Kashmir

20060208_kashmir.jpgKashmir (Humra Quraishi)
まず最初にお断りしておきますが、そんなに大騒ぎするほど良い本というわけではないです。よっぽどKashmirに興味がない限りつまらないといっても過言ではないかも。ローマに来るときの飛行機の中で読み終わりました。冒頭がショッキングなので引き込まれはしますが、同じようなエピソードが延々と続くといえばそういう感じ。確かに一国の絶望とはこういうことかも、と思わせられます。Kashmirについて一番分かりやすいかなと思ったのが第一章の次のパラグラフ(8ページ)。

Caught between the Indian security forces and terrorists trained and funded by Pakistan, a humiliated and terrorized people are in no mood to give in – not to India, not to Pakistan, not even to US mediation, of which they are deeply suspicious. A retired government official living in Shopian said to me, ‘Kashmir is like a ping-pong game between India and Pakistan, with the US playing the referee.’

私があまりに影響されたふうだったので私の友達や家族は知っていると思いますが、私はバンコク滞在中にたくさんのKashmiriに会いました。その中でもかなり仲の良い友達になったのが、Sarfrazという友達で、よくいろいろと話をしたんですが、彼はいつもどこかで何かを達観しているような雰囲気を出すことがありました。みんなで食事に行ったりして楽しい時間を過ごしていても、ふと冷めた目で穏やかに笑っていたり、熱心に議論している友達の輪からすーっと遠ざかったり。一度気になったので聞いてみたことがあるんですが、仲良しの友達だと思っていたのに、”You’re from Japan, a rich country, so you never know nor understand.”とあっさり言われました。その時の何とも言えない悲しみが、なんとかして理解したいという気持ちをかきたてるのです。そして理解をしようとすればするほど遠ざかって行く国、私はこの本を読んでKashmirはそういう国(本当は「地域」と言うべきでしょうけれど敢えて国ということにします)だと感じてしまいました。本当はもっともっと何らかの形で理解を深めようとすべきなんでしょうけれど、問題の根が深すぎて古すぎて、知れば知るほど途方に暮れてしまうのです。
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Coastliners

20060115_coastliners.jpgCoastliners (Joanne Harris)
Joanne Harrisの本を好きになってから割と読みあさりましたが、彼女の文章はなんといっても描写力がすごくて、今回も、見た事もないはずのフランスの小島の海辺の情景がくっきりと脳裏に浮かぶような、美しいお話でした。日本語で「ブラックベリー・ワイン」を読んだ時に、英語で読みたかった、と思ったんですが、やっぱり原文で読んだ方がより伝わるものってありますね。簡単な英語だしおすすめです。どんな描写か、というと、例えば17ページ。
Take this beach, for example. It’s a remakable thing. One island, a single beach; a happy accident of tides and currents; one hundred thousand tonnes of ancient sand, stubborn as rock, gilded by a thousand envious glances into something more precious than gold dust. …中略… An altered current, drifting a hundred metres to the left or the right. A degree shift in the prevailing wind. Movement in the geography of the sea bed. A bad storm. Any one of these things at any time could bring about a cataclysmic reversal. Luck is like a pendulum, swinging slowly across the decades, bringing the inevitable in its shadow. Les Salants still waits patiently, expectantly, for its return.
読んでいる内に、寄せては返す波を見ながらほんわか揺れているような良い気分になってきたところで、そこで太字部分のメタファーがきてハッとさせられるのです。「幸運というのは振子時計の振り子のようなもの。長い時間の中をゆっくりと左右に揺れているだけなのに、着実に、暗闇の中にもくっきりとした何かを浮かび上がらせるのです。」こんな私のダメダメ訳だと一層ダメですが、やっぱり英語のほうがウンウンと頷けますよね。良いお話でした。家族っていろいろあるからこそ「ホーム」になるものなんだな、と思います。
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How to Be Good

20051007_howtobegood.jpgHow to Be Good (Nick Hornby)
前にもちょこちょここの本を読んでいたときにこちらこちらにも書いていたんですが、日本に帰ってくる飛行機の中で読み終えたのでとりあえず自分のためにメモしておこうかと思いました。タイトルの異常な真面目さに反して、とても軽い調子で始まるお話で、そんなに「よい人のなり方」というような感じではないんですね。割と笑えるし面白いし。そしていろいろと不満や納得いかないもやもやは残るものの、結局私は、今この時期にこの年齢でこのタイミングでこの本を読んでよかったなと思いました。私の転職先のことを考えるとなおさらです。最後の部分が、私がなんとなく考えていた結論だったので、今までは漠然と「結局こうなんじゃないかな」と思っていたことが、この著名な作家も結局同じような結論に至っているんだ、と思うと、なんというか、同じ考え方の仲間(?)がまだいそうだ、と思えて、自信のなかった自分なりの結論を「これでも良いはず」と思えてよかったです。下のほうに細かい感想続きます。
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衝動買い

いやぁ、今日はたいそうなものを衝動買いしました。iMac G5です。先日、父が母から譲り受けたかわいいiMac G3ストロベリーがご臨終なさったと聞き、あれあれと思っていたんですが、母によるとどうやらその後の父の落ち込みようがはげしかったということで(私は見ていないけれど)、朝から何となく、お父さん用のコンピュータでも見に行こうよ、と、母とふたりで大型家電ショップへ出かけたんです。母が言うには、前に行ったときに見かけたMac miniが「現物限り」セールをしていて、お得だったらしいので、モニターもキーボードもマウスもうちにはいっぱいあることだし、Mac miniを買ってあげようよ、ということになっていたんですが、いろいろと商品を手に取ってよーく見ているうちに、CPUもハードディスクも機能もなにもかも、やっぱりiMacのほうが良いような気がして、気づいたら母とふたりでiMacを買ってました。接続もうちはワイヤレス設定しているので、らくらく。昔のコンテンツを移すのにちょっと時間はかかりましたが、なんとか父の環境を構築し、今は父が喜んでいろいろと自分らしく設定しているところ(だと思います)。新しいマックはどのマックでも嬉しいものですねぇ。たとえ父のものになるにしても。G5速いし。そして私はすることないのでコンピュータ設定くらいやらせていただきますよ、もう本当に。
20051005_tokyot.jpgところで昨日本を何冊か購入したんですが、何かの書評で見てやたら評価が高くて、「ウソでしょう〜」と思いつつシャレで、リリー・フランキーさんの「東京タワー」を買ったんですが、昨日の夜、最初の4/5くらいは普通に、へぇ、半生記ってわけだな、人に歴史ありだな、とふんふんと軽く読んでいたし、正直「これであんなに高い書評もらえるもんなんだ〜、へぇ、やっぱり有名人だからかな、絵も上手だしね」なんて思っていたしで、本当にシャレの範囲を出なかったんですが、最後の1/5、もうびっくりです。私、吐くかと思うほど泣きました。本当に。今日、コンピュータを買いに出かけた時に母の運転する車の助手席にふと座ってなんてことない話(母が昨日見たという夢の話、しかも夢の中で夢の話をする、という夢の話)をしていたときに強烈に「思い出し泣き」が襲ってきて本当に困りました。個人的に懐かしい築豊(ちくほう、福岡の北の方)の方言がいっぱい出てくるのもあったのかもしれませんが、これはもう、リリー・フランキーさんに、かなりやられました。大敗です。

Ash Wednesday

20050906_ashwednesday.jpgAsh Wednesday (Ethan Hawke)
Ethan Hawke、と読んで「え、あのイーサンホーク?」と思った方がいらしたら、その通りです。私の本屋さん(サヤームディスカバリーセンターにあるAsia Booksという洋書を扱っている本屋さん)でのリアクションもそのままでした。え、と思ってまた数歩歩いてもう一度、え、と思って2回立ち止まってしまいました。あの人ほどアホそうに見える役者さんもなかなかいないですよねぇ。いつもワーストドレッサー賞(ダサい賞)をもらったりしてるし、それを指摘されると15歳の少年のようにふてくされて、「だってスタイリストからもらった服を着てるだけだし」と怒ったりしてて笑えるし。で、え?本?いつ本なんか書くわけ!と思ってつい手に取って数ページ読んで引き込まれました。結局ファンなのか。というより、この人才能ありますよ。多分。最初のページにNovaの説明に”This is a kick-ass car.”なんて、今時小学生でも書かないような文章があったので、うわーやっぱり、と思ったんですが、よく読んでみるとそれってどうやら演出みたいでした。そういうようなことを言う男の人が主人公、ということ。どうやらこの本は処女作ではなくて2作目みたいですよ。しかも処女作結構評価高いみたいですよ。ゴーストライターでもないみたいですよ。そしてこの頃はウマサーマン(ユマサーマンと日本では言われるかも)とも仲良かったみたいですよ。日本で訳書が出てないなんてびっくりです。感想は下に続きます。
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追記(2005年10月7日):邦訳が出ていないなんて思いっきりウソでした。日本の本屋さんに山積みになっていました。邦題は「 いま、この瞬間も愛してる」だそうです。すごい邦題だな。

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