海の水を眺めていたら、日頃のローマの喧噪や仕事の細々したことなんかがスーっと溶けていくような気がしました。

パルミジャーノレッジャーノバーガー

3892944363_da61b95e05_o.jpg週末を利用して、イタリア人の友達のCと彼女のボーイフレンドでアルゼンチン人のCが住む北イタリアのパルマに行ってきました。パルマは小さな街ですが、日本人には意外に有名ですよね。パルマハム(プロシュート・ディ・パルマ)やパルメザンチーズ(パルミジャーノ・レッジャーノ)などの名前のおかげでしょうか。イタリアでもParma, Mangiare bene(食の都のような意味です、直訳は美食に近いですね。でもイタリアはどの街も「食の都」主張があるような気もしますが)なんていわれている街で、これら登録商標のパルマ名物はパルマでしか生産を許されていないのです。イタリア中で見かけるパルミジャーノ・レッジャーノですがその全てはここから発送されているわけです。で、当然世界のフランチャイズ王のマクドナルドが目を付けないわけなく、こうしてイタリアのハンバーガーメニュー、しかも巨大サイズの280grバーガーにパルミジャーノ・レッジャーノヴァージョンがお目見えしました。残念ながらパルマの街にマクドナルドはないんですけどね。ですからパルマから帰ってきてからローマテルミニ駅のマクドナルドでパルマの余韻を楽しむために購入しました。マクドナルドのご当地ものってなんとなく買っちゃうんですけど、マーケティング上手ですよね。パルミジャーノ・レッジャーノは塩味がぐっとくるチーズなので普通のバンではなくフォカッチャ(イタリアのピッツァの生地ですね)を使っているこのバーガーにはとても合っていたと思います。シーズンメニューかもしれませんが、近々イタリアにいらっしゃる予定のある方で、パスタやピザに飽きた方は是非どうぞ。

ラバーネッカー

9月に両親がイタリアを訪問してくれた時にヴェネツィア滞在のあとユーロスターを途中下車してフィレンツェにも寄りました。到着の翌日の午前中は生憎の雨だったのですが、たまたまその日の予定を「美術館デイ」にしていたため逆にラッキーで、朝から3時間ほどゆっくりウッフィツィ美術館を楽しんだあと、このサンジョバンニ洗礼堂を訪れました。八角形をしたこの美しい洗礼堂は、ドゥオモとお揃いの色合いになっていて(とはいえ洗礼堂のほうが古い建物のようです)内側よりも、外側の扉、とくにドゥオモの方面の東の扉のほうが有名で、ミケランジェロをして「天国の門」と言わしめたほどだそうです。
が、今回は中に入ってみたいと思い、両親もついてきてくれたので、雨だったこともあって10人ほどしか並んでいない列に並んで1分ほどで中に入りました。薄暗い洗礼堂の中に入ってみてびっくり、外側のイメージから八角形の幾何学美を想像していた私を気持ちよく裏切ってくれたのは豪華な金色の天井画!写真のように当然イエスキリストがメインですが、よくよく絵を見てみると、いわゆる「宗教画」のテーマがいくつも細かく描かれています。アダムとイヴから始まり、3人の賢者、受胎告知、マリアとエリザベッタ、キリスト誕生、などなど知っている限りのテーマが、それも美しく並べられているのです。そして、こうして一生懸命長い間親子3人で天井を眺めて(こういうのをRubberNeckerなんて言いますね)8枚の輝く美しいトライアングルのパネルを見ているときにふと、私が日本の無邪気な大学生だったときに「キリスト教学」の講義で、キリスト教では「8」という数字が非常に重要だということを教えていただいたことを思い出しました。

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