小太りさんは長く生きるか

今日のNY Timesに”Some Extra Heft May Be Helpful, New Study Says“という記事があったので紹介します(リンク先を見るには無料の登録が必要です)。どうやら、疫学的に調べたところ、健康的な体重の人、ちょっと太り気味の人、肥満の人と3種類比べたときに、なんと、ちょっと太り気味の人のほうが寿命が長かったということなのです。
えー、じゃあ太ったほうがいいの?という結論ではありません。なぜかというと、このリサーチでは、単純に「死」だけを数えているからです。障害が出たり、歩けなくなったり、糖尿病や心臓病、ガンなどにかかったりするのは無視です。単純に死んだ年齢などを見ているだけなのです。


でも面白かったのはこれ。

The study did not explain why overweight appeared best as far as mortality was concerned. But Dr. Williamson said the reason might be that most people die when they are over 70. Having a bit of extra fat in old age appears to be protective, he said, giving rise to more muscle and more bone.
この研究ではなぜ太り気味の人が死亡率が一番低かったのかという理由は説明できていない。ウィリアムソン博士は理由をこう考える:ほとんどの人は70歳を越えたら死ぬものだ。年寄りにとって余分な脂肪はあったほうが、筋肉や骨の働きのためにも良いのかもしれない。

だいたい、人は70を越えたら死ぬものだ、ってとこが良かったです。まあそうだけど。でも疫学研究結果を見るたびに、疫学の研究者ってこう、なんというか達観してるなぁと思います。たとえば50年の疫学をやるわけですよね。博士号ってだいたい30歳前後じゃないと取れないものだと思うので、そのあたりから疫学的研究を50年やったら80歳じゃないですか!そして、それで死亡率とか疾病率とか調べて、そして後の世に役立てようってところが、なんというか、その研究の対象者はみんな死んでからやっと役立ち始めるってところが、なんか目を細くして遠くを見たくなるような研究だと思います。何でしたっけ、あの話、「木を植えた男」でしたっけ、あれを思い出します。でもこれからもっともっと大事になってくる疫学。私も興味アリアリです。
でもまぁ、結局ちょっとくらいの太り気味っていうのは、そんなにリスクではないということでしょうか。記事にも書いてありましたが、薬の効果ってかなりあるし、その手の技術の発展はめざましいですよね。薬で押さえることができる程度に、体重のリスクはそこまで怖くないということかもしれません。
でも、それでも精神的な健康のためにも、やっぱり見た目がいい方が精神状態はいいはず(やせなきゃ、やせなきゃ、とコンスタントに思い詰めるのは精神的に良くなさそう)だし、自分が満足する体重っていうのが本当は一番いいと思うんですけどね。でも逆に、その体重になるために好きな食べ物を全く食べないっていうのもまた、本末転倒な気がしますね。難しい問題です。

3 Replies to “小太りさんは長く生きるか”

  1. こんにちは、Tu大のBowです。おひさしぶりです。ちょっと原文、読みました。僕も”Healthy Life Expectancy”ではないなぁと思いました。カテゴリーではなくて、ちょっとカーブで見てみたい気もします。
    あと絶対数でみるのは危険!70歳以上の太り気味、肥満の人って少ないんですよね、、、もう亡くなっていますから。70歳になる前に。必然的に絶対数の多い「普通」の人の死亡数が増します。もっと深く読みたいところですが、、、Selection Biasの疑いが。
    疫学、おもしろいですよね。
    好きな食べ物が健康的な食べ物。
    そういう感じでがんばります。

  2. Bowさん:そうですねー、この研究はかなり「?」が多いですね。まあ、こういう分析の仕方もあって、そしてNCIとかCDCの研究者が実際に発表してるんだ!という驚きで、ふむふむと読んだ次第です。彼らのレピュテーションから言って、いい加減な研究ではないだろうし、複雑ですね。Bowさんのおっしゃるように、カーブでも見てみたいところですね。どちらにせよ、「死」を数えるのはサイエンスではない、というところにウンウンと思いました。
    「好きな食べ物が健康的な食べ物」っていうのは良いですね。ありえないほどたくさん何かひとつのものを食べるという行動って、もちろんその食べ物が好きっていうのも要素のひとつでしょうけれど、きっと、何か他に問題がある場合が多いですよね。そういう人には「その食べ物を制限する」というアプローチよりも、その根底にある何かの問題を解決するほうが先かな、といつも思います。
    なんか話がいろんな方向に飛んでいきそうになるのでこのへんでやめますが、食べ物についていろいろ知ると、「好きな食べ物」って無限に増えるし、無限に増えると、結局いわゆる「バランスの良い」食事になるのかなーなんて、理想論ですけどぼんやり考えちゃいます…。

  3. 先日、某H大学のHという栄養疫学の世界では有名な人が講演を行い、このJAMAの件にも触れていました。やはり、病気をもっている人は解析から排除すべきだと。
    Bias。いつのまにか餌食になってしまうことのかなと思います。

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