良い事ばっかりではないのです

さて、落ち着いたら書こうと思っていたんですが、今日なんとなく気持ちが落ち着いたので書き留めておきます。私、このサイトをずっと読み返してみたんですけれど、結構楽しそうに毎日を過ごしているように見えるかもしれませんが、タイに来てから良い事ばかり、というわけでもありませんでした。実は非常に動揺するビックリな出来事もあったんです。といっても、要因はたったひとつ(ひとり)だけなんですけどね。
実は私がこうしてタイで研究しているのにはもちろん理由があって、何も突然タイを選んでやってきたわけではないんです。たまたま、あれは母がアメリカに来ていたときだったから3月頃だったと思うんですが、私の次の仕事までのプロジェクトに短期のプロジェクトをやろうと考えて、いつものように「研究費」検索をしていたときに、今いただいている研究費について話を聞き、送っていただいた募集要項を読んで、じゃあプロポーザルを書こう、と書き始めていたんですね。そうしたらたまたま、知り合いの先生の知り合いでタイからやってきているお客さんがいる、という噂を聞きつけ、それで「うーん、タイもいいなぁ」と思ってその人に話を聞きに行ったわけです。


タイの教授は奥さんと一緒に来ていて、名刺をもらったんですが奥さんは「フリーランスリサーチャー」だと言っていました(大学は卒業していないらしい)。なにそれ、と思ったけれど、そのときは楽しくお話をして、「こういうプロポーザルを書いているんだけど、どう思う?」といったような話をして、そこには日本人の方もいらしていろいろと勉強になることを教えていただいて楽しかったんですが、プロポーザルを書き進めるうちに、タイにコラボレーター(共同研究者)がいたほうがいいかもしれない、と思い始めて、彼らに「コラボレーターになる?」とカジュアルに聞いてみたんですね。そうしたら、すごく喜んでくれて、じゃあ共同研究しましょう、ということになったのでした。それで彼らの名前も入れて正式なプロポーザルを書き上げて、提出したわけです。
それから審査、面接を経てあっさり研究費をいただけることになったのでさっそくメールで連絡しました。そうすると、アメリカの先生たちは2人ともメールして2時間以内に、「おめでとう、何でも助けるから何でも言ってね」風のメールをくれたんですが、そのタイの先生からは音沙汰なしでした。ここにも何度か書いたことがあるかもしれませんが、アメリカのアカディミアの方々は”Fast Response”というのが、「仕事ができるかできないか」のものさしのようになっているので、「うーんやっぱりタイの人はちょっと違うのかな、でもアメリカでPhDとったのに珍しいな」と思っていたわけです。
研究費をいただけることが分かってから出発までの間があまりなかったので、2週間も返信がないと私は不安になってきました。ですからまた重ねて「忙しいんですか?」という感じのメールを出したところ3日後くらいにやっと「あなたのメール全部届いているから大丈夫」という良くわからない内容だったけれど、一応返信らしき返信が来たのでした。それで、なーんだ、単に忙しすぎただけか、と思って心配するのをやめてさっさといろいろ手配をして「これこれこういうプロセスでタイに行きます」というメールを送って飛行機の情報なんかも送ったんですが、これまた音沙汰なしだったんですね。でもあまりにも忙しい人をせかすわけにもいかないと思って、半分あきらめて渡タイしたわけです。
到着した翌日にとりあえず教えてもらっていた携帯に電話したら留守電だったので、「到着しましたよ、私の携帯番号はこれです」というメッセージを残しておきました。そうしたらその3時間後に電話がかかってきて、「今バンコクに来ているから今すぐ会いにきて」と言われました。この頃くらいから、多少とまどっていたんですよね。だって「今すぐ会いに来て」って言わないでしょう。でも仕方がないので会いに行くと、「スターバックスへ行きましょう」といってさっさとスタバに入って行き、そして席を見つけて座っているんですね。なんとなく流れで「何が良いですか?」とウェイトレス化してしまう弱い私。教授も奥さんも好きなものを頼んで来て私がカウンターでコーヒーの注文をし、それからしばらくリサーチの話。
そのあと、「とっても良いレストランがあるから」とタイでも庶民向けだけれど高額で有名な日本食のOISHIというレストランのバフェに連れていかれました。バフェなので最初にお支払いするんですが、「ここは最初に支払うのよ」と奥さんのほうが私に教えてくれて、自分はさっさと料理を取りにいったんですね。うーん、私が接待するのか、とちょっと思ったけれど、まあそんなもんかなと思ってお支払いして、それから彼らのお説教(?)を聞く事3時間。「あなたはタイの文化を分かっていないからまずは文化の勉強をしないとリサーチなんてできるわけない」というような話でした。まあその通りなのでハイハイと聞きましたけどね。でもそこにはこっちでできた友達も連れていったので、他の話で楽しく盛り上がったので私としては結果良ければ全て良しと言った感じで自分の中では「イヤなこと」だとは思ってませんでした。ちょっとたくさんお支払いしたのが痛かったけれど。
そして翌日、その奥さんの方から電話がきて、「私8月1日からあなたの泊まっているホテルに行くから」と言われました。え!と思って「なんで?」と聞いたら「どうせベッドひとつあまっているでしょう」と言われました。それって「なんで?」に答えているようで答えてないんですけど。でもどうやらフルタイムで私の研究を助けてくれるようなことをいうので、まあそれはそれで助かるかなと思って「いいよ」ということにしました。弱いなぁ。ホテル代は当然2人になると上がるのでそのことを言うと、「日本の政府からお金でるんでしょ」と言われたので「いや、出ません」と即答しましたけどね。それで差額は彼女が払うということで彼女、8月1日から私と一緒の部屋に泊まり始めたんですよね。
でもまあ、仕事はちゃんと手伝ってくれるし、タイ語は話せるし(当たり前)この際いろいろ翻訳してもらったりしちゃえ!と思っていろいろお願いしていました。研究費で謝礼は出せるので、それなりにお支払いもして。そして1週間と1日たったとき、それは突然きました。
「私帰る」といいだしたんです。いや、別にいいんですけどね。勝手に来るわ勝手に帰るわ。まあでも8月31日まで共同生活するのかーとげんなりしていたところだったので、実はちょっとほっとしたんですけれど、彼女がこれからもいるものだと思っていろいろと計画を立て直したところだったので、それをまた、もとに戻さなければいけなくなって、非常にイライラしました。
でもどうやら、彼女は私にフルタイムで雇ってもらいつつ、フルタイムで何か他のリサーチプロジェクトをやろうと思っていたらしくて、バンコクに安く滞在できる!これ幸いとやってきたらしいんですよ。でも私だって一緒に生活して謝礼もお支払いするからにはお仕事してもらおう、と思っていたので結構8時間みっちりといろいろやってもらってたんですね。それで「じゃあ私はいつ他のリサーチをやるの?」と思ったらしいです。いや…、普通フルタイムで働いたら別の事をフルタイムでやれるわけないんですけど。
で、それを旦那さんも不服として私に電話一本かけてきて「僕たちすっっごく忙しくなっちゃったから、もうあなたと共同研究できないから」と言ってきました。いやー、別に共同研究できなくても、実際そんなに困ることないんですけど(私が研究費を握っているから)、これを直接電話で言われたら結構こたえます。人としてね。何となく優しさのない言葉だし。でもまぁ、人間関係をこれ以上壊す訳にもいかないので「分かりました、お忙しいのをお察しできなくて本当にごめんなさいね」といってそれっきりにしました。実際他の大学(今滞在しているKasetsart UniversityやChulalongkorn University)の先生達とも共同研究のお話はすすめていたので本当に、現実的に困ることは全くないので大丈夫なんです。
というわけで、今日はChulalongkorn Universityの先生と改めてお話して、彼女がメインの共同研究者かつタイでのホストになってくれるということを正式に決めて、オフィシャルなお手紙も渡してスッキリしてきたところです。もともとの立場はVisiting Research Fellowということだったんですが、オフィシャルにホストになってくれたということは、私に授業させてくれたり、今やっているFood Safety Projectのお仕事をさせてくれたりと、本格的にいろいろ一緒にお仕事できるということなので実は大歓迎なのです。
結論としては、なんだかんだいって、私がグラントをもらえたのはもしかしたら彼らが共同研究者として名前を連ねてくれたからというのもあるかもしれないし、実際1週間と1日はみっちりしっかりとお手伝いしてくださったし(ものすごく助かった)、実は私は結構お世話になっているんですね。ただ、お互いにいろいろな意味での誤解やタイミングの違いなどがあったのではないかということです。私も実は、完全に彼らを頼りにしてしまえばよかったのかもしれません。「他の大学でもFellowとして受け入れてもらってるよ」というのをあっけらかんと出しすぎたので「じゃあ私たち、そんなにいらないじゃん」と思わせてしまったのかもしれませんね。反省。というわけで、大した苦労でもないけど、まあ苦労もしてるよ(?)というお話でした。いやほんと、苦労というほどの苦労でもないですね。

4 Replies to “良い事ばっかりではないのです”

  1.  やっぱり他の文化圏の人とは、すれ違うことがありますよね、、、以前、グアテマラに行っていてやっぱり気づかれするこが多かったのを覚えています。ところで、まさみさんにはいろいろな人との出会う機会、たくさんの経験、なお研究があって羨ましいです。
     僕は明日からQualify(Prelim.)です。これはきっと羨ましくないですよね。
     お互いステージは違いますが、がんばりましょう!

  2. Bowさん:そうですねー。でもタイの人は信じられないほど親切な人が多いイメージなので、新鮮でした。他のタイの友達も「その人は変わってるよ」とかばってくれました。でも実際文化が違うんでしょうね。
    Qualify頑張ってくださいね。私も思い出してしまいました。こんっっっっっなに勉強することって人生のなかでもう絶対ないな、と思いましたよ。そのときは誰が励ましてくれても「苦しいよー」と思ってましたが、今となっては頑張れば頑張っただけ本当にタメになったなーと思いましたので、是非頑張ってくださいね。応援しています!

  3. Masamiさん、お久しぶりです。ずっと読ませていただいていたのですが、なかなかコメントを書けなくてこんなタイミングですが書いてみます。
    まずは、無事に渡タイおめでとうございます。日本にしか住んだことないあたしなので、Masamiさんの書かれる事、すべて新鮮でじっくり読んでしまいます。
    タイに行かれてからの楽しそうなエントリーを読んで、「いいなぁ」とぼんやり思っていたのですが、やっぱり大変なこともあったのですね。なんていうか本当に大変でしたね。でもMasamiさん自身もおっしゃっているように、落ち着いたようでよかったです。
    気持ちをまっすぐに書かれるMasamiさんの文章が好きです。いつも楽しみに興味深く読ませてもらっているんですよー。
    ではまたおじゃましますね。

  4. soraさん:ありがとうございますー。そうなんですよ。今思えば結構大変だったなーと思います。その電話がかかってきたときは2時間くらい落ち込みました。でもそのあとすぐに友達が美味しいものを一緒に食べにいってくれたのであっさりご機嫌になりましたけれどね!
    私もsoraさんのサイトいつも楽しみにしています。最近パスタ食べてないんですよー。ホテル住まいってラクだけど、やっぱりお料理できないとちょっぴりつまらないですね。お料理そんなに好きなわけでもないんですけど、いつも外食ってちょっと飽きます。

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