数日前の記事ではあるんですが、毎日新聞が、農林金融公庫調査の結果として全国の主婦の65.6%が食品安全性が気になると考えているということが分かったと伝えてました。特別気にしないと答えたのが31.7%。ない、と言ったのが2.8%。気になることの内容としてはBSEと鳥インフルエンザ(58.3%)、輸入食品(34.1%)、添加物(31%)、ということらしいです。この研究で面白いのは「値段」と「安全」を比べさせているところで、半数以上が値段より安全性を重視するようになったらしいです。まあそういうトレンドですよね、確かに。
どんな研究にも、”Limitations”あるいは”Pitfalls”と呼ばれる短所があるのは当然なので、「絶対に」正しい研究方法というのはどこにもないのですが、ちょっと深くみてみると、まずサンプル数はかなり良い感じで、n=2047。統計学的には1億人を代表するといわれるサンプルがサンプリング方法としてプラスマイナス3%のエラーを見込んだとしても、1067人で代表できるとされています。ほら、選挙などで、まだ開票率がすごく低くても当確が出たりすることがあるでしょう。あれはあきらかに最初に偏った開票結果がある人数分集まったとき当確が出されるんですが、それもこのサンプルサイズを参照してあります。
私のリファレンスにもなるので記しておきますが、同じ条件(95% CI, 3% sampling error, 50/50 split)だと:
100人を代表するサンプル数: | 92 |
250人: | 203 |
500人: | 341 |
750人: | 441 |
1000人: | 516 |
2500人: | 748 |
5000人: | 880 |
10000人: | 964 |
25000人: | 1023 |
50000人: | 1045 |
100000人: | 1056 |
1000000人: | 1066 |
1000000000人: | 1067 |
というサンプリングを行うことになります。代表する全人口が大きくなればなるほど、サンプルはある程度以上あれば大丈夫というのが分かると思います。ですから、この研究のサンプル数はかなり良いわけです。で、上に条件として書いている、50/50 Splitというものの意味は、このサンプルが「まんべんなく」選ばれたかどうかを示すスプリットです。ランダムサンプルであれば80/20 Splitという条件で良くなります。そうするとサンプル数はもっと少なくてよいのですね。で、50/50 Splitというのは、「比較的まんべんなく選ばれたサンプル」という理解で良いと思います。
が、インターネットでアンケートに答える主婦ってどうなんですかね。まんべんなく選んだサンプルなのかしら、とは思いますよね。やっぱり意識が高い人が答えるんじゃないかと思いますね。でもこれは実はこの手の調査でかならーーーず起こる事なんです。たとえば、自分の家にあるアンケートが送られてきたとしますね。まったく興味なかったら、ゴミ箱行きになってしまうこともあるでしょう。でも、すごく興味があったり、こうなったらいいな、と強く思っていたりするトピックだったら、一生懸命答えるでしょう。そういうことなんです。私は自分がこういう調査をするようになってから、私にサーベイが送られてきたら、どんなことでも答えるようになりました。たとえ興味のないトピックだったとしても、私みたいに、そのとあるトピックについて強い意見を持たない人の意見こそ、調査に足りない意見だなと思えるようになったからです。
でも全体的にみて、この食品安全意識の調査は、主婦の考えを反映していると思います。情報としてのニーズが強いのに、その正しい情報の供給がおいついていないんだろうなーと悔しく思います。でも面白いのは、「気になるポイント」が完全に自分のコントロールにないところなんですね。「しっかり調理する」とか「腐ったものは食べない」とか「手をよく洗う」とかは自分でなんとかできるんだから、BSEは売らないで、という感じでしょうね。牛肉業界だって確かに儲け主義ではあるでしょうが、消費者をだまして積極的にBSE入り牛肉を売りたいと思っているわけじゃないので、本当に重要なのは正しい情報だったりするんですけどね。でも消費者たちが、「お金は多少かかっても安全なものを」と言っているんですから業界としては多少お金がかかってもそれに応えるべきですよね!