管理栄養士国家試験模範問題

今日はちょっと管理栄養士の国家試験を少し解いてみます。
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A: 筋収縮に関する記述である。正しいのはどれか。
(1) 筋収縮のエネルギー供給には、クレアチンリン酸は関与しない。
(2) 筋収縮に関与するのは、太いクチンと細いミオシンの筋原線維である。
(3) 筋収縮はアクチンフィラメントがミオシンフィラメントの間に滑り込むことによって起こる。
(4) 筋収縮で生じた乳酸は、肝臓でトリグリセリドに再合成される。
(5) 筋収縮に際して筋小胞体内へのカルシウムの取り込みが起こる。


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解答:
解剖生理学(Human Anatomy)をやったことがあるひとなら、わりと基礎の問題ですね。
(1)はエネルギー代謝経路を思い出す必要がありますね。クレアチンというのは、まずエネルギー源のATPの産生を、
クレアチンリン酸+ADP <---> クレアチン+ADP
という反応で行います。激しい筋肉活動時には、この反応は右方向に進み、クレアチンリン酸を分解してATPを積極的に産生し、筋肉回復時には、左方向に進み、エネルギー源の貯蔵物質であるクレアチンリン酸を産生しているというわけです。つまり、(1)は、バカにしてるの?という感じの項目ですね。関係ないわけないです。アリアリです。
次に目をとらえるのがアクティンとマイオシンの話。アクティンとマイオシンでは、マイオシンの方があきらかに太いです。だからまず(2)は消えます。
そして(4)ですが、ここは糖代謝の話。つまり代謝系でいえばグライコライシスです。脂質の代謝系はリポライシス。乳酸が肝臓でトライグリセライドになるわけがありません。肝臓では乳酸はグライコジェン(グリコーゲン)に再合成されるのです。
つぎにカルシウムですが、筋収縮すると、筋小胞体に、カルシウムは出ていくんです。だから(5)はなし。
ということで答えは(3)ですね。アクチンがマイオシンの間に入り込むことによって筋収縮が起こります。一般的に運動とからめて、この機構のことを
乳酸系機構
といいます。比較的激しい運動、たとえば約40秒間に体力をを使い果たす400m走ようなの中距離競技などでは、エネルギーが簡単に尽きてしまいます。また呼吸循環によるエネルギー供給も、筋繊維に回復に十分な酸素を運搬できないので、間に合いません。こうなるとこの運動の間は、酸素を必要としないでエネルギーを生成、供給することが必要となります。
このような条件にあてはまる代謝には、筋肉中のグライコジェンが使われます。このときグライコジェンを酸素なしで分解し、ATPを生成します。でもこのとき、副産物として乳酸を生成してしまうわけですね。
この乳酸がくせ者で、これが筋肉中に蓄積され血液中に流れ出すと、筋繊維の収縮が出来なくなってしまいます。これを乳酸型疲労と呼び、おもな筋肉痛も、筋肉中に乳酸が蓄積されることが原因で生じます。
肝臓によって乳酸はさきほど説明したように、グライコジェンに再合成され、一部は骨格筋に再びエネルギー源として消費され、一部は心筋や肝臓で有酸素的に分解されます。この乳酸処理を促進させるには、筋肉に酸素を多く含んだ血液を効率よく送り込んで、乳酸を洗い流す必要があります。有酸素運動、つまり約40秒から数時間にわたる持久力が必要とされる運動など、ゆっくりした長時間の運動の継続で、心肺機能を活性化させ酸素供給を増加させたり、ストレッチによって血流促進を促して、筋肉中の乳酸を除去するという、積極的休息が、効果的な回復方法になります。
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B: 遺伝疾患に関する記述である。正しいものの組合せはどれか。
a 糖原病(VIIIa型を除くすべて)は常染色体性劣性遺伝疾患である。
b 血友病は常染色体性劣性遺伝疾患である。
c フェニルケトン尿症は伴性劣性遺伝疾患である。
d 家族性高コレステロール血症は常染色体性優性遺伝疾患である。
(1)aとb (2)aとd (3)bとc (4)bとd (5)cとd
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解答:
あたしはこういうのは苦手です。ゆっくりやっていくとします。つまり常染色体性か、伴性か、というのと、優性か劣性かを聞いているわけですね。ふむふむ(もう頭がいたい)。
あたしの理解の範囲だと(間違ってたらおしえてください、お姉様)、遺伝のカテゴリーの定義は:
男性と女性の性細胞が受精して接合体(受精卵)というものができるわけですよね。受精卵は46本の染色体を持っていて、その中で、44本(22対)が常染色体で、残りの2本が伴性染色体ということですね。接合体の中、同じ遺伝子を2個持つもの(AAまたはaa)をホモ接合体、異なった遺伝子をもつもの(A a)をヘテロ接合体といますね(あ、ここでちょっとハーパーのバイオケミの本をみて確認してしまいました。カンニング。)。で、この様に2個の対立遺伝子の中、1個の変異(ヘテロ)で病気が発現する場合を優性、2個の対立遺伝子の変異(ホモ)で病気が発現する場合を劣性とよぶ、とそういうわけですね。
で、問題は
糖尿病
血友病
フェニルケトン尿症
家族性高コレステロール血症
というわけですね。糖尿病は知ってます。常染色体性劣性です。あ、フェニルケトン尿症(PKU)も分かります。これも常染色体性劣性。あとは。。。知らない。。。
じゃあカンで解くとして(いいのか?)、aが合っていてcが間違っているわけでしょう?(1)か(2)ですね。血友病って他のこのリストにある病気にくらべたら結構レアですよね?だから伴性と思っていいのかな?いや微妙。糖尿病が常染色体性劣性なのに家族性高コレステロール血症が優性とは考えられないし、じゃあ答えは(1)でどうでしょう。。。いや、分かりません。分かる方教えて下さい。
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なんだか疲れ果ててしまいました。2問なのに。
ところで、生涯教育というシステムがある職種は少なくないと思いますが、管理栄養士もそのひとつ。完全に理解されたフィールドではないからこそ、大学を卒業しても、専門に仕事をしていても、Up-To-Dateの情報に自分を合わせていくことが大事ということで生涯教育はすすめられています。
私も臨床の仕事をしていたときは生涯教育プログラムに参加し、月に2回の勉強会に通ったりしていました。現在は大学に在籍しているため、わりとUp-To-Dateの情報には触れやすいのですが、専門の専門、という域にいるため、一般的な栄養学の知識は忘れがちです。
今年から施行された栄養士改正法では、今年入学の人から、管理栄養士学科に入学しても、試験科目は免除されず、13科目、
解剖生理学
病理学
生化学
栄養学
健康管理概論
食品学
栄養指導論
臨床栄養学
公衆栄養学
給食管理
調理学
公衆衛生学
食品衛生学
食品加工学
のすべてを受験する必要があります。あたしが合格した1994年はまだ40%以上くらいが合格していたと思うんですが、現在の統計では1999年度受験者のうち合格者は30.1%であり、2000年度の受験者においては22.7%、2001年は21.4%、2002年は20.9%のみが合格です。年々合格者が減っているということは、一見寂しいことのような気もしますが、栄養士としてのレベルが上がっていっているということにもなります。あるいは受験者のレベルが下がっているか。でも基準は相対評価ではなく、絶対評価なので栄養士のレベルは変わらないことになるのかもしれません。問題は、確実に難しくなってきていると思います。
アメリカでは地位も収入も高い栄養士という職種が、日本では平均以下であるのは、知識の量と比較したときに悲しいことです。一般の人は栄養士=給食のおばさんだと思っています。他人に何と思われても私は一向にかまいませんが、実際にKeep Up-To-Dateをしていかないと、まさしく普通の「ちょっと料理ができる人」になるのは簡単です。そういう意味で、自分に喝を入れるために問題を少し解いていこうかと思います。なにもウェブ上じゃなくてもいいのですが、今日は記念にということで。

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