Darwin’s Radio (Greg Bear)
ニューヨークに行くのに、当時読んでいたTraceはハードカバーで大きすぎるので、何かペーパーバックを、と思ってこれを持っていったんですが、しっかりハマってしまって長い大陸横断の空の旅があっという間でした。面白いですね!途中でちょっとチージーな感じになったなぁと思いましたが(ダスティンホフマンとか出てきたしね)、それでもコンセプトといい、フォーカスの仕方といい(出産とかね)、登場人物の描写といい、なんだか好みの感じでした。感想は下に続きます。邦題は「ダーウィンの使者」となっているようです。続きのDarwin’s Childrenも読み始めました。またいつか感想を書こうと思います。
[ 洋書籍 | 日本語訳書 ]
まずは105ページ。
これは何とも不思議な登場人物のSaulのセリフですが、この匂いの研究はいまさかんですよね。この前のノーベル賞もこれ関係でしたね。旬だな、と思ったので。
そして147ページ。
Fortunately, this far from Innsbruck, the Neandertal mummies aroused only mild curiosity from the press. He gave one interview: to the science editor of the Seattle Times, who then turned around and labeled him a two-time offender agiainst the sober, law-abiding world of archaeology.
とりあえず知ってる場所がいっぱい出てくるのは嬉しいものです。地理的に、ああ、この辺ね、と思える場所がたくさんでてきたのでこの本は素敵でした。
同じページ。
このPasco manというのは現実にはKennewick manと呼ばれています。私が住む町からちょっと南西に2時間ほどドライブすると、Tri-citiesと呼ばれるエリアがあるのですが、名前の通り、3つの市が集まっているんですね。一番人口の多いPasco、産業商業の多いKennewick、そしてRichlandです。このKennewickで実際に太古のものとおもわれるミイラ化した人骨(肉の部分も)が見つかったのですが、このお話ではくわしくは書いてありませんが実際の説明をすると:
アメリカはインディアン(ネイティブアメリカン)が「先住民」とされていて、この土地に「最初から」住む人種だということで話がまとまっています。ですが、この新たに見つかった”Kennewick Man”を調べてみると、どう考えてもインディアン系の人種ではない、ということが分かってしまったんです。じゃあ、一体何系の人種なのか!ということでサイエンティストたちは興奮してしまったんですね。でも、いまさらインディアンを敵にまわすわけにいかないアメリカの政府としては、なんと、あろうことか、政治的理由で、この発見を「なかったこと」にしてしまおう、つまり、もうこれ以上調べさせないようにしよう、という感じになってしまったのです。サイエンスよりもポリティックス。その後この発見をさらに調べることは禁止され、このKennewick manについては、「見つかった」ということしか知られていない、ということです。
この本では、ちょっと話をかえてあってPasco manということにして、インディアンたちが「太古の祖先は解剖すべきでなく、その土地に属するべきだ」とした、ということになっているんです。面白いですね。
151ページ。
If ever there was a wrong man to have such an incredible insight, to make such a huge and unsubstantiated leap of judgment, it was Mitch Rafelson. Better for all concerned if he started looking for faces on Mars.
ついに、話がつながりはじめた!という感じのところです。それまではチャプターがとぎれとぎれに場所を変え人を変え、と、もどかしい感じでしたがなんとなく全体像がぼんやり浮かんできてわくわくしました。
194ページ。
DIcken’s cheeks reddened. “I’m trying not to turn this into a man-woman thing,” he said. There’s enough of that going on already.”
まあね。でもあまりにもそのまんまだったので。
201ページ。
これはその”Pasco man”の記述。アイヌぽい、ということだったんですねー。Kennewick manはどうだったんでしょうか。そういえば、私の知り合いで考古学(というよりは人類学)のPhDをされているFさん(今は南コロラドでフィールドワークをしてらっしゃいます)のアドバイザーの先生が、このKennewick manを発見されたのではなかったかしら。ということは、つまりうちの大学、Washington State Universityが見つけた、ということなのかしら?勉強不足でよくわかりませんが。
211ページ。
“Kaye?”
“Just a moment,” Kaye said. “Let me catch my breath.”
“Well you should, dear, dear former studetn Kaye Lang. Transposon activity in our SHEVA-infected hepatocytes is mildly enhanced. They shuffle around with no apparent effect. That’s interesting. But we’ve gone beyond the hepatocytes. We’ve been doing tests on embryonic stem cells for the Taskforce.”
Embryonic stem cells could become any sort of tissue, very much like early growth cells in fetuses.
この選挙で一躍有名になってしまったStem Cellの話ですね。これで、なんでサイエンスと政治が絡み合うのかがはっきり分かりますね。あきらかに、サイエンスは政治を混乱させ、邪魔になりうるのですね。
393ページ。
私とAさんも何度も何度も通ったI-5ですね。そうそう、あのへんの天気ってそうだよなーと強く思ったので。
394ページ。
Mitch took her by the hand and led her from the parking lot. Kaye thought the park was a little ugly, the grass alittle patchy, but for Mitch’s sake, said nothing.
ガスワークスパークはシアトルで独立記念日に花火大会の中心地になる公園です。Mitchが「お気に入りなところなんだ」といってガスワークスパークに連れて行ったので、私も「えええ、シアトルもっといいところあるのに」と思った瞬間にKayeのコメントだったので、なんとなく安心したのでした。
と、こんな感じで半分はEvolutionというアイディアをもういちどよく考える興味深いきっかけになったのと、半分はシアトルの描写の嬉しさで楽しく読んでしまいました。途中でティーンエイジャーたちを車にのせてあげるところがあるのですが、その辺からちょっとあまりにもフィクションになってしまって、エピローグにいたるまで、ちょっと遠い気持ちになるんですが、CDCやUNの組織の動き方など、すごく面白かった。特に、私も微生物学的研究、パソジェニックなものの研究をするのでCDCやFDAとはわりとおつきあいがあるので個人的に面白かったです。いい読書でした。