人生で3本の指に入る感動の味

Firenze

今日はなんだか夏が戻って来たローマに、イタリア人の仲良しのAも帰って来たので久しぶりに一緒にコーヒーに出かけてたっぷりおしゃべりしてのんびり過ごした日曜でした。
さて話が前後してしまいますが、フィレンツェで「もしかしたら今までの人生でいちばん美味しかったかもしれない(大げさ)」と思えた食事ができたのでご紹介しようと思って今日はこれを書くことにしました。一番じゃなかったとしても3番以内には絶対入っていると思います。ミシュランの星付きにも結構な数行ったと思うし、それぞれとっても美味しかったんですけど、どう考えてもそういうところよりずっと良かった。前日にフィレンツェのホテルのコンシェルジュに「ゆったりとしたところで美味しいワインを飲みながらお食事できるところを教えて」といったら、ホテルが用意したリストを渡してくれて、「ここは個人的にすごくオススメ」と行ってくれたところがあったんですね。そのレストランとはIl Ristorante Caffè Pitti。名前にCaffèとついているし、場所が超がつくほどの観光地、ピッティ宮殿の広場のド正面。かなり微妙。私とAさんも、「いやぁどうなんだろうね」といいながらとりあえずホテルからヴェッキオ橋を渡って一直線だったので、行ってみるだけ行ってみることにしました。
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ウィンドウにメニューが貼ってあったので、どうなんだろうと思って見ていると、まあまあ普通のフィレンツェらしいプリミにセコンディが並んでいます。お値段も観光地にしては安いけれど、普通と言えば普通。これといって特に目立つものなしだなぁと思いながらいろいろ見ていたら、中からカメリエーレが出てきました。あとで自己紹介してくれたときに分かった彼の名前はアンドレア。ちなみに話がズレますが、イタリアではだいたい男性の名前はOで終わり(マルコ、ルチアノ、ジュリアーノなど)、女性の名前はAで終わる(マリア、アンジェラ、クラウディアなど)のが普通なのですが「アンドレア」は数少ない例外で、男性の名前です。
アンドレアが私が見ていたメニューに隠れるように貼ってあった別のメニューを示して、「うちのレストランのオーナーはタルトゥーフォ(トリュフのこと)が大好き過ぎて、自分で豚連れて堀りにいっちゃうほどなんですよ」と話しかけてきました。へぇそうなんだ、と思って話をきいていると、黒トリュフの解禁(というかシーズン)は8月末。つまりまさに今がその時。そしてそのオーナーはその日の朝にトリュフをとりにでかけ、大量に持って帰って来たということ。だから同じ値段のお食事でも、いつでも新鮮なものを出すために、今日は大量に出せるということを教えてくれました。
トリュフ好きの私としては飛びつかざるを得ません。ちらっと見てみるとテラスに出ていたテーブルに、観光客目当てのレストランとは一目で違うと分かる、かなりの高級感があったのに気づいたのと、アンドレアが作り物じゃない笑顔を見せてくれたのにかなりつられました。そして何故かお客さんがそんなにわいわいしていないのも、ゆったりしたかった私たちにはぴったりでした。通された席も上のようにかなり個別スペースになっていて、他のお客さんなんて全く見えない場所でした。
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まずはフィレンツェらしく肉肉したものを、と思ってカルパッチョをオーダーしました。2人でワインをボトルで頼むのはちょっと無理かなとも思えたので、グラスでワインをいただくことにしたんですが、全くワインについて知らない私たち。知ろうともしていないってことも実は問題なんですが、私にとってワインは2種類。「好きなワイン」と「そうじゃないワイン」。そしてなんとも図々しいことに、私、キャンティのワインが好きじゃないんです。何様でしょうか。しかもトスカーナのど真ん中で。おそるおそる「私ちょっとキャンティが苦手なんですけど、なにかオススメあります?」と聞いたら「もちろん!僕はワインが大好きなのでカルパッチョにぴったりのワインをグラスでお持ちします。今夜はワインテイスティングですよ、グラスワインのお値段でいろいろ合うのを持ってくるから」とにこやかに言ってくれました。そして最初に持って来てくれたのがブルネッロ・ディ・モンタルチーノ。「好きなワイン」の味でした。カルパッチョにぴったりでした。
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イタリアのいつものパンは別に出たんですが、こちらは前菜と一緒にでたとってもクリスピーなパンのチップス。オリーブオイルたっぷりで、感激の美味しさです。カルパッチョをふたりであっというまにペロリと食べたあとは、私はプリモで一番上の写真のタリアテッレ・タルトゥーフォ(トリュフのパスタ)をオーダー。タリアテッレって、パスタの種類としては、同じ平たいパスタであるフェットチーネとどこがちがうの?と思うし、思われることも多いと思うんですが、多分イタリア語としてはそんなに違いはないことになっていると思います。作られる場所で違うかもしれません(北がタリアテッレで南がフェットチーネみたいな感じ)。ですが、これは私の「印象」に過ぎませんが、レストランで「タリアテッレ」と言われると、なんとなくすごくホームメードな感じがします。だからといってフェットチーネがホームメードでないということもないんですが、タリアテッレって書いてあると「お、あの自家製の味」と思ってしまいます。フェットチーネだと「卵が多くてムチっとした感じ」を期待しがちです。参考までに。
アンドレアはこの一皿を「タリアテッレ・アル・タルトゥーフォ」と呼んでいましたが、メニューを見るとタリエリーニ・ディ・パスタ・ディ・フレスカ・アル・タルトゥーフォとなっていたので本来の名前は「タルトゥーフォと新鮮(手作り)パスタのタリエリーニ(タリアテッレより薄いか細いかの意味)」ということでしょう。まさに、そんな味で、口に入れるたびに頬の内側がぎゅーっとなる感覚に教われる、驚きの美味しすぎるパスタとトリュフでした。トリュフが立派すぎる。こんなに大量に巨大トリュフのスライスが載ったパスタは初めて見ました。
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そしてこちらがAさんが頼んだフィレット・アル・タルトゥーフォ(トリュフとフィレ肉ステーキ)。生肉の状態からテーブルに持ってきてくれてAさんに確認をとったあと、アンドレアが嬉しそうにキッチンに戻っていって、帰って来たと思ったら、どーんとこれです。お肉のボリュームもすごいですけど、載っているトリュフの量もすごい。私たち二人とも完全ノックアウトです。私は実は、レストランで「ひとくちたべる?」とかをやるのをあまり好まないので(でも友人などとそういう雰囲気になれば私も「空気読み」して交換しますよ、ちゃんと)、Aさんと食事をしても、一口ずつ交換をすることは滅多にないのですが、こればかりは我慢できず、とりあえず一口もらってみたところ、後2回「やっぱりもう一口交換しよう」と言わなければいけなくなりました。タリアテッレもそれくらい交換したので、結果的にステーキ1/3パスタ2/3(Aさんは逆の割合)というとても良いバランスになりました。大きなイタリアンサラダも頼んで、すごくフレッシュで美味しかった。この時に一緒にもってきてもらったワインは私も大好きなモンテプルチアーノ。2012年に職場の日本人の友人と一緒にアグリツーリズモのついでに訪れて、ワインを買いまくったところです。私の「好きなワイン」カテゴリーにぴったり入っています。
イタリアではプリモ(第一のコース)は炭水化物、セコンド(第2のコース)はたんぱく質となっていることが多く、プリモはプリモの時間に、セコンドはセコンドの時間に食べることが、ほぼマナーのようになっていますが、こうして観光客に慣れているところは私が「私のプリモと彼のセコンドを同時に持って来てもらってもいい?」と頼んでも、にっこりして「もちろん!」と言ってくれました。真剣な話、こういうふうにちゃんと考えてオーダーしないと、イタリア人の胃袋を持たない日本人の私たちの胃は後々大変なことになります。美味しいので絶対残さず全部食べたいし。ということでとっても良い量と栄養バランスになったあと、アンドレアはドルチェ(デザート)のメニューを持ってきたあと、姿を消してしまいました。
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どこにいっちゃったの?何か頼みたいよーと思っていたら、なんとフライングでこれを手に現れました。スフォルマティーノ・アル・チョコラート・コン・サルサ・ディ・アランチェ・アマーレ、つまり「ショコラフォンダンとビターオレンジのソース」です。実はチョコラート・フォンダンテはイタリアのデザートの中で一番私が好きなものです(カロリーも多分一番高いものです)。有無を言わさず、これを一皿に、私たちに長いスプーンをひとつずつ渡すと「ちょっとまってちょっとまって」といいながらまた去っていきました。そして持って来たのが写真の奥に移っている琥珀色のキリっと冷えたモスカート・パッシート・ディ・パンテッレーリア(甘いイタリアのデザートワイン)。
私は密かに、ドルチェにはトスカーナならではのカントゥッチ(ビスコッティ)とヴィンサント(これも食後の甘いワインで、カントゥッチを浸していただく事が多い)を勧めてくれるかも、と期待していたのですが、非常に良い意味でこの期待を裏切られ、最高のデザートとなりました。苦みばしったオレンジと75%カカオのチョコレートがぴったり。素敵でディスクリートなシーティングに、こんな完璧なワインマッチング(「好きなワイン」カテゴリーのみ!)と今まで食べたトリュフの中でも最高級のシーズン始まったばかりのトリュフ(去年食べた白トリュフよりも美味しかった)づくしで、本当に全て楽しめました。またトリュフの時期に絶対に行きたいです。だから自分でもちゃんと覚えておくためにここに書くことにしたのでした。
ちなみに翌日の朝、Aさんが会議に行った後、私はレプッブリカ広場の老舗バールのGilli(ジッリ、リンク先は音が出ますので注意)に朝から行って、やや心残りだったカントゥッチをたくさん買いました。新鮮で歯ごたえがいいのにしっかり味がつまっていて美味しいカントゥッチ。イタリアは美味しいものだらけで本当にハズレがないですね。このジッリのカプチーノもなかなか美味しいです。お菓子類も豊富で、テラス席もたくさんあります。観光地っぽいバールではありますけど、夜のカクテルなんかも評判だし、私は17世紀からあるというその伝統の重々しい雰囲気のバールカウンターがお気に入りです。あ、ここでグラスに水を頼むと、リコリッシュの味のする水が出てきました。不思議。
あ、そうだ、最後に、あまり時事問題は扱わないようにしている私のブログですが、あまりに嬉しいので、お盆の週に東京で行ったレストラン(料亭)で撮った写真を載せますね。このお店もたしか一時期ミシュランに載っていたような。
Claudia and Cristian in Tokyo

いやぁ2020年がすごく楽しみですね。

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