eゼミ:航空機 EU vs. USA のその後(BTW第09回)

このエントリーのコンセプトについては「はじめに」をお読みください。
今回のお題(Economist誌より):
Trade negotiators from the European Union and America argued over who was to blame for a breakdown in talks on cutting government subsidies to Airbus and Boeing. The talks, which began in January, sought to avoid formal complaints to the World Trade Organisation, which now seems likely to have to rule on the dispute.


A子さんからのメール。

武内さん、こんにちは。前回の添削でのご指摘(South Koreaを北朝鮮と訳した部分です)、自 分の常識のなさをとても恥ずかしく思いました。今回も添削よろしくお願いします。
BTW
EUとアメリカの貿易交渉は、Airbus社とBoeing 社への政府補助金の削減に関する議論の決裂は誰の責任かということを議論した。その議論は1月に始まり、WTOに紛争手続きを求めている。WTOはその議論を判決しなければならないようだ。
【背景】米航空大手Boeing社と欧州Airbus社への政府補助金をめぐる米国と 欧州との交渉は、双方の主張の隔たりが大きくなってきたため4月11日を期限とする 同交渉の合意達成は難しくなってきた。欧州は、違法な優遇税制がBoeing社に適応されていると指摘し、Boeing社の新型機開発に加わっている三菱重工や川崎重工などへの日本政府の支援策も規制すべきだとした。一方米国は、欧州各国によるAirbus社への補助金を減らし、新しいルールを作るべきだと主張した。

私のメール。

和訳するときは、直訳のときも意訳のときも自分でしっかり主語(S)を決めてそれによって述語、あるいは動詞(V)を合わせていくと良いと思いますよ。「交渉」は「議論」しないので、ここは直訳でTrade negotiatorsを主語にするか、あるいは意訳にして「議論が行われた」ことを述語にするかどちらかにするとスッキリすると思います。第2文もSとVが噛み合っていないので(「議論は〜求めている」になっています)同じように焦点をどちらかに決めましょう。おおまかな意味としてはどちらの文も合っています。ですがハッキリさせるために、お手数ですけどもう一度この文章は和訳しなおしてみてください。SVの組合わせ以外の注意点としては以下の通りです:
1. sought to avoid formal complaintsは直訳して、which began in Januaryは最初に(the talksの前に)持ってきてみてください(1月に開始された〜)。
2. nowの訳し方としては、こうしてWTOに決定をゆだねるのを避けるために話し合ったというのに結局そのWTOが入っていって解決しなきゃいけない、という意味をしめすように「それみたことか」というような雰囲気を出して、「結局」とか「いまや」とかそういう言葉を使うといいと思います。
3. seems likely to have to rule on the disputeは単語ひとつひとつ直訳したほうがキレイだと思います。
ところでこれはA子さんの和訳とは全く関係ないことですが、以前ちょっと話題になった、カタカナ表記をするか原文(アルファベット)表記をするか、というトピックについてちょっと追記です。これは私の「好み」なのでご自身のスタイルに取り入れたり従ったりする必要は全くありませんが、私は、あまりにも一般レベルで知れ渡ったカタカナはカタカナで書いてしまって良いのではないかと思います。たとえば国の名前とか。ロシア、イタリア、などまでもをRussiaとかItalyなどと書く必要はないのではないかと思います。とりあえず、訳をしていて自分が初めて出会ったと思える固有名詞を原文表記するのが良いかと思いますね。
また、日本語化されているものは日本語で書くほうが私は「好み」です。つまり、World Trade Organization (あ、今Spellしてみて気付きましたが、原文はかなりBritish Englishですねぇ!sになってますね)は「世界貿易機関」で良いのではないかと思いますがどうでしょうか。
またWTOのようなAbbriviation(アブリビエーション、アルファベットの略語、頭文字をとった言葉など)の使い方のルールとしては、文章の初めに出てくるときは必ずSpell out(全部書く)したほうが良いと思います。もちろん、原文がすでに略語になっている場合はそのままで良いですが。ですのでこの場合ははじめに出てくる部分では、”World Trade Organization (WTO)”と書いて、2回目に出てくるときはWTOとして良いと思います。もちろん「世界貿易機関」とした場合はそのまま日本語を2回使えば良いですね。

A子さんの和訳訂正(私のコメント含む)。

EUとアメリカ貿易交渉人たちの間で、Airbus社とBoeing社への政府補助金の削減に対して議論が決裂してしまったのは誰の責任かという議論が行われた。1月に始まったその議論にはWTOの紛争手続きが必要であり、結局WTOがその議論を解決しなければならないようだ。

いや、2文目が意味が変わってしまいました。意味としては「WTOが介入しないで済むように、と始まった議論だったのに、結局のところWTOが解決することになりそう」ということなのです。

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