Alta Velocita’

こんなショボい写真を撮ってしまって、密かにテツな主人のAさん(彼は「テツじゃないよ」と否定しますが、秘境駅や電車を見るとかすかに興奮するので隠れテツだと思われます)が、「ちゃんともっと近くから撮ってよ」と言いそうですが、出張でパルマ市に電車で行ってきました。電車といえばイタリア国内の旅行に便利なユーロスター。イタリアではみんな「エウロスター」と呼びます。最後に小さな(ル)がついた感じの発音。そしてこの赤い車体がAV(アルタ・ベロチタ、語尾上がり、ハイスピードという意味)と呼ばれる新車両(ってほど新しくもないですけど)で、これを見かけるとAさんはかすかどころではなくかなり興奮します。これ、乗ってて体感できるほどの高速で走ります。最高速度は300km/hといっているので新幹線と同じくらいかもしれませんが、イタリアンな方々が運転しているせいか、新幹線よりももっと速く感じます。突発的な揺れもあって、乗っていて振り落とされそうな気がするときすらあります。もちろん気のせいですが、それだけスピードを感じるということ。

今回出張ということもあって、セクレタリーのかわいいFちゃん(イギリス人)にチケット手配を全部お願いしていたら、なんとファーストクラスで取ってくれていて、強烈に快適シートで飲み物食べ物サービス付きの豪華(おおげさ)旅行となりました。パルマまでローマから4時間。パルマハムのパルマです。パルメザンチーズ(パルミッジャーノレッジャーノ)のパルマです。イタリアでも特に食べ物がおいしいと言われるパルマ。2日間の出張で、会議の連続だったんですが、おいしいチーズとおいしいプロシュート(生ハム)とパスタとワインと、すっかりパルマを満喫しました。帰りに駅の近くのフォルマッジェリアでさらに熟成チーズとプロシュートとポルチーニ&オリーブなどを買い込んで帰ってきました。

会議は久しぶりに面白い内容のもので良かったです。パルマには欧州食品安全機関があるので、その関係で参加したのでした。さまざまな地域協力機関の中でもヨーロッパは食品安全の部門ではかなり進んでいるので、国際機関としても学ぶべきものがたくさんあります。しっかりとりこんでこれからの私の仕事の参考にもしよう。

バイオセイフティ関連のプロジェクト本

i1033e.jpgBUILDING BIOSAFETY CAPACITIES: FAO’S experience and outlook (2009)
An overview of the experience gained from FAO capacity building projects in agricultural biotechnology and biosafety
先週メキシコでたくさんの本を配りましたが、そのうちのひとつの本がこちら。3人の同僚と一緒に書いた本ですが、バイオセイフティ関連のこれまでのFAOでのプロジェクトをまとめました。
第一著者のアレッサンドラはUNEP(国連環境計画)に長い事いた人で、この本の監修にもあたっているアンドレア(男性)の下でこの本をせっせとまとめてくれました。私は第3著者として、私の部署がやっている部分を書いただけなんですけど、この本のおかげでいろいろな国からさらにリクエストを受けるようになって、かなりありがたいです。全文オフィシャルサイトに載っていますのでプロジェクト関係者は是非どうぞ。この仕事に関係の無い方にはかなり面白くない内容となっております。

アルプスを超えてメキシコへ?

今、メキシコはグアダラハラという所に来ています。土曜日の朝6時半に家を出て、ローマフィウミチーノ空港からアムステルダムへ飛び、午後のメキシコシティ行きの便にて11時間半、そこからさらに乗り継いでグアダラハラ空港までやってきたというわけです。これから1週間大きなカンファレンスがあり、私はこの間、3つのイベントを行うことにしているのでかなりバタバタです。結局昨日は部屋にチェックインしてやっと落ち着けたのは夜中の12時をすぎてからだったし、時差もあるので日曜日の今日はぼんやりしたかったんですけれど、さっそく午後から準備があります。
こういった出張はこの仕事を始めた最初のころは本当に苦痛で、特にこの日記を見れば分かりますが頻繁に1ヶ月に3カ国を訪れたりしていたこともあったりして、正直「こんな毎日は本気で嫌だなぁ」と贅沢にも思っていたのですが、最近は1ヶ月に1回のペースになってきて楽しめるようになりました。今回は初めてのメキシコ(そうなんです、アメリカに住んでいた頃何度もメキシコ旅行の話は出たのに行ったことがなかったんです)ということでちょっと嬉しいです。
ただ、いつも思うのが、出張の前は金曜日に遅くまで仕事して出張の準備をするので家に帰るとだいたいかなり遅い時間だったりするんですね。そして土曜日の朝から空の移動、到着して数時間寝たらすぐに日曜日、その間に現地のカウンターパートに会って準備をして、翌日の月曜から会議、金曜日に終わってすぐに空港に移動、時差のせいでローマ到着は日曜日の夜、数時間寝たら月曜日から普通に出勤、となるのではっきりいって2週末が完全につぶれて3週間休みなしのぶっ続けになるのが、うーん、という感じです。一応ルールではこういう場合休みが取れることになっているらしいのですが、私の場合は1週間出張したあとのんきに休んでる場合ではないくらい仕事がたまっている事が多いので、その後のことを考えると休む気になれないんですよね。みんなこういうのは文句も言わずにさりげなくこなしているので尊敬します。私も見習おう。でもライフワークバランスもちゃんと考えなきゃ。
もうひとついつもKLMでアフリカなどに行くときに感じる微妙な違和感が「南に行くのに一旦北に向かわなければいけない」ということ。これはハブ空港であるアムステルダムに行くからなので仕方がないのですが、まぁせっかく北に行くので2時間の飛行中は窓側にスタンバイしてイタリアの国境あたりから広がるこのアルプスをひたすら眺めるのを楽しみにしています。多分ドイツとの国境あたりを通るのでそこまで高いピークは見えませんがお天気が良いと、左後方のフランス国境あたりにモンブランがうっすら見えたりして感動です。飛行機から写真を撮ることはめったにないのでいつも心のフォトグラフですが今回はパチリとやってみました。今年は雪が多くてウィンタースポーツを愛する人には嬉しい年でしたね。

ピンク色の本ができた

i0110e00.jpg仕事の話で恐縮ですが、2006年にこの仕事を始めてからすぐにとりかかったプロジェクトのひとつに、遺伝子組み換え食品の安全評価に関するものがあったのですが、去年の暮れにCD-ROM付きの本をようやく出すことができたのでご報告です。フランス語版スペイン語版も出すことができました。
一度に3カ国語のとても専門的な本を出すというのは実は非常に大きな野望であったと後で気づきましたが、たくさんの良い経験(失敗も含めて)をしたので書き留めておきたくなりました。まず最初にカナダの専門家の方にアウトラインを渡して最初の文章を書いていただき、一単語一単語リビューした後、それをFAO内部のいろいろな専門家にリビューしていただき、テクニカルエディターに文章をきちんとしてもらい、今度は途上国の政府の関連部署で働く人々を集めてツールのパイロットテストをしていただき、その結果を集めてかなり大幅に書き直しをして、またエディターにまわして、内部コメントをもらって、今度は世界各国のピアリビューワーにまわして、さらに大幅に書き直して、エディターにまわして、翻訳にまわして、翻訳で問題がでたところを(英語が特殊すぎて翻訳できない部分が多々あった)をかみくだいた英語に変更して、さらに翻訳し、最終的に出来上がったものをDTPデザイナーに渡して、デザインの段階で間違いを指摘されたものを変更して、出来上がったPDFをもとに他の教育ツールと一緒にCD-ROMを作って、CD-ROMを3カ国語対応にして、CD-ROMのラベルもデザインしてもらって、スパイラルリングでまとめる形にして、プリントする紙質を選んで、お金を工面して、と、かなり気が遠くなるプロセスでした。
でもデザイナーと一緒にデザインエレメントや色を選んだりできたのはかなり楽しかったです。見ていただけるとわかりますが、麦の穂のデザイン(FAOのロゴにもなっています)がDNAのαヘリックスになっていっているデザインで、みなさんに褒められるのでかなり得意げです。私がデザインしたわけじゃないのに。そして色が、ウェブ上だとかなりパープルですが、実際の本は白いスパイラルリングのせいか、かなりショッキングピンクに近い色になっていて、みんなに「あのピンクの本」と呼ばれています。ディレクターには「20年くらいFAOにいるけれどピンクの本をつくったのは君が初めてだと思うよ」とにっこりされてしまいました。てへ。ピンクの本かわいいじゃん。
とはいえかなり内容はまじめで、途上国にとっては遺伝子組み換え食品への興味はかなりのものがあるので(いろいろな意味で)毎日どこからかリクエストをいただいているので作ってよかったなぁと心の底から思います。これでFAOに来て私が直接イニシアティブをとって作った本(ISBN付きで発行されたもの)は9冊になりますが、今のところ一番時間がかかったものなので感慨深いのでした。実はもうすぐ記念すべき10冊目が出ますが、それもデザインが気に入っているのでわくわくしているところ。出たらまたここで嬉しげに紹介しますね。

ジャグジーから見える亜熱帯ガーデン

快適なタイ航空の旅を終えてバンコクにやってきました。最後にこの街に来たのはもう2年も前。昔研究をしていたカセサート大学のすぐ近くのこの大きなホテルにチェックインすると、マスターバスルームがシャワーとジャグジーに分かれていて、ジャグジーからはお庭が見えるというかなり癒される設定で、自分でもびっくりするくらいほっとしました。というわけで、いつもは窓から見える景色を載せるんですが、今回はちょっと変形でバスルームから微妙に見える窓の外を。
時期的にはロイクラトンが終わったころでしょうか、わりと落ち着いた町の様子でした。ホテルがバンコクの中心部からかなり北の方にあるからという単純な理由かもしれません。気候も暑くもなく寒くもなくという完璧な気候。湿度は相変わらず高いんですけれどね。
さて会議は明日からということでさっきまで私のレクチャーの最終稿を調整していました。今回はClimate Changeつまり気候変動が及ぼす食品安全のリスクについてお話します。全体像(マクロ)をつかむのは難しいトピックですが、マイクロで見てみると「気候変動が」というよりは「気温の恒常的な上昇が」ある特定の食品安全トピックに及ぼす影響は確実なものがあるのです。それにFAOはどのように対応していくのか、どんなストラテジーがあるのか、といったところです。これは個人的にも、現在かなり深く関わっているプロジェクト的にもとても重要なトピックであるため気合いが入ります。
夜はバンコクに住んでいた頃の友人や共同研究をしていた教授達と会ってお食事してきます。時差ボケが結構響いているような気がしないでもないですが、今日中になんとか克服してしまおうと思っています。