この芸術的に美しく美味しすぎるブッラータはイタリア南部のプーリア州の名産ですが、私が3年ほど離れたイタリアを恋しく思うものの一つでもあります。ブッラータが、というわけではなく、シンプルなイタリアの食材の全てが、という意味です。こうしてナイフを入れると中からふわーっと生クリームの液状のものが出てくるのがまさに垂涎ものです。
プーリア州にはイタリアに住んでいた間に何度も行きましたが、一番最後に行ったのが2016年の9月、夫のAさんのご両親(身内なのでもはや「ご」をつけるべきでないのは日本語的に重々承知ですし、以下にも不適切な敬語が登場しますが、常識なしだと思ってここは見過ごしてください)がイタリアに遊びにきてくださった時に一緒に旅行をした時です。その時はプーリアだけではなく、前半はカンパーニャ州とカラブリア州に行き、その後後半にプーリア州とバジリカータ州に行くという南イタリアをシチリア以外全部制覇するという素晴らしい旅行でした。
突然の飯テロで申し訳ないんですがこれがいわゆるナポリのピザというやつですね。トッピングというか、種類は私がピザといったらこれしか頼まなくなってしまったピッツァ・マルゲリータ。ピザの味を確認するのにどこのピッツェリアに行ってもマルゲリータを頼んでみよう、という感じで始めた筈なんですが、単に何を食べてもマルゲリータが一番美味しいと思ってしまったので、最終的に結局味でマルゲリータを頼んでしまいます。
モッツァレラは絶対に水牛(モッツァレラ・ディ・ブッファラ)、バジルは1、2枚のみ、トマトソースのトマトはなるべく地元産のもの、そしてフッワフワのナポリ生地(母ピザと言われるものを、まるで糠床のように何十年も使うらしいです)で窯は必ず薪の直火で焼くタイプ(フォルノ・ア・レーニャ)でなければナポリピザとは言えません。写真は有名なナポリのダ・ミケーレのもの。なんと恵比寿に2号店、博多に3号店があるらしいのでお近くの方はぜひ。私も恵比寿のお店行ったことありますが、味はかなり再現されてました。でもちょっとお高いのと、ちょっとキレイすぎるのと、お上品すぎてナポリっぽくないのがちょっと残念。ナポリのお店の凄腕ピザ職人のおじさんたちは下のようにとても陽気なのです。この後このみなさん、私をオーブンの前まで呼んで、そこでみんなで肩を組んでナポリのサッカーチームの歌を歌いました。私は歌えなかったけれど。
話は戻って愛すべきナポリはカンパーニャ州にあるわけですが、さらに南下するとカラッブリア州に入ります。そうすると日本の皆様もおなじみかも知れない、アマルフィ海岸に出るわけですね。絶壁の街のポジターノとかも日本では有名かも知れません。ただ、アマルフィにどうせ行くなら絶対に行かなければいけないのがラヴェッロというアマルフィ海岸から見える山の上の街です。なぜかというとラヴェッロから下を見下ろすとアマルフィがとっても美しく見えるからです。
レモンの木がみっちりと植えられている南イタリアらしい段々畑とアマルフィ海岸のワインディングロードの全てがラヴェッロからしっかり見えます。海の青がいかにもイタリアの青で、こうしてイタリアから離れてから改めて写真をみると、イタリアは本当に恵まれているなぁと心から思います。ラヴェッロにはチンブローネ庭園(ジャルディーノ・ヴィッラ・チンブローネ)というところがあって、昔の貴族の邸宅跡なんですが、そこの海辺のテラスからアマルフィ海岸を見下ろすところが一番綺麗だと思います。庭園内は結構歩くので大変ですが、無事にテラスにたどり着くと下の景色が広がっています。逆光で少し暗くてすみません。
いやあこうして写真を見ていると本当にあり得ないくらい綺麗ですね。他にもカゼルタに行って巨大な水道橋を見たり、ポンペイで遺跡をしっかり歩いて見学したりしました。とにかく前半本当に美しい風景で癒されたのを覚えています。ナポリ湾もヴェスヴィオ山も本当に雄大で美しかった。青い空と青い海に囲まれていて、寒くも暑くもなく、とにかく口に入れるもの全て美味しくて本当に南イタリアには脱帽するしかありません。そして一度ローマに帰って、今度はユーロスターで反対側の南イタリアである、プーリア州のバーリまで行って、そこからレンタカーをしてまずはポリニャーノ・ア・マーレという町まで行きました。ここは私が初めてイタリアに来た年である2006年に訪れたところなんですが、その時友人が予約してくれたホテルが超高級だったにも関わらず完全に自然な洞窟ホテルで度肝を抜かれたんです。そのホテルはもう営業をしていなかったのですが、同じ所のレストランは営業をしているということで結構予約が大変だったんですが、無事に親子4人で素敵な夕食をとることができました。レストランはこんな感じなんです。
ご覧のようにとても幻想的で素敵ではあるんですが、エンジニアの義父と地質学者の夫は安全性の保証はしてくれませんでした。自己責任、というやつですね。ちょっとテーブルの横から下を覗くとすぐに断崖絶壁、透明で美しいとは言え、海水もしっかり見えます。お食事は、もしかしたらほかのレストランの方が美味しいかも知れませんが、まあ洞窟レストランで食べるというのが醍醐味ですよね。ポリニャーノアマーレを満喫したそのあとは同じプーリア州の有名なアルベロベッロに泊まってとんがり屋根の街並みを楽しみました。
アルベロベッロ滞在中にバジリカータ州まで足を伸ばして、洞窟住居の街の世界遺産、マテーラにも行きました。マテーラに到着する前にマテーラを正面から観れるという丘に行ったのですが行って正解でした。マテーラに入ってしまうと下のような全体像が分からないのです。
そしてまた飯テロ失礼しますが、マテーラはイタリアでも有数のパンが美味しい街です。実はイタリアのパンというのは好き嫌いが分かれると思います。イタリア語でパンは「パーネ」ですが「パスタ」というのは実は麺のことだけではなく、麺を作る生地、つまり小麦粉を使った生地全般を指すんですね。それでフランス語のほうが有名な「パティスリー(お菓子屋さん)」「パティシエ(お菓子職人)」なんて言葉がありますが、イタリア語の「お菓子屋さん」は「パスティッチェリア」、つまりパスタ屋さんなんですね。何が言いたいかというと、イタリア人にとって、「パーネ」は「パスタ」ではないのです。パンにイーストを加えたり、バターを入れたり甘くしたりするのはそれはもうすでに「パーネ」の定義を超えて「パスタ」になっている、というのです。ですからイタリアの「パーネ」は基本的に「超」がつくほどシンプルです。舌の肥えた日本人にはちょっと物足りないかも知れません。でもこのマテーラのパンは一般のイタリアのパンとは全く違います。本気を感じられます。ほかほかのオーブンから出てきたばかりのパンを出してもらって一口頬張ると、本当にほっぺたが落ちそうになります。
私のローマの友達はもしかしたら「これはパーネじゃない、パスタだ!」と言い張るかも知れませんが。でも正直どっちでもいいんです。美味しいのでこれがなんであれ、とにかくなんでも良いです。とにかく全行程食べ物に恵まれた旅行でした。お天気も大体よかったし、イタリアの風物詩でもある自由なネコちゃんたちにもたくさん出会いました。
アルベロベッロでは早朝にAさんと散歩していると、真っ白な猫ちゃんがふと現れ、私たちのまえをスッと走っていったかと思うと、どこかで待っていて、「こっちだよ」と言わんばかりに旧市街までどこまでも案内してくれる、という不思議な体験もしました。陽気なおばさんが家に呼んでくれてコーヒーまでご馳走してくれたり、人懐っこい感じが南イタリアらしいと思いました。なんとなく、本当になんとなくですが、人々のそんな人懐こさが、私の出身の九州の雰囲気に似てる、と勝手に思って嬉しくなってしまいました。南部ってどんな国でもそういう印象を持ってしまうので私も自分勝手ですね。もう3年以上前の旅行ですが、本当に楽しく充実した旅行でした。Aさん、大阪のお父様お母様、楽しい時間を本当にありがとうございました。