旧正月も終わり、カルネヴァーレも終わって、去年と同じく私はパリに出張にやってきました。残念ながらここのところずっと雨です。今回は週末も合わせての出張なので長いし、冬の洋服はかさばるし、ということでホテルでランドリーをお願いするしかないんですが、細かいランドリーがこんなかわいい袋に入っていて、中もひとつひとつのガーメントが袋にきちんと入っていてなんとなくパリ!という感じがして嬉しかったので写真をとってみました。少なくともイタリアでランドリーがこんな袋に入ってくることはない、と思います。この袋、中は蛍光のグリーン(端の色)であざやかでした。あまりに可愛くて捨てれないけどどうしようもないですね。こうやって写真を見ると安っぽい椅子もなんとなく可愛く見えるし、私は実はちょっとオーガニックな色とパターンのカーペットが苦手かも、と思ったんですがこうして見るとそんなに気持悪くはないですね。パリのプチホテル実際本当に悪くないです。そういえば出発前に「私のフライト夜の11時に到着だからホテルには真夜中過ぎに到着するからお知らせしておきますね。到着するころにちゃんとフロントの人はいますか?」とメールしてみたら「ピンポンをおしてくれればすぐ出て行きますので大丈夫です。夜中のフライト大変ですね。でもゆっくり眠れば朝には美しいパリが待っていますよ。Sergioより」という素敵な返信がきたんですよね。それだけで気持がすっと軽くなってありがたいなーと思いました。英語もフランス語も流暢なSergio、ありがとう!
今回の会議の議長さんのアメリカ人女性とは私はもう8年にわたる知り合いなんですが、出張前にメールがきて「週末どうするー?」と言われたので「一緒にどこかにいこう!」となっていたんですね。で、彼女の同僚も一緒に3人で今日はオーランジュリー美術館に行ってきました。実は私3回目です。でもいつ行っても新しい発見があってすごく好きです。今回は地下のギャラリーがずいぶんキレイになっていてまたまた楽しめました。1回のシグニチャールーム(2部屋)のモネももちろん圧巻ですが、地下のポールギョームのコレクションの充実度にかなり「圧倒」されます。今Overwhelmedって日本語でなんだろうと思って調べたら圧倒されるとか参るとか出て来たんですけど微妙に言いたい感じと違うんですけどまあ仕方ないですね。圧倒されつつ、頭の中や心の中があまりの情報量にごちゃごちゃしてきてパンクしそうになる、という感じでしょうか。あれ、それがつまり圧倒されるってこと?
印象派は日本人にとても人気だというのは実はフランス人にとっても常識のようで、面白いなと思います。モネもいいしセザンヌもいいんですが、やっぱり女の子という意味でローランサンのパステル調の絵はこう、心がつかまれるというよりは目が離せなくなりますね。女性?馬?犬?みたいなメタモーフィスも目が離せなくなる原因だろうけれどやっぱりあの色合いがぎゃーともがきたくなるほどなにかをくすぐります。私はもともとない語彙がさらに海外生活のせいで(今思い切りさりげなく自分の知性のなさと衰えのせいじゃないことにしました)どんどんなくなってきているので、なんでもすぐ「かわいい」と言ってしまうんですが、上のランドリー袋を「かわいい」と思った同じレベルでピンクとグレイのローランサンの絵を「かわいい」と思ってしまうんですよね。それはそれでどうなんだろうと自分で思わないこともないんですが、芸術って結局なんなんでしょうね。「好き」という気持ちだけじゃだめなんでしょうか。
あとはやっぱりルノワールですね。少女も女性もオレンジとピンクがかったような上気した頬がつるりとしていてうっとりします。ユトリロのパリを愛する感じも好きです。オーランジュリーの建物自体もいいです。じっくり2時間半楽しんだあと、3人でアンジェリーナのサロン・ド・テでランチしてきました。上に書いたSergioは特に親切にしてくれるフロントマンなんですが、彼が昨日、「明日土曜日だね、予定はどうなってるの?」と聞いてきてくれたので「友達と3人でオーランジュリーにいってアンジェリーナでランチでも、と思ってるんだよね」と言ったら、「そうなんだ、たのしんでね!」とにっこりしてくれただけで嬉しかったんですね。それが、今日、起きて朝食の前にフロントに寄ったらSergioではないフロントの人が「これSergioからだよ」とお手紙を渡してくれたものに、なんと今日のプランがすべて書いてあったのでした。工事中のメトロの駅を避けた交通手段もプリントアウトしてあったし、なんとランチのテーブルまで予約してくれていて、びっくり。Sergioは気を利かせて昼の1時で予約してくれたんですが、12:30に到着した私たちをアンジェリーナの皆さんも、嫌な顔する事なく長ーい行列をするするとパスしてすぐに席に通してくれて、一緒にいた二人に「マサミ!あなたみたいに完璧になんでもやる人を見た事ない!FAOで働いている事にまたすっごく納得した!」と言われちゃいました。えっへん。でも私じゃなくてSergioがすごいんですけどね。
明日は多分ひとり行動になりそうです。というのも出発前にあわててパリのオペラ座のスケジュールを確認したら、私の大好きなイタリアオペラのアルチーナを日曜にやっていることを発見したのでチケットを手配したら一人ならいい席があるということだったので一人で行くことにしたのでした。アルチーナを見るのは実は3回目なんですが、ここのサイトに書いた事なかったですね。今度時間があったらどういうところが好きなのか自分で分析しながら書いてみたいところです。ところで今回FAOから指定されているホテルはパリのかなり北のほうにあるのですが、会議にはすっごく遠くて毎朝微妙に凹みますが、オペラ座(ガルニエ)が遠くないのを逆手に取って週末でこの凹み気分を挽回しようと思います。乗り換えなしで数駅なので本当にラクラクです。じっくりオペラを楽しむ明日のために今日は夜は出歩かずにホテルでゆったりと過ごそうと思います。
オルセー美術館ガイド(1日中過ごす編)
最近パリにかぶれているみたいになっている私ですが、このあたりで私の好きなオルセー美術館についてまとめておきたいという気持ちが高まって来て押さえられなくなったので今日書く事にしました。別にパリにいるわけではありません。今はすっかりローマに帰って来て家でのんびり週末を過ごしています。今までこのサイトをちょこちょこ見てくださっている方はお気づきかもしれませんが、私はオルセー美術館、もしくはオルセー美術館展覧会というものに何度も足を運んでいます。なぜ何度も行くのか。自分でも分かりません。うっかり入館無料の日にオルセーの目の前までいって入場制限にかかって入れなかったことすらあります。何が私をこんなに惹き付けるのか。私は美術品に特に詳しい訳でも芸術が大好きなわけでもありません。たぶん、自分なりに分析すると、オルセーの位置、全体的な雰囲気、いろいろな館内設備、そこはかとなくかもしだされるゆるい感覚、私、今オルセーにいる!という実感、などなどが総じて好きなんだと思います。崇高な物が全然なくて本当にすみません。
Continue reading “オルセー美術館ガイド(1日中過ごす編)”やっと春。
私にとってのパリへの出張は、だいたいにおいてパリに本部があるOECD(Organisation for Economic Co-operation and Development) という機関で行われる会議に出席するのが理由なんですが、そのOECD、フランス語だとちょっと単語の順序が入れ替わってO.C.D.E (Organisation de coopération et de développement économiques) となり、フランスでは普通にOCDEと呼ばれています。写真はメトロの最寄り駅であるLa Muetteから徒歩でOECDへ向かう途中にある案内標識なんですが、曇り空の下とはいえ、やっとのことでかすかに春らしい色になっていたので写真を撮ってみました。
春のパリなんていうと美しいイメージですが、今年はなぜか肌寒いわ細かい雨が降るわでちょっと残念な1週間でした。その間どうやらローマでもお天気には恵まれなかったようです。仕事でイヤなことがあったりするときにはお天気だけでも良ければわりとどうでもよくなるのに、お天気が悪いとついくよくよしてしまいますよね。
でも会議の最終日である金曜日にはほんの数十分だけでしたが青空が広がって、会議場から出てから、久しぶりに浴びた日光のおかげと、会議が終わった開放感との両方でいきなり気分が上がりました。この写真はそのときに撮ったもの。実は一番上の写真のほんの真向かいにあります。日差しの中で一斉に開いていてなんだか感動しました。植物ってしゃべらないし、こうして一生懸命咲いているように見える花なんて特に健気な感じがしますよね。不思議です。
さてもうローマに帰って来ているわたしですが、昨日の夜は友達のCとアペリティヴォをするだけのつもりが、おしゃべりが盛り上がってしまい、そのままレストランに食事に行くことになってとうとう夜中の12時までふたりで盛り上がってしまいました。明日からは久しぶりに自分のオフィスで仕事なのでちょっと嬉しいです。また気分を入れ替えてヨーロッパのやっと来た春を楽しもうと思います。
プラティヌホテル
仕事でパリにきています。といっても実はパリに到着したのは今週の日曜日で、会議は今日終わってしまいました。明日の早朝にローマに帰る予定です。今回は私が所属する機関の都合で、泊まったことのないホテルを指定されたんですが、それがなかなかよかったのでご紹介です。メトロの駅はシャルル・ミシェルで、スターバックスやマクドナルドの近代的なショップがたちならぶ何となくアメリカンな場所です。名前はプラティヌホテル。
ホテルの目の前には今年中にオープンするといわれているショッピングモールが建設中で、工事中の道も多く、それでホテルが異常に安かったのかもしれませんが、マリリンモンローとハリウッドがテーマの素敵なホテルでびっくりしました。サービスも至れり尽くせりで、地下には宿泊客には無料のターキッシュバスがあって超快適。オムニセンのスパもあったので火曜日にしっかり1時間半マッサージしていただきました。気持ちよかった。
フランスのコーヒーに飽きてからはスタバにも通いました。世界中のスタバでは、商品を受け取る時のために名前を聞かれることが多いと思うんですが、日本人の名前を言ってもわかってもらえないことが多いですよね。いつもは勝手に自分にそれらしい名前ををつけ、たとえば真佐美なので英語のときはサミーとかそういう聞こえなくもない名前を言うのに、フランス語だとなんだろう?と思いつくことができなくて、本名を言ったら、3日ほどマリー(Marie)で通されました。真佐美って全然マリーに聞こえないのに!びっくりです。MAしか合っていない。
今回のパリ出張では仕事ばっかりで全然観光なんてできませんでしたが、久しぶりにアメリカ人の古い友人と一緒にランチしたり、ブラジル人の仕事仲間と食事に出かけたりできて良かったです。今度は個人的にパリに来ようと思いました。
パリ・リュー・ドゥ・バックの教会にて。
先日パリに行ったときに、友達から勧められて、昔は修道院だったというChapelle Notre-Dame de la Médaille Miraculeuseという教会に行ってきました。直訳すると奇跡のメダルのノートルダム教会、といった感じの名前でしょうか。教えられたまま地下鉄のセヴール・バビロヌ駅で降りて、コンランショップやボンマルシェを見ながらてくてくリュー・ドゥ・バックまで歩くと、ここかな?というような入り口があって急になんだか荘厳な静けさがただよっています。教会の入り口まで続く細い道の壁には、この教会のいわれや有名な奇跡のメダルのお話が絵で描かれていたりして、フランス語がわからない私にもふーん、という感じです。最後のつきあたりの壁にはしっかり英語でも説明があったので、私はそこでこの教会と奇跡のメダルについての全てをやっと知ることができたのでした。詳しくはWikiやこちらのサイトでどうぞ。写真はつい興味を持って買ってしまったカタリナ・ラブレのお話の青いブックレットと、右奥にあるのがお土産のメダイユです。
まぁキリスト教にはありがちなお話といえばそうなんですが、私がいつも思うのは、どんな宗教でも、神様がいてもいなくても、信じていても信じていなくても、静かな場所で自分と向き合うと不思議に方向性が見えてくる事があるなぁということです。私は明日香村の大仏さまの前でも、このメダイユ教会のカタリナ・ラブレが見たマリアさまの前でも、ふと神妙な気持ちになっていろいろなことをしっかり考えたり、私には感謝すべき人が、自分が思っているよりもずっとたくさんいることに改めて気づいたりしました。だから、つまりはそういうことなんだと思っています。カタリナさんも私も、自分と向き合って、カタリナさんの場合はマリアさまが話しかけますが、私の場合は私自身が私に話しかけます。
しばらく観光客そのもので呆然とキレイなマリアさまを見ていたら、この教会にいた修道女の人が小声の英語で「ちょっと失礼、あなたには奇跡は必要ではないでしょう?」と私に話しかけました。唐突だったのでびっくりしながらも、確かに必要ないなと思って頷いたら(正確には否定疑問文だったので首を横にふったんですが)、「ほら、あなたって幸せでしょう?」とにっこりしました。私もそのあたりに幸せ感を振りまいていた意識はないんですが、そういわれてみると、私って心底幸せかもしれない、と思ってその日一日がほんわかと良い一日になりました。そして後で思ったんですが、そんないろんな人が集まる教会で、中には本当に奇跡が必要な人、どうしても何かに助けを求めなければいけない状況の人というのがいるのですよね。そしてそう思った後すぐに、それは「そういう人がいる」ということではなく、私でも誰でも「そういう時がある」ということなんだと理解しました。今の私にとっては「お土産」にしかすぎない、ここで1ユーロ程度で打っている「奇跡のメダイユ」には、そういう「時」に何かの意味がついてくることになるのでしょう。まだよくわからないけれど、そういうふうに思いました。
このメダイユは転売すると価値がなくなるということですが、人にあげるのはとてもいいことだそうです。私も大事な人の数をしっかり数えて買いました。本当に幸せな事に、その大事な人々の中で奇跡が今必要な人はいませんが、私があげるこの小さなメダイユを見てちょっぴりほんわかしてもらえれば、と思っています。