イタリアのトマトが美味しいわけ

今日のランチ食べかけの写真すみません。これはもう3分の1くらいしか残ってない状態なんですが、私の今日のランチなんです。この他にも準備してブルスケッタ的なランチにしようと思ったんですが、とにかくトマトが美味しくて美味しくて、本当に止まらず、ブルスケッタはやめてトマトだけになってしまいました。かなり栄養バランス悪いんですが、でも本当にさすがイタリア。トマトの味だけは世界一です。
イタリアのトマトが美味しいということに関しては実は科学的根拠があります。トマトはトマト鍋などで一時ブームになったのでご存知の方も多いと思うんですが、日本ではおなじみの「うまみ」成分であるグルタミン酸が含まれていて、イタリアのトマトにはグルタミン酸が非常に多いんです。私はいろいろと調べてみて結構驚いたんですが、そのグルタミン酸が多い理由が、なんと「イタリア人の性格と文化」に寄るものが大きいんですよ。説明します。
トマトのグルタミン酸は収穫前に赤く熟すればするほど増えます。自家菜園でトマトを栽培している人や農家の人はこのことを経験で良く知っていますね。ただ、世界中のどこでも、農家がある程度のトマトを出荷しようとすると、赤くなるのを待っていては売る頃には熟しすぎて腐ってしまうので、青いまま収穫することになります。日本ではこれが主流です。スーパーマーケットにキレイなトマトが並んでいて、その中に熟れ過ぎてジュクジュクになってしまったトマトが1個でもあったら、日本では苦情を言えるレベルでしょう。
ですがイタリア人の性格では、スーパーにジュクジュクのトマトが並んでいても誰も買いこそはしませんが、キレイにそれを避けて違うトマトを選んでカゴにいれ、特に苦情を言うわけでもありません。「生き物だからこういうのがあっても当然」「数時間前まではまだ大丈夫だったのかも」というような感じでギリギリまでトマトを売っているし、選ぶのはお客さんのほうなので特に問題もないのです。でも残念ながらこれがグルタミン酸が多い理由ではありません。青いまま収穫して同じことになっても結果は同じですからね。何が違うかというと、もしみなさんがイタリアにいらっしゃることがあれば、是非スーパーでトマト売り場を眺めてみてください。ジュクジュク、あるいはシワシワのトマトを見ないことのほうが珍しいんです。これはどういうことかというと、そうなりやすいトマトを入荷してるんですね。よくラベルをみてみると、もちろんシチリア産だとかパキーノ産だとか有名なトマトもたくさんあるんですが、形バラバラで様々な状態になっている一番安いトマトのコーナーを見ると、完全にローマ産の超ローカルトマトなんです。ものすごく近くの農家から、かなり赤く熟した状態のトマトがスーパーマーケットに運び込まれてくるんですよ。
イタリアのスローフード運動なんて言葉を聞いたことがある方もいらっしゃると思いますが、イタリア人の文化として家族と休暇と食事が人生で一番大事な三本柱。食事をひとりでさっさと済ます、なんてことはあってはならないことで、マクドナルドの進出に心を痛めている人もたくさんいます。スローフード運動そのものに関しては私は特にこれといった意見は持っていないんですが、このスローフード運動の中に、「地域の生産物を食べよう」という項目があって、かなり多数のイタリア人は盲目的にそれが正しいことだと信じています。そのほうが体にいい、という非科学的なことを根拠なく信じている人もたくさんいます。私は科学的にはこれはなんともいえませんが、社会学的、そして心理学的にはその地域で生産された物を食べるということにはそれなりの良さがあると思うんですね。シチリア産のトマトが美味しいから、ということで、シチリアで青いうちに収穫したトマトを空輸して日本で食べるということもこの時代できますが、それより、住んでいる地域で、畑で赤くぼってりとするまで熟したトマトを収穫してきて冷たい水でさっと洗って食べるほうがもしかしたらすごく美味しく感じるかもしれないと思うんです。
というわけで自慢げにローマのトマト自慢をして不必要に主人のAさんを羨ましがらせ、イタリアに来たがらせましたが、実は茨城のトマトも同じように収穫して食べれば美味しいはず、ということを言いたかったのでした。トマトはプランター栽培も出来るのでベランダ栽培して是非おためしあれ。
追記(2011年9月13日):昨日の夜、今邑 彩さんの「いつもの朝に」を読んだんですが(ちょっと怖くて読み応えがありました。結末も良かった)、野菜嫌いな男の子が岡山の田舎で、農家のもぎたての完熟トマトを「バカうま」といいながら夢中で食べるというシーンがあって、こういうことってSynchronistic(共時的とでもいうんでしょうか)だなぁと思いました。

6 Replies to “イタリアのトマトが美味しいわけ”

  1. みみちゃーん。
    お久しぶりです!
    帰国中には会えなくって残念ですが、元気そうで何よりです!
    ところで今年の初めに、活水での講演で「イタリアのトマトがおいしいのには、ちゃんと訳があるんです。」ってミミちゃんが言ってたのが、ずーーーっと気になってたの!今日、このブログで解明されて、一人で超すっきりして、歓声をあげちゃいました。
    あの時は主に学生さん相手の講演だったから、もちろん「各自調べてみてください」的な流れになってて、私もいつか調べよう調べようと思ってたら、あっという間に今日の日を迎えました。
    謎も、思い続けたら、いつか解決るするんだなー、ってうれしくなった一日でした(主に他力本願。ちゃんと自分で調べろって感じよね)。
    ありがとねー!!

  2. プルマンに着きましたよ!早速大好きになってしまいました。
    ワイオミングも美しかったけれど、久しぶりにもう少し都会の雰囲気を楽しんでいます!
    トマトの話、実はこの間授業で話しいていたばかりなのですよ。農家で赤くなるまで育ったトマトの旨み成分の量は、青い状態で育ったトマトをエチレンで赤くしたものの旨み成分の量は全然違うんだという話でした。(農家の旨み>エチレンで出した旨み)。そこからFlavor savorというトマトの話になったりしてとても興味深かったです。
    そうそう、今日はモスコウのファーマーズマーケットに行って見ようと思ってます!楽しみ!

  3. あっこちゃん:お久しぶり!ホント、帰国中に会えなくて残念でした。でもこれからもちょくちょく帰るので九州に帰った時には遊んでね。そっか、活水の講演ではあっこちゃんは、私に気にさせられるだけ気にさせられて放置だったのねーごめんね。今回すっきりしてもらって本当に良かったです。私も実はあのとき、ちゃんと最後に「答えは」みたいにすればよかったと思わないでもなかったのよ。それではまたね!
    絵美さん:プルマンに到着されたんですね。ワイオミングも素敵な田舎なイメージですよね。それにしてもプルマンが都会に見えるとは!今は小麦畑が茶色く見えるかもしれませんが、5月くらいから本当に美しくなるので楽しみにしてくださいね。ところで話はちょっとトマトの美味しさの本筋からズレますが、Flavr Savrのトマトがニュースに出た頃は私は日本に住んでいたんですが、あの当時あんなにキラキラ見えた未来の技術、バイオテクノロジーが、20年後の今、こんなにビターな結末(まだ終わってはいませんが)を迎えているだなんて本当に思っても見なかったのでちょっとだけ残念です。遺伝子組み換えに抵抗を覚える人がいるのは良く分かるけれど、この分野のサイエンスにはもうちょっと発展してもらって期待したかったと正直思いました。でもたとえ安全でも、安全性の確認をちゃんと行うということは大事なことだということには強く同意しますけどね。絵美さんはTri-citiesでどんな研究されるんですか?

  4. 実際前にすんでいた町とプルマンとでは人口はどちらも3万人ほどなのですが、なんだかプルマンの方がお店も人も多いような気がするのですよね。きっとモスコウがこんなに近くにあるからでしょうね。
    GMOはやはり一般的に受け入れられませんね。個人的には、時間をかけて行う品種改良も結果を見えれば遺伝子が変わってきているのと一緒なのにな、と思いますが。「絶対安全!」なんて科学者の口からは聞くことはなさそうですが、きっと消費者はそれを聞くことができれば少し安心するかもしれませんね。
    私の研究はBiofuelの研究なんです。飼料の研究がメインなのですが、飼料を燃料に使おう!という研究に参加することになりました。私の植物が育っているのは実はProsser(WA)から少し下ったBoardmanというオレゴンにある町なのです。9月末に初めて行ってみる事になっているので、今から楽しみです!

  5. みみちゃんー。トマトの話、超がってん!だったよ~。というのはね、私、夏休みに帰省して、実家の家庭菜園のトマトを食べたら、強烈においしくて、すごく仰天してしまったのよ。
    というのが、私はプチトマト(ミニトマト?)が好きで、12個前後で400円が相場な気がするんだけど、なんか他の野菜に比べてちょっと高い、でもおいしいから買っちゃう、的なポジションだったのに、実家では、200円の苗買って、ひと夏ずーっと毎日のように、私がスーパーで買っているものよりはるかにおいしいトマトを食べてるのよ!うらやましい!そして、くやしい!
    プランターでトマト育てるかなー。
    ジュネーブがんばってねー。

  6. みさきちゃん:がってんしてくれて良かったよ!家庭菜園トマト本当に美味しいよね。トマトはわりと簡単に育つからプランター栽培是非やってみてよ!ちょっと虫きちゃうけど、毎日愛情を込めて育てると本当に甘く美味しくできるよん。ジュネーヴ頑張っていってきまーす。

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