Once (2006), (A)
バレンタインデーを一人でのんびり過ごし、金曜日の今日は午前中に急用ができたため、一日デイオフをいただいたんですが、そしたら午後がヒマになったのでiTunesでレンタルして映画でも見ようと、借りた映画がこれです。トレイラーを見て、インディな音楽ムービーだな、というイメージで、お部屋の掃除でもしながら、ぼんやりゆっくり見ようというスタンスだったのに、すぐに話に吸い込まれていって、途中からは一緒に歌いたくなって、結論から言えばすごく良かった。そして見たタイミングがすごく良かったと思った。この時期にこの気持ちのときにこの映画を見る事ができてすごく良かった。違うタイミングで見たらきっと全く違う印象を持ったことでしょう。さらに感想は下に続きます。[ DVD | 日本語DVD ]
主人公のふたりはそれぞれ、流しでギターの弾き語りをしたり、花売りをしたりと、つかみどころのない仕事をして甘えているように見えるかもしれないし、流されて生きてるかもしれない。そしてそれは決して褒められるような人生じゃないかもしれないし、責任感のない大人に見えるかもしれないし、ふたりにはちゃんとした将来の展望なんてないのかもしれないけれど、それでもこのふたりはふたりとも、ちゃんと必死だと思った。私は流されないように、計画的に、責任を持って、というようなことを考えながら生きているつもりだけれど、でももしかしたら、私のそれは彼らのような必死な努力ではなくて、ものすごく根底の部分で甘えてるんじゃないかとハっとしました。でもそれでも私も必死なんだ、と思ったのが「これからどうするの」「わかんない」という会話と、そのあとの長いため息に共感してしまったところ。私も今まで自分で道を一生懸命築いてきたけれど、ふと見渡せば、周りには、道ではないけど魅力的な森だったり川だったりが見えたりするような感覚でしょうか。うまくいえないけれどそんな感じ。
舞台であるアイルランドのダブリンもそうみたいですがイタリアのローマにも東ヨーロッパの貧しい移民の人々がたくさんいます。彼(女)らの中には貧しいが上に、軽犯罪に走ったり、薬に頼ったり、騙されて悪い組織に入ったり、金品をせがんだりするグループも多く、そのせいで社会的にも彼らに対する差別が多々あり、すべてが悪循環になっているように見えます。イタリアではその解決策はなかなか見えず、イタリア人の友人もよく、心の痛い問題だと教えてくれます。特にローマニアの人は国の名前だけで差別されているような気がする。東ヨーロッパ出身の女性はロシア系の美人が多いので、女性はとくに見た目だけですぐに分かります。私のフラットのビルの掃除をするのも東ヨーロッパ系の女性3人です。彼らも毎日必死にこのチェコの女性のようにこつこつと仕事をして、家事をして、家族の世話をして、と生活していることでしょう。そんなとき心に響いてくる歌や音楽は、私がきまぐれにCDを買って聞くものとは全く違う音がするんじゃないかなとふと思いました。
良い意味で意外な話の展開で、私はすごく好きなストーリーでした。ヒースローで微笑みながら歩く彼に心から拍手したくなりました。良かった。アカデミー賞にも歌曲賞でノミネートされているそうです。オフィシャルサイトはこちら(ページを開くとすごく良い音楽が流れます)。