語彙のなさを痛感するアンコール遺跡

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Full album is available at Cambodia Oct/Nov 2017 | Flickr

先日夫の両親と南イタリアに行った思い出を書きましたが、今回も同じで、私がタイに赴任した後に東南アジアに遊びにきていただいて一緒にアンコールワットに行ったのでその時のことを書いておこうと思います。日本からは直行便が今のところないと思うので、直行便がたくさん出ているバンコクからシェムリアップ空港まで行くのはとてもおすすめです。大体は後ろから乗るタイプの小さな飛行機を使った格安航空系になると思うんですが、私たちはBangkok Airで飛びました。

宿は奮発してプームバイタンというところにプール付きのヴィラを借りてのんびりできるようにしたんですが、それが非常に人工的に作られているとはいえ、田舎のカンボジアらしさが詰め込まれていてとてもよかったです。お迎えも、ツアーも、何もかも至れり尽くせりでした。リゾートは赤い土で覆われていて、小さいのですが水田もあって、水牛なんかもいたりして、なんとなくですがマリーアントワネットのプチトリアノンを思い起こさせられます。ですから引きこもりの目的には最高なのではないでしょうか。

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リゾート内は基本的には徒歩ですが自転車も貸してくれるのでAさんと私はスイスイとそれで探索して回りました。特にこれと言って特別なものがあるわけでもないのですが、読書室やカクテルバー、素敵なレストランにプールサイドのカフェテラスなども揃っているので本物のカンボジアを見ることなく過ごしてしまいそうになる危険もあります。スパもあります。

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到着してすぐウェルカムドリンクをいただき、目の前に広がるプライベートプールと人工的なカンボジアの田園風景にぼんやりすること数時間。

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ドリンクはレモングラス主体のグリーンスムージーのような植物性のドリンクで、テーブルにあるのは南国のフルーツ各種とそして小さな地元のお菓子。このお菓子、4種類くらいあったのですが、全部がっつりココナツ系のお菓子だったんですね。それでカンボジアに行く前にバンコクのどこかのレストランかカフェで義母が「ココナッツはそんなに得意じゃない」と言っていたのでちょっと心配に思ってあとで聞いてみたら「あれ、美味しかったわー」と完食だったらしいのでAさんと二人でふふふっとなりました。Aさんは大阪出身で、当然ながら両親とも全ての言動に関西の味付けがついているので、九州出身の私には全てが夫婦漫才のように見えてしまうのです。とはいえ、Aさんも含めて3人ともそんなに大阪の言葉が激しいわけでもなく(吹田に住んでいるのもあるかも知れません)、どちらかというと両親は特に上品な雰囲気があるんですが、やっぱり会話には全てにオチがあっていつも堪えきれずに吹き出してしまいます。

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そして遺跡という遺跡を片っ端からみてまわるわけです。様々なものがあります。上の写真は橋の両脇に並んでツナを引く皆様。この綱引きには善悪の2つのグループがあるらしいので表情は必見です。そして多分これはいい人グループ(悪い人グループの阿修羅はこちら)。なんて、乳海撹拌のことをこんなに雑に、しかも誤って説明してしまって(綱引きじゃないしね)すみません。詳しく本当のことを知りたい方はぜひGoogle先生に「乳海撹拌とは」と聞いてみてください。調べれば調べるほど善悪の境界が分からなくなります。

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上の写真はガイドさんのショカル(Sokal)さん。Aさんの両親のために日本語のガイドさんを雇ったのですが、なんと彼、カンボジアを出たことがない、日本にも行ったことのない日本語ガイドさんです。流暢とは決してお世辞にもいえませんが、普通に日本語で会話ができるので本当に心の底から尊敬します。素晴らしいです。でも多分、彼の中にパターンがあるようで、色々と今思い出しても楽しくなってしまうようなことをたくさん教えてくれたので書いておきたいと思います。

まず、彼は「さあ次にいきましょう」という時に、「ヤ!」と言って行く方角に手を差し伸べます。「ヤ!」は多分ですけどカンボジア語ではないので、日本語の「じゃあ」を間違えて覚えてしまっているんだと思われます。でも別に「ヤ!」という掛け声でも、日本人でも何人であっても、手を次の方向に指す感じで何が言いたいかは分かるか分からないかでいえば完璧に分かるので、なんとなくそのままになっていると思われます。彼が「ヤ!」と大きな声で言ってくれるたびに心が温まり顔が自然に緩んでしまうので本当に楽しかったです。しかも結構な頻度で言ってくれるので観光中、何度も何度も笑顔になってしまいました。ヤ!

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そしてこれはアンコール・トム(バイヨン)の壁画の一部ですが、この説明の時など「この人たちチャンパの人たちね、東南アジアにいない顔ですね」とまず説明があります。ふむふむ、と私たち4人は壁画を覗き込みます。するとショカルさんは「なぜ!」と急に叫ぶのです。驚いた私たちが振り返ると、ニコニコしたショカルさんが絶妙な間の後、「それは、チャンパは全部死にました。もうチャンパいません」と結論を言ってくれるわけです。

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ショカルさんのガイドではこの「なぜ!」方式の説明パターンが多く、こういう風に劇的に「なぜ!」を挟んでくれることもあれば、一連の流れとして「これはガルーダ像(プリアカンにあります)ね、横にナーガ(多頭の蛇神)がいるね、なぜ、それはガルーダが退治する約束だから」とスルスルと説明をしながら小さな「なぜ」を入れることもありました。多分彼の中で “This is A. Why? Because it is B”のような説明パターンができていたからだと思われます。でもよくよく考えるとそういうふうに説明をしたりされたりすることって大事だと思います。日本語のように「BだからAなのです」という説明だと、Aのパンチが弱まる気がする。大事なことがAであるときは先にAを言ったほうがいいに違いない、と聴けば聴くほど納得する「なぜ」でした。でも大声の「なぜ!」にはいつもちょっとだけビクっとしてしまったけれど。

結局最終的にはアンコールトムのバイヨン、バプーオン、象のテラス、タプローム、スラスラン、バンテアイクデイ、クロヴァン寺、プノンバケン、アンコールワット、プリアカン、ニャックポアン、東メボン、タソム、などなどを訪れたわけですが、とにかく色々すごいわけです。何がすごいって建築物としての凄さ(方角など)のことから始まって、造られた背景、年月をかけて宗教が変わっていく状況、造形と崩壊の歴史、数えられない数の彫像、そして何方向からも迫ってきて夢にまで出てくる回廊の石彫の壁画という壁画。姉に「『すごい』以外の言葉でこういうすごいことを表す言葉ってある?」と聞いてみると姉がニヤリと笑って「そうねえ、『すごすぎる』とか?」とからかわれるくらい、アンコール遺跡のことを話そうとする私は語彙のなさを痛感させられるのでした。

それにしても、このツアーはホテルの人が私たち用にしっかりと考えてくれたもので、少しの移動にもエアコンが効きまくったバンを出してくれるのでそんなに若くはない私たち4人にもとても快適でした。車に戻ってくるたびに、キンキンに冷えたお水を手渡してくれるのも脱水予防にとても嬉しかったのですが、それより何より、その度に手渡してくれるフレッシュなレモングラスの香りのする冷たいタオル!何十枚もクーラーボックスに用意してくださっていて、何枚も贅沢に使えて本当に癒されたし助かりました。こう言った心遣いってこういうところで、まさに心に響きますね。よかったです。ショカルさんも本当に良かった。ありがとうございます。

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最終日になって、何かショッピングもしたいね、ということになったので部屋に置いてあったリュクスなガイドブックを見ると、6番目にフェアトレードショッピングはどうですか、ということが書いてありました。ふむふむと読むと結構いい感じだと思ったので、2番目にオススメしてあるSamatoaというところを試してみようよということになり、行ってきました。

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シェムリアップには公共交通機関はないので基本的に移動はこう言った荷台付きバイクのハイヤーとなります。シートベルトはないし、まあまあ危ないと思われますが、市内の真ん中ではない限り交通量もそんなにないし、長閑な田舎の風景が広がって、風も感じられて気持ちが良いのでちょっとの距離であればオススメです。

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道端には「カドヤ」さんと言ったら昭和っぽいのかもしれませんがそんな雰囲気のある雑貨屋さんがポツポツとあります。テーブルのココナツも、多分買ったらそこでバシっとナタで切ってくれてストローを差し込んでくれるのでしょう。下の写真のような感じでしょうか。

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到着した民家のようなお店には素敵なシルクやハスの糸の商品がひっそりと並んでいました。基本的にはテイラーさんなので生地を選んで寸法を測ってオーダーメイドにすることが多いようです。私はスカーフのようなものが欲しかったのと、ハスの糸の商品というものを見たことも使ったこともなかったので興味津々だったのでそれを見せてもらうことにしました。

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フレッシュなハスの花の茎をぽきっと折ると、このようにネバっとした繊維状のものが出てきます。これを、糸にして織るんだそうです!すべてが手作業で、昔ながらの織り機を使って織っていくためものすごくたくさんの時間がかかるし、こんな今にも切れそうな、たおやかな素材で丁寧に作っていくのに技術も必要だし、ということで蓮糸の商品はかなり高額でしたが、そういうのに弱い私は結局2つもお買い上げするのでした。

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冒頭の写真でわかるように、夜明けのアンコールワットもちゃんと見にいきましたよ。ちなみに早朝のこの努力は、結局逆光になるので、写真を撮る目的であれば朝じゃないほうがいいかなと思います。その朝の光と、その場の雰囲気と、だんだん姿を現すアンコールワットを肉眼で見るためだったら努力の甲斐があると思われます。

イタリアの遺跡群もそうなんですが、遺跡ってまとめて見てしまうとごっちゃになってしまうし、神話や宗教や実際の記録や様々なものがあるので予習や復習が不可欠になってしまうし、この旅行ではリゾートでプールや読書でのんびりする時間が観光以外の時間としてあったのがすごくよかったと思いました。その間にアンコール遺跡のお勉強ができたしね。でも、アンコール遺跡は一度見れば良い、というタイプの遺跡ではありませんでした。私はできたら数年後にまた行って、今度は1週間ほど滞在して、毎日通ってみたいと思いました。どの遺跡でも、もう少し、立ち止まってしっかり見たい、という気持ちが高まる良い旅行でした。

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