パッシーをバゲットと歩く

さて、ジュネーブの会議を後にして、今はパリに来ています。今週は会議のはしごなのです。今回はパリの主要エリアではなく、OECDのあるパッシーというエリアに宿をとったのですが、会議初日で疲れたのでデリで何か買ってホテルの部屋でサッカーでも見ながら食べようとおもったんですね。それで帰り道のパン屋さんで写真のバゲットを切ってもらって、お野菜やチキンなどをはさんでもらってから、それを片手にRue de Passyを歩く気分の何と特別なこと!ある種の誇らしさまで感じてしまうので不思議です。「私、Rue de Passyをバゲット片手に歩いてる!」みたいな感じでしょうか。ってそんなことで興奮するなんて非常にくだらないんですけどね。すごい自分好きなナルシストみたいでちょっとイヤですね。でも私に表現力がないだけで、この気持ちをなんと伝えて良いか分からない。意味なくバゲットをぶんぶん振りながらホテルまで帰りました。
あと、ふと思いついて小さなファーマシーに寄って、小さなシャンプーとコンディショナーのセットを買いました。ホテルにもそれなりのものがついているのですが、どちらかというとアロマ系のもので、いまいちさっぱり感が感じられないものだったのでファーマシーだと何かかわいいものがあると思ったんですね。それで果たして信じられないほどカワイイ小さなフラワープリントのボトルのセットがあったのでした。本当にすっごくフレンチ(私のイメージの)。これですっきりして明日も会議行ってきます。

パリへ買い付けに。

もう先週末のことですが、実業家の友人のAがフランスはパリのジュエリーのエキシビジョンに買い付けに行くというので私も便乗してパリの空気を吸っちゃおうということになりました。いろいろなところにいって買い物したりおいしいもの食べたり、と楽しいことだらけだったんですが、やっぱり私にとって大事なのは「ローマから抜け出す」ことだったんじゃないかと思います。すべての都市にいいところ悪いところ両方ありますが、最近ちょっとローマの悪いところばっかりに運悪く当たっていてどうしてもスッキリしなかったので。
写真はパリは1920年代の世界の芸術家が集ったというモンパルナスにあるラ・ロトンド。天井には良くこのカフェに来ていた芸術家達のサインがデザインされていますが、パブロピカソ、アンリマティス、マルクシャガール、アメデオモディリアーニ、ジョアンミロ、サルバトールダリ、と芸術に詳しくない私でも分かってしまう名前ばかりでびっくりでした。このカフェは夜にはちゃんとしたレストランになって、とても美味しいお魚料理が出ます。すっかり観光地になっているとはいえ、お値段もパリの中心地よりはマシで私たちも美味しい庶民的な赤ワインとチーズたっぷりのフレンチオニオンスープ、たくさんのオリーブに美味しいバゲット、とすっかりフランスらしい夜を過ごしたのでした。美味しいワインがあると話もどんどんはずむので不思議ですね。寒かったけれどパリはやっぱりローマよりもちょっとだけツンとしたお洒落な感じがあって素敵でした。

ヴェルサイユの奇跡

出張先で週末を迎えることはかなり珍しいことなのですが、先日のフランスの出張では月曜日に2つのミーティングを抱えていたため、週末を過ごすことになり、金曜日にホテルに帰ってからふと、ヴェルサイユに行ってみよう、と思い立ちました。
実はヴェルサイユは11月からオフシーズンになるためいろいろと安くなるという情報を手に入れていたのですが、天気予報を聞いてみると10月31日の土曜日は晴れ時々曇り、11月1日の日曜日は雨ということで、うーんと悩んだ末、雨のヴェルサイユは嫌だ、と思い土曜日に行く事に決定。しかもそれからさらに調べてみると、ヴェルサイユは毎日大人気でかなり並ぶのを覚悟しなければならないということが判明しました。でもさらに調べてみると、今年からはオフィシャルサイトでオンラインチケットが買えるということも判明、即座に購入し、ホテルでプリントアウトもしてもらっちゃいました。
パリからヴェルサイユまでは電車で30分、歩く時間などを考えれば9時のオープンの1時間前に出ればOKかなと思っていたのに、おのぼりさんな私はかなり早朝に目覚めてしまい、7時40分にはそわそわして外に出てしまいました。泊まっていたところの最寄り駅はシャトレで、そこからセーヌ川を超えるとサンミシェルの駅からPERのC5線の電車が出ています。案内板にヴェルサイユと書いてあるのに従って歩いて行くとすぐにプラットホームがあり、窓口でヴェルサイユまで、とお願いすると人差し指を上下させながら何だか素敵なことを早口で言われました。素敵というのは内容ではなくフランス語の聞こえが、という意味ですけどね。それにしても私のなんちゃってフランス語はチュニジア人のディレクターとフランス人の上司で慣れているはずなのに「ん?」と一瞬なりましたが、この人差し指の上下で「往復ですか?」と聞かれていることが瞬時に判明したのでボディランゲージってすごいなぁと単純に思いました。ボディじゃなくてジェスチャー程度ですけど。
そこで往復券を購入(といっても片道2ユーロ半くらいでしたけど)して電車を待つ事5分。すぐにヴェルサイユ行きの電車がやってきました。このとき気づかなかったんですが、ヴェルサイユ行きの電車って30分に1本しかないみたいです。早めにアパルトマンを出て本当に良かった、と思いました。
ほぼ誰も乗ってない電車だったので微妙に不安に思いつつ33分の電車の旅。終点で降りるとやっと降りてくる数名の観光客の姿を見てちょっと安心しました。そしてヴェルサイユまで徒歩5分。到着してみると門からかなり遠いエントランスに約10人程度の列ができているのを確認して、「行列なんて全然ないし」とちょっと不満に思いながらそこに並んだところ、みるみる行列はのびていきました。もっとすごかったのがチケット売り場。あとで聞いてみたら10時にならんだ人がチケットを手に入れたのが11時半、そこからエントランスに並んで宮殿に入れたのが12時半だったそうです。ああ早起きして本当に良かった。ラッキーなことに全くといって良いほど待ちませんでした。9時にオープンして9時5分にはオーディオガイド(これを借りるのすら並ばなくてすみました)を首からさげてツアーをスタート。赤い部屋黄色い部屋ピンクの部屋白い部屋薄いブルーの部屋、そして彼の有名な鏡の間、と楽しんでしまいました。
ところでタイトルの何が奇跡だったかというと、なんと、この一番上の写真の芝生のところで写真を撮ろうと思ってぱっと下を向いた瞬間、なんと、左目のコンタクトレンズを落としてしまったのです。心の中で妙に冷静な私が「あーりーえーなーいー」と呻いていましたが、そこで即座にしゃがみこみ、微動だにせずに、見えている右目だけで15分じーっと芝のひとつひとつを見つめました。そして15分後、キラリとするものが落ち葉の上に見えて、それに手を伸ばすと果たして私の大事な左目のコンタクトレンズだったというわけです。今までの経験から言って、こんな広大なところでコンタクトレンズを落として、それを自力でみつけるなんてほぼ奇跡なのでこれはヴェルサイユの奇跡に違いない、と勝手に決めつけることにしたのでした。ちなみに写真の遠くにあるのが宮殿。私は十字の形になっている運河の先にたってこれを撮影しています。紅葉も完璧で、ためいきがでるほど素敵なところでした。
宮殿も素敵ですが、なんといってもやっぱりヴェルサイユは外です。マリーアントワネットが愛したプチトリアノンのフェイクな田舎の家たちなんて本当にかわいらしくて、ひとつひとつ丁寧に見て回りました。庭園も、噴水も、王の菜園も、も、バラ園も、マリーの愛した愛の神殿も、何もかもが素敵なヴェルサイユ。ひとりだったのに丸一日を過ごしてしまいました。しかも、それでも時間が足りなかったのでまたパリに行くようなことがあれば、是非また訪れたいです。

バカラのクリスマスツリー

パリで仕事が終わってから、いつも気になっていたLa Maison de Baccaratに寄ってみることにしました。ヨーロッパではいろいろな場面でみかけるバカラのシャンデリアですが、どこで見てもやっぱりクリスタルの輝きが尋常でないためすぐにバカラと分かります。このLa Maison de Baccaratはブティック、美術館とレストランまでがあってとてもわくわくするところです。レストランには入りませんでしたが、今度主人のAさんと来るようなことがあれば是非行きたい特別な雰囲気のところ。「クリスタル・ルーム」という名前のところです。東京や大阪にもお店を出しているみたいですね。
私はブティックでひたすら吟味して、このパリ出張を記念するため、この写真の小さな(15センチの高さ)クリスマスツリーを自分に買うことにしました。これから毎年この季節から年末までの時期をこの小さなクリスタルを出してお祝いしようと思ったのです。敷居が高そうに思えたお店でしたがとても親切なマダムがいろいろと教えてくれて、しかも英語が完璧の人だったので楽しくお買い物ができました。いろいろと光の加減を変えるとキラキラといろいろな方向に光の反射ができる素敵なクリスマスツリーです。一番上にちょこんと乗っている金色の飾りもすごく素敵。私の初バカラ、お気に入りになりそうです。

アンジェリーナのモンブラン

せっかくパリ滞在だし、しかもにぎやかなレ・アル地区にいるし(最近上司になったフランス人のJMが予約してくれたアパルトマン)ということで、仕事が終わってからチュイルリー公園の目の前にあるアンジェリーナというカフェというかレストラン(正確にはサロン・ド・テ、つまりティーサロン)に行ってきました。といっても日本のみなさんにはおなじみですね。東京にもいくつか支店があります。私のアンジェリーナ初体験は実は名古屋。名古屋に住んでいる友達が先日連れていってくれました。
到着してみると遠くからでもすぐそこがアンジェリーナであることが良くわかりました。というのも結構な行列ができていたから。私はひとりだし、もともと中にはいる予定はなかったので「お持ち帰りができるといいな」という気分だったのですが、ふとみると行列のできている隣のドアにはブティックの文字が。お持ち帰り用のドアがあったのですね。そこで嬉々としてこのモンブランをひとつ注文して大事にアパルトマンまで持ち帰ったのです。見えづらいですが後ろにうつっている小さな箱がお一人様用のお持ち帰り箱。かわいいお店の女の子が、モンブランが崩れないようにていねいにていねいに入れてくれたし、当然のようにスプーンもつけてくれたし紙ナプキンも3枚もくれたしで、「メルシー!」と受け取りながら非常に嬉しいきもちになりました。
ところで全く関係ありませんが、今回このパリ出張の待ち時間などを利用して話題の村上春樹氏の「1Q84」のBook 1と2の両方を読んだのですが、ちょっとどこで見たか忘れてしまったので正確なクォートができなくて申し訳ないのですが、途中で「作家というのは問題解決するのが役目ではなくて問題提起(というよりは、話の流れでは単純に問題を「並べて見せる」といった意味合いだった気がするけど)するのがその本当の役目である」というようなくだりがあって、読み終わったあと、まさにそのとおりの役目だなと深く納得しました。細かいディテイルはいろいろあるにせよ、これだけ多くのバラエティに富んだ読者層のひとりひとりの琴線をターゲットにするためなのか、異常に多くの伏線にちょっと混乱しましたが、それなりに、なんというかいろいろと刺激していただいて嬉しかった、というのが正直な感想でしょうか。いや正直言って面白かったです。私は村上春樹さんの作品が好きというわけでも嫌いというわけでもないのですが、とにかく読んでよかったです。