ブリティッシュ・ユーモアとストーンヘンジ

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わざわざ極寒の2月に行くこともないだろうに、とスコットランドの友人に言われつつもイギリスに週末に一人で旅行に行った時のことを書き留めておきます。写真でわかるようにストーンヘンジにどうしても行きたかったのです。寒そうに真ん中に後ろ姿で立っているのが私。この時は帰る時間だったのですが最後にどうしても心残りで、このストーンヘンジのガイドツアーで知り合ったアメリカ人の女の子Sに撮ってもらいました。本来はストーンヘンジはこんなに近づけないのですが、このツアーは開園時間前に入ることができて、こうして石の間にも入ることができるものです。せっかくここまで行くならそういうツアーが絶対いいと思うので興味がある方はぜひ探してみてください。色々なツアー会社があると思いますが私はEnglish HeritageのサイトからStone Circle Experienceというのを選びました。

こちらの動画が、早朝にこちらです、と特別に開けてくれたロープから入ったところの動画です。ツアーには20-30名いらっしゃいましたが思った以上に大きい遺跡で全然人がたくさんというイメージはありませんでした。このパークも開園すらしていないので本当にバスでロンドンから来たこのツアーのお客さんだけの貸切で、すごく貴重な感じがしました。

サークル内に入って、Sと一緒に静かに話しながらガイドさんの話を聞いたりしていたんですが、その時に小声でおしゃべりしているのに急に自分の声が大きく返ってくることがあったんですね。Sも同じだったみたいでその瞬間二人で目を見合わせてびっくりしてしまいました。巨石が向かい合わせに立ったりしているので音が共鳴するのか、それともちょうどいい感じでコンサートホールのような残響効果があるようになっているのか、すごく心地いい感覚でした。

こういう時いつも思うんですが、昔の人にはこういう、現代ではちょっとした科学で説明できそうなことが、ものすごく不思議に感じたでしょうね。ここには何かスピリチュアルなものがいる!という気分にすらなったかもしれません。太陽が昇ってきたりするのも不思議だっただろうし、突然嵐が来たり皆既日食になったりすると、私たち何か悪いことでもしたのかしら!と大反省するようなことになったかもしれません。

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バスの中ではガイドさんが色々と説明してくださるので、結構一瞬でストーンヘンジ博士になることができます。こういった子供用の絵本での模型も見せてくれて到着する前に感覚でどういうふうなものだったかを学ぶこともできます。でも何が一番印象に残ったかというと、こういうふうに書くととってもふざけているみたいですが、そのガイドさんの男性(70歳くらい)のモノローグにたくさん散りばめられるジョークの数々。私が慣れている日本やアメリカンやイタリアンなジョークとは全然違う、思い出し笑いとしても思わず吹き出してしまう完全なブリティッシュユーモアです。調べてみると、いわゆるブラックジョークとかダークユーモアとか言われるブリティッシュなジョークは反体制であることが多く、風刺や皮肉がチラリと含まれるようなことを真顔で言う、と言うようなもの、と言うカテゴリーになっているようですね。

今思い出しても面白かった一つは、早朝にバスに乗った直後にポリスの車がバスの前を静かにサイレンを鳴らさずに走っていたんですね。それに対してガイドさんは「おっと、警察ですね、でも1台だけみたいですね。ということはチャールズ用ではなく、まあ王子達の一人のため、ということで」と言うわけです。この時王様は病院から帰ってきたばかりだったのでイギリス国民はそれなりに心配していたので彼の話になったのはわかります。現にバッキンガムの旗が上がっていたのでちょうど国王陛下が戻ってきた翌日だったんですね。ですからこのジョークは国王を心配しつつ、つまりヘンリー王子をがっつり皮肉っているわけです。「王子達」とぼやかしてはいますが、明らかにウィリアム王子のわけありませんから(まあ実際はどちらの王子でもないんですけど)。そこで眠い目を擦ってバスに乗ってきた皆さんが吹き出しちゃいました。あまりにも不適切すぎることを真顔で普通に言われると笑っちゃいます。

もう一つはイギリスのゴーストの話をしていた時に、割とお化けを信じる人はたくさんいる、という話になって、土地にまつわる昔からいるゴーストの話をします、ということになりました。そこで「ちょっとこの話は気味の悪い(クリーピー)な話ではあるんだけど」という前置きをして、「ゴーストといえばサセックス州だけれど、サセックスにはカミラ妃が、」と言った後、急に数秒間黙って、「いや、話はまだクリーピーな部分には入ってないからね」と言って真顔で話の続きを言おうとしたんですねそこでツアーの皆さんが我慢できずに「ぶふふふ」と笑い始めてしまって私も思わず声を出して吹き出してしまうくらい面白かったです。カミラ王妃はサセックス州で育ったみたいですね。

もう一つ覚えているのが、ツアーも終わりに近づいてロンドンに入った時に、デモが起こっているという情報が入って、元々解散する予定だった場所まで行けなくなってしまったので、ロンドン中心地からはちょっと離れた郊外のハマースミスの駅前で解散することになったんですね。そこでここの近くには有名なパブがあるよ、という地元情報をいくつかお話ししてくださって、皆さんの中で今からパイント(ビール)を楽しみたい、という人がいれば有名なパブまで私が連れて行きます、と言って教えてくれたのがかの有名なThe Doveで「このあたりには(アーネスト)ヘミングウェイやヴァージニア(ウルフ)がよく来たと言われていて、テムズ川の目の前でとても良いところで、私にとってはここでのビールは逆に健康になるためのものです」と紹介した後「あれ、ごめんなさい、そういえばヘミングウェイもウルフも自殺したんだっけ」と真顔で言っていて本当に不適切すぎて笑いを堪えるのに必死になりました。

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いやあそれにしてもかっこいいストーンヘンジでした。思えばこの旅行から帰ってきてから急に色々とやる気に満ちた気分になったので、実はスピリチュアルなことを信じない私もスピリチュアルにリチャージできたのかもしれません。お天気はイマイチでしたが雨までは降らなかったのでよかった。ずっと行きたいと思っていたところだったので私のバケットリストの一項目にチェックがついて満足です。

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