オルセー美術館ガイド(1日中過ごす編)

Paris

最近パリにかぶれているみたいになっている私ですが、このあたりで私の好きなオルセー美術館についてまとめておきたいという気持ちが高まって来て押さえられなくなったので今日書く事にしました。別にパリにいるわけではありません。今はすっかりローマに帰って来て家でのんびり週末を過ごしています。今までこのサイトをちょこちょこ見てくださっている方はお気づきかもしれませんが、私はオルセー美術館、もしくはオルセー美術館展覧会というものに何度も足を運んでいます。なぜ何度も行くのか。自分でも分かりません。うっかり入館無料の日にオルセーの目の前までいって入場制限にかかって入れなかったことすらあります。何が私をこんなに惹き付けるのか。私は美術品に特に詳しい訳でも芸術が大好きなわけでもありません。たぶん、自分なりに分析すると、オルセーの位置、全体的な雰囲気、いろいろな館内設備、そこはかとなくかもしだされるゆるい感覚、私、今オルセーにいる!という実感、などなどが総じて好きなんだと思います。崇高な物が全然なくて本当にすみません。

このエントリーは、できればこれからパリに行く予定があって、私みたいにオルセーが好きかもしれなくて、事前情報がちょっとほしくて、というような人が参考にしてくれたらいいなと思って書いています。そしてできれば木曜日を丸一日オルセー観光に当てても別にかまわない!という人だったらさらにいいかもしれません。なぜ木曜日か。それは木曜日はオルセーが遅くまで開いているからです。オルセーで1日過ごす!という気合いで是非お読みください。

準備編:
公式ウェブサイトはこちら:http://www.musee-orsay.fr/en/
特別な展示などがある場合は混むこともあるので情報をゲットしておいてくださいね。下の情報は現在の私が知っている情報です。
重要1:月曜日は閉館日です!
重要2:毎月の第一日曜日は入館無料なので非常に混雑します!
開館時間:9.30 am
最終入館時間:5.00 pm(木曜日だけ9.00 pm)
閉館時間:5.30 pm(木曜日だけ9.30 pm)
入館料:常設展は 9 Euro(特別展をみたい場合は追加になります)
チケット:オンラインで買っておくと楽ではありますが、以下のように朝に行く場合は特に問題ないはず。

実践編:
情報を仕入れたら、まずは泊まっているホテルからオルセーに行くところから始まりますが、そのまえに、重要なのは朝ご飯を強烈に軽めにしておくことです。一日長いので、食べておきたい気持ちはわかりますが、ここは今日の胃袋は全部オルセーで満たす、くらいの勢いで朝はコーヒーとヨーグルトだけ、という感じで本当に十分だと思います。できればオルセーに到着した時にお腹が空くくらいがベスト。

さて、オルセーの最寄り駅は実はメトロではなくPERと呼ばれる鉄道のラインのC線にあります。駅名は分かりやすくMusee d’Orsayです。東京のJRとメトロの乗り換えのような気分で乗り換えても大丈夫です。このPER Cの駅でおりるとどの出口を出てもオルセーが目の前にあるので迷う事はまずないと思います。もちろんメトロの12番でAssemblee Nationaleで降りてもいいんですが、私はこのPER C線を使う事を強くお勧めします。2階建て電車で古ぼけた感じがいいのと、とにかく朝から迷わないのは大事だから。オルセーに到着するまでになるべくエネルギーを温存しておくことが後々強烈に大切になるのです。なるべく歩かず、走らず、ゆったりとさくっと到着しちゃってください。到着の目安は8時半から9時の間で大丈夫でしょう。あまりに早く着きすぎるとエネルギー消費してしまいます。オルセーの目の前に列を作る黒い柵があるので(上の写真参考)そこに並んで開館を待ちます。

開館すると列が動き始めます。意外とあっさり進む事に驚くでしょう。セキュリティーチェックをすぎたら、チケットブースに行きます。人数を伝えてチケットをゲットします。ブースの裏が入り口になっているのでそこでチケットを見せるとバーコードスキャンしてくれるので、そこでもう美術館に入った事になります!もう自由です!

ここからが私の詳しすぎるおせっかいポイントになります。まず、入ると、昔駅だったこのオルセー美術館がパーーーーっと開けて、(天気が良ければ)光がふりそそいでいて、確実に心の中で「おおおおおお!」と思うことでしょう。是非入ったそのポイントで、存分に立ち止まって感動してください。まだ歩かないで。何故かというとまず、荷物や分厚いコートなどがあるからです。パリ観光中でいろいろと重いものをもったりしている人はそのまま右手の後ろに歩いてクロークルームに行きましょう。必要な物はお金、身分証明になるもの、カメラ、ガイドブックなどでしょうか。小さめの見た目がかわいい(これ重要)エコバッグなんかを持ち歩いている私はいつもそれに入れ替えることにしています。冬のコートは間違いなく預かってもらいます。汗だくになるので。

その次は、迷いなく、オーディオガイドを借りに行きましょう。チケット売り場のところにもオーディオガイドコーナーはあるんですが、実は入ってしまってからの方が並ばずにすみます。クロークルームから出てきて、また初めの入り口近くに戻ると、入り口を背にして左側にだいたいオーディオガイドのブースが出ています。ミニポイントとしては、フランス語が分かるかたは絶対にフランス語を選んでください。説明の濃さが違うそうです。日本語と英語でも違うので、英語だけでも分かる方は英語のほうをおすすめします。

ここで今、オルセーの詳しいガイドがのっているガイドブック(日本からもってきたものなど)を持っている方はいざ中に進むんですが、持ってない方は、是非、だまされたと思って、そのオーディオガイドのブースの左にある小さなブックショップにいって、オルセーのガイドブックを買ってください。地図もついていて9ユーロです。絶対必要というわけではないんですが、あったほうが絶対嬉しい気持ちになるはずです。とてもチャチなガイドブックなんですが、それでも十分役立ちます。近くのインフォメーションセンターで赤いフロアマップをもらっておくのもいいと思います。

さて全てがそろったところで、まずはこてしらべに、入り口近くにある彫刻を2点ほど見ましょう。そのブックショップのすぐちかくに、大きな黄金のライオンがいるはずです。これは実は、ルーブルのライオン門にいるライオンの片割れなのです。ルーブルのほうの、ヘビと戦い、荒くれているライオンを知っていると、この静かにきちんと座って賢者のような顔をしたライオンにすこし動揺するかもしれません(私はしました)。なにかの上手な例え話のようです。パリ旅行に来たら、初めてだったらなおのこと、ルーブルに行く機会はあると思うのでぜひ同じような角度で写真撮影してみて、2頭のライオンを写真だけでも対にしてあげてください。そしてその奥には自由の女神がいると思います。

さてこのふたつを十分楽しんだら、なんと、私のおすすめは、立ち止まる事なく、このオルセーを縦にまっすぐ一番奥まで進むことです。狙いはカフェです。Cafe de l’Oursというセルフサービスタイプのカフェがこの階の一番奥にあるのでそこまで突き進みましょう。朝食を軽めで来ているのでお腹がすいているはずです。カフェクレーム(カフェオレ)とパンオショコラ(チョコクロワッサン)でも頼んで、オーダーカウンターに背を向けて一番先のカウンターに落ち着きましょう。

Musée d'Orsay

写真の白くまを存分に斜めから楽しめる位置が良いと思います。私がちょうど座っているあたりです。写真にうつっているのはガイドブックと、オーディオガイドです。まずはカウンター席のスツールにゆっくり座ってこの白くま(Polar Bear)を愛でます。オーディオガイドにも取り上げてある作品のはずなので、彫刻の左側に書いてあるはずの番号をしっかり確認してから着席しましょう。朝食をとりつつ、オーディオガイドを聞きつつ、目の前のこのPomponの彫刻をまじまじと見つめましょう。強烈に単純化されたラインから白い体毛が急にざわざわっと動いてPolar Bearがのしっと歩いた感じがしたらまじまじと見つめる作戦は成功です。

カフェでは他にもやることがあります。それは芸術品の予習です。これはわりと大事です。前日にやっておけば、と思うかもしれませんが、観光って復習はたくさんしても、予習ってなかなかできないものです。それは感覚がつかめないから。でも今、このオルセー美術館にいて、時間がたっぷりあって、ガイドブックも目の前にあって、だいたいなんとなくの位置関係も分かっているなら予習にはぴったりの場所なのです。今いるのは0階(グラウンドフロア)で、オルセーにはこの階と2階と5階の3レベルしかありません。0階はいわゆる駅だったときに線路があった部分です。ブックショップで買ったガイドブックを広げると、最初のほうに絶対当時の駅舎だった様子の写真があると思うのでそれを眺めて、是非このカフェの左に広がる景色と比べてみてください。

そのあとはだいたいでいいので1日の過ごし方をフロアガイドをみながら計画してみてください。カフェでは10時半くらいまでを目安に過ごします。0階のメインの部分は彫刻、左右の奥には絵画が納められています。私だったら全午前中をこの0階で過ごすと思います。それでも足りないくらいです。この階の彫刻は「超有名」とまではいきませんが心をぐっとつかんでくるものばかりです。絵画も、当時の「サロン」ってなんなんだ!「サロン」って何様なんだ!どんな贅沢な文化なんだ!と思うほどたくさんあってはっきりいってびっくりします。絵画に癒されるというよりは、絵画に挑発されるという感覚でしょうか。お腹がすいてたまらなくなるまで、ひたすら歩いてガイドブックやオーディガイドと照らし合わせながら、自分だったらどんなガイドをつけるか考えながら楽しい時間が過ぎて行くはずです。

12時になったら(あるいは近くなったら)なるべく早く、入り口近くか、あるいは先ほどのカフェのさらに奥にあるエレベーターに乗ってまずは2階へ行きましょう。ここで気をつけるのは、0階のカフェの裏にあるエスカレーターには乗らないことです。このエスカレーターは2階をスキップして5階にしかいけない仕組みになっています。まずは2階でランチなのです。なぜ早めに行くかというと、毎日結構人気だからです。ちょっと遅れてフランス人やヨーロッパ人のランチタイム(1時)に近くなるとうっかり並ぶ事になるからです。12時丁度くらいだったらまず問題ないと思います。

Musée d'Orsay

昔はホテルだったというこの部分にあるこの壮大なお部屋、天井画、ゴージャスなバカラのシャンデリアなどの中でわりと普通のランチができます。私は冷たいお料理をいただいたのですが、多分暖かいお料理のほうが美味しいと思います。ここでもゆっくり次の予習や今までの復習ができるので1時間ほどゆったりしましょう。並んでいる人を横目にちょっぴり優越感にひたりつつ、窓からのパリの街の景色やセーヌ河をちらりと見ながらのランチはなかなかの気分です。味がもうすこし良かったらいいんですけどね。ワインをいただくのもいいんじゃないでしょうか。私はお酒は非常に弱いのでこんなところで飲んでしまったら午後は絵画鑑賞どころじゃなくなるため自制しましたが。

ランチがおわったら次は2階か5階です。私は2階を選ぶと思いますが、実は日本人が好む印象派の作品はすべて5階に集められています。オルセーが初めてだったら、まだ体力のあるうちに5階にいくのが正解かもしれません。私は印象派は何度も見たので(東京でも)2階からまわることにしました。5階は開館時から人であふれかえっていますので、0階や2階の優雅さはほぼないと思ってください。2階は彫刻が内側に、絵画が柱の奥に、という配置になっています。0階のカフェのちょうどうえのあたりにロダンの作品があつまっています。ロダンのものはここでみるよりもロダン美術館でみるほうがずっと良かったと思いました。それよりなにより胸をつかんではなさないのはロダンの作品を背にして大時計を見た時に左側の回廊にある、カミーユの作品群。写真を見ただけでもハっとするほど美しいカミーユを、こんなにしてしまうなんて、ロダンってどんな人だったんでしょうか。”Maturity”の前で泣いている人もいました。ちょうどそんなカミーユの作品などがある部分の奥は、ポスト印象派といわれるゴッホやゴーギャンなどの作品があります。私はどちらもそんなに好きではなかったのですが、ゴーギャンのタヒチの家の装飾だった木のプレートにフランス語で”Be mysterious, be loving and you will be happy”と書いてある、とオーディオガイドさんに教えてもらってからはゴーギャンの作品が違うように見えてきました。Be mysteriousの部分が、何というか、いわゆる「真実」というか、人間の根本的な魅力の見せ方を心得ている気がして非常に特徴的ですよね。

そうこうしているうちにもう夕方4時になってしまいます。いいかげんもう5階に上がらなくては。大時計のある側から5階にあがると、まずは下の写真のカフェ、Cafe Campanaが目にはいるかもしれません。反対からはいってしまったとしたらもうあきらめてください。カフェは最後です。ショコラシュー(ココア)などでエネルギー補充をするもよし、ペリエなどで水分補給をするのも良しです。これからが勝負なのです。

Musée d'Orsay

5階は、これでもか、これでもか、これでもか、と印象派の作品をがんがんぶつけられます。モネ、ルノワール、セザンヌ、ドガ、マネ、などなどいろいろです。フェルメールもあります。でもまず人々の目にとまるのは、Yoshioka TokujinさんのWater Blockでしょう。是非クリックしてみてみてください。いわゆるベンチなんですが、本当に美しすぎます。どうなってるの?と触ってみたくなることまちがいなしです。

5階は全ての部屋にたくさんの人がいるのでそのベンチに座るのももしかしたら微妙な順番待ちになりがちで難しいかもしれません。でも作品は是非、この部屋の真ん中の椅子にすわってゆったりと見てみることをお勧めします。椅子のそばでスタンバイしていれば必ず座れます。私は全ての部屋のこのWater Blockにそれぞれ15分ずつくらい座って部屋を見渡しました。たくさんの人が横切るので時には絵も何も見えなくなることもありますが、それがだんだん「長時間露出の写真の流れるような動き(タイムラプス)」のように感じてきて、その奥に、動かない印象派の作品が浮き出るように見えてくるのです。疲れない、非常に効率的な良い方法だと我ながら感心します。午後閉館まで、とはいかないかもしれませんが、全ての部屋でゆったりすわってオーディオガイドを聞いたり遠くから絵を見つめたりするのはとてもいい気分です。どんなに混んでいても、です。これをひたすら続けて、オーディオガイドで勉強して、へぇそうなんだ!と思いながら進み、29番ルームに到着したらオルセー制覇、これで全部おしまいです。木曜日に来ていたら、まだ時間があるかもしれません。朝のカフェにもう一度行って、何か美味しい甘いものでもつまみながらガイドブックで復習して、見落としたもの、もう一度ゆっくりみたいものをマークしてもう一度行く、ということができるのも木曜日の利点です。

館内にはミュージアムショップが2、3店(もっとかも)あるんですが、なかなかショッピング!という気分にはなれないほど疲れているかもしれません。足はいわゆる「棒」になっているはずです。でも!私は誘惑にまけてこれを買いました。「私だけ」のポンポンを手に入れるために。ちゃんとシリアル番号のついた、ポンポン在命時に許可された複製で、完璧なフォルムをしています。私が朝のカフェでまじまじとおしりからみつめたそのままの形です。

"My" Pompon

ミュージアムショップは実は私の非常に好みなタイプのショップで、私は今までいろいろなものをさまざまな場所にあるミュージアムショップで買いましたが、旅先でこんな重くて持ち運びが大変なものを買ったのは初めてです。でも買って本当に良かった。ショップの人も、「これはたくさんつくってあるとはいえ、最終的には数に限りがあるから『買い』のアイテムよ」とこっそりおしえてくれました。まだたくさんあるそうですので興味がある方は是非。これよりひとまわり大きいサイズのはもっともっと数はあるそうです。この先数十年は大丈夫かもって笑ってました。まあつまり大量生産です。でもいいんです。10億とはないものですから。今は私の部屋の本棚でのっしのっしと歩いています。あいかわらず白い毛をざわざわとさせながら。

閉館時間ももう近いはずです。あとはメトロにのってホテルに帰って、ベッドに飛び込むだけです。ランチが重かったので夜は水分補給だけで大丈夫かもしれません。途中でケバブを買って帰るのも「最近の」パリらしくていいかもしれません。おつかれさまでした。

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