さてローマに到着してもうすぐ10日というところです。通常は特に何も考えずに日本を去るんですが、今回はもしかしたら1年くらいは日本に戻ってくるのが面倒になってしまうかも、ということで夫のAさんが、心残りがないようにし、と言ってくれて、ローマに発つ前に、温泉にいくことにしました。行き先は「緊急事態宣言が解けた時の北関東の人だけ」というプロモーションに釣られて、鬼怒川に宿泊。特に観光もせずに旅館で2泊3日ゆったりしました。上の写真は鬼怒川温泉駅に仁王立ちしている鬼の鬼怒太(きぬた)。下に写真を載せておきますが、実はこの鬼シリーズの銅像は鬼怒川にいくつかあって、そのうちの一つは女の子で、名前を鬼怒子(きぬこ)というそうです。なかなか魅力的な女の子で、筋肉質なところが今、流行っているらしい漫画の「僕とロボコ」のロボコを彷彿とさせるお姿でした。
そして嬉しくなった私が、きぬた、きぬこ、と連呼していたら、脳の変なところの記憶が突然活性化され、「砧きぬ子」ちゃんを思い出してしまいました。井上靖先生の「晩夏」です。中学生くらいの時に読んだかと思うのですが(いや、小学生だったかも)、全体的に抒情的に漁村の田舎の少年の、都会から来た女の子への初恋を描いてあるだけなのですが、今考えても全体的に大変、なんと言ったらいいかちょっと上手な表現が思いつきませんが、甘美というとちょっと綺麗すぎますね。なんというか、ちょっと小声でハッキリ言うと、やけにエロい。真っ白い服を着たきぬ子、確か砧って苗字だったはず。そして砧家の両親は、なんで砧って苗字なのにきぬ子という名前をつけるのか。私は全身で読書をするタイプの少女だったんですが、晩夏を読んだあと、最後のシーンの雷雨に打たれて寒い!と思いながらその短編から目を上げたような気がします。私は普通に部屋の中で読んでいたので別に雨に打たれてませんでしたが。それだけ井上先生のエロの余韻をたっぷり残しつつの物語の切り上げ方が斬新だったということでしょう。
なんだか鬼怒川と全く関係ない話になってしまいましたが、温泉は信じられないほど気持ちが良かったです。お部屋に露天風呂があるところを選んでなるべくソーシャルディスタンスをはかっていましたが、早朝の大浴場の内湯と露天を独り占めできた時は本当に嬉しかった。またこのパンデミックが終わったら日本に帰って、温泉をもっとちゃんと、心の底から楽しみたいと思いました。イタリアにも温泉あるんですけど、流石にパンデミックで全部しまっているみたいです。まあ確かにシェアしたくないナンバーワンかもしれません。ステイホームもう少しがんばります。